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多くの企業では、税理士と顧問契約を結ぶことが一般的です。
顧問契約を結ぶと税理士は「顧問税理士」となります。顧問税理士にはさまざまなメリットがあります。
顧問税理士には、どういった役割と契約のメリットがあるのでしょうか。
そこでこの記事では、以下について解説します。
- 顧問税理士とは?主な仕事と役割
- 顧問税理士と契約するメリット
- 顧問税理士と契約するデメリット
- 税理士と顧問契約を結ぶ前に注意すべきポイント
- 顧問税理士の契約がおすすめなケース
- 税理士への報酬の費用相場
- 自分(自社)にあった顧問税理士の選び方
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顧問税理士とは?主な仕事と役割
そもそも顧問税理士とはどのような仕事と役割を持っているのでしょうか。ここからは、顧問税理士について詳しく解説していきます。
- 顧問税理士とは
- 顧問税理士の主な仕事と役割
順番に見ていきましょう。
顧問税理士とは
顧問税理士とは、顧問契約をしている税理士のことです。
主に企業との間で顧問契約を結び、税理士としての業務を行います。顧問税理士の多くは1年を通して契約を結んでおり、顧問料としての報酬を毎月または年額で受け取っています。
顧問税理士には、税務申告や書類作成はもちろんのこと、税務に関することを普段から相談可能です。
さらに詳しいメリットについては、この後解説していきます。
顧問税理士の主な仕事と役割
税理士は、3つの独占業務とその他の税務関連の業務を行えます。
ここからは、それらの具体的な内容について見ていきましょう。
3つの独占業務
税理士が行える3つの独占業務と詳細を、以下の表にまとめました。
申告業務 | 確定申告業務や償却資産税などの申告業務 |
税務書類作成 | 税務官公署に提出する申告書を作成(確定申告書など) |
税務相談 | 税金の計算方法についての相談に応じる |
上記の業務は、税理士法の第2条で税理士だけが行える業務として定められています。第52条でも税理士以外が上記の業務を行うことを禁じています。そのため、税理士以外に依頼することはできません。
【参考】法令検索「昭和二十六年法律第二百三十七号 税理士法」
申告業務や税務書類作成は自分で行うことも可能ですが、法人税の申告業務は個人の所得税の場合よりも難しく時間がかかってしまいます。また、自分で行うと、控除を受けるための書類が分からず損をすることもあるかもしれません。
税理士は税務に関するプロのため、自分で行うよりもはるかにスムーズに申告業務をしてくれるでしょう。実際、法人税の申告業務は専門的な知識がない状態で行うのは困難なため、税理士に依頼している企業がほとんどです。
その他、税理士に依頼できる仕事
独占業務以外に税理士に依頼できる仕事を、以下の表にまとめました。
仕事 | 内容 |
資金調達 | 金融機関からの補助金・助成金に関する支援や窓口の紹介 |
会社設立(起業支援) | 設立手続きの窓口役や届出書類の作成・提出。事業計画作成をサポートしてくれる場合もある |
給与計算 | 毎月の給与計算を代行 |
年末調整 | 年末調整を代行。従業員から必要な書類を集め提出すれば、税金の計算まで行う |
記帳代行 | 毎月の伝票や領収書をもとに試算表の作成まで行う |
会計指導 | 会社の経理・会計業務で使用する会計ソフトの使い方・仕訳方法を指導 |
相続・事業継承対策 | 事業継承後の相続税申告、継承前の相続税対策を行う |
事業再生 | 状況分析を行い、再生計画の立案・不動産の売却などをサポート |
上記の業務の中では「資金調達」と「会社設立(起業支援)」が特に重要です。
会社経営では、資金が必要になる場面が多々あります。その際にうまく資金調達ができなければ、経営に悪影響となるでしょう。
税理士に資金調達を依頼すれば、事業形態や必要資金に応じて適した調達方法を選んでくれます。調達した資金は返済する必要がありますが、それも含めて無理がないものを選んでくれるでしょう。
【関連】資金調達の方法で最適なのは?調達の種類やそれぞれのメリット・デメリット、選び方を解説
また、会社が融資を受けるには「事業計画書」が必要です。会社設立時から依頼すれば、事業計画書の作成や設立手続きもサポートしてもらえるため、スムーズに進められます。
さらに経費や税金についても相談できるため、無駄な費用や税金を支払う可能性が低くなります。税金面で有利になるので、会社設立時から税理士に依頼するのがおすすめです。
【関連】会社設立時には税理士に依頼すべき?やってくれる仕事内容やメリットを紹介
税理士と契約するメリット
税理士と契約することには、以下のメリットがあります。
- 企業経営に集中できる
- 効果的な節税が可能
- 税務調査に対処できる
- 資金調達がしやすくなる
順番にみていきましょう。
1. 企業経営に集中できる
顧問税理士と契約すると、税務にかける時間をカットでき、そのぶん企業経営に集中しやすくなります。
個人事業主や小規模事業者で税務を自分で行っている方は、生産性向上のために税理士との顧問契約を検討してみるとよいでしょう。
また、社内に経理担当を置いていた場合、税理士と顧問契約を結んで経理を外注すればコスト削減することも可能です。
2. 効果的な節税が可能
顧問税理士がいると、効果的な節税が可能です。節税について日頃からアドバイスをもらえ、余計な税金を支払わなくてよくなるためです。
間違った方法で節税しようとすると脱税になってしまいますが、税理士に相談していればそのような心配もいりません。
また、節税では決算対策が特に重要です。税理士と顧問契約をしていれば、会社の利益状況を常に把握した上でアドバイスしてくれるため、1年を通した節税対策ができるでしょう。
3. 税務調査に対処できる
顧問税理士がいれば、税務調査の対処もスムーズです。税務当局からの事前通知の受領から、調査官への対応まですべて行ってくれるためです。税務調査時に必要な書類も用意してくれるため、会社の負担を減らせます。
また、税務調査においては「書面添付制度」を使うのが有効です。書面添付制度とは、税理士法第33条の2と第35条に規定されている「意見聴取制度」のことをいいます。
【参考】法令検索「昭和二十六年法律第二百三十七号 税理士法」
書面添付制度を利用していると、税務調査時で最初に税理士への意見聴取が必要となります。税務調査が税理士への聞き取りだけで終わり、会社での対応が不要になるかもしれません。
書面添付制度は、税理士だけに認められた権利です。税理士と顧問契約を結ぶ場合は、うまく活用するといいでしょう。
4. 資金調達がしやすくなる
税理士と顧問契約していると、資金調達がしやすくなります。会社に税理士がついていることで、金融機関や取引先からの信用が高まるためです。
会社が融資を受ける場合、決算書と法人税の確定申告書が必要です。税理士は税務に関するプロなので、申告書に税理士の判が押されているだけでも信頼度が高まります。
資金調達の方法は、金融機関や補助金の申請などです。税理士がいれば、会社の状況に合わせてどの資金調達が有効かアドバイスを受けられます。
さらに融資に必要な事業計画書の作成もサポートしてくれるため、資金調達が行いやすくなります。
税理士と契約するデメリット
税理士と契約するデメリットは、費用がかかることです。月額または年額の顧問料と決算料(税務書類の作成料金)が必要で、契約をしている限り顧問料を支払わないといけません。
顧問料は税理士によって異なりますが、平均すると月あたり30,000円ほどが相場です。
【参考】税理士紹介センター「税理士顧問料・報酬・料金・価格の適正価格」
そのため、顧問料を支払う余裕がなければ、顧問税理士と契約するのは難しいでしょう。
しかし顧問税理士がいることで、経理担当者にかけるコストの削減や節税効果が期待できます。費用はかかるもののメリットが大きいため、可能であれば顧問契約を結ぶことがおすすめです。
税理士と顧問契約を結ぶ前に注意すべきポイント
税理士と顧問契約を結ぶ前に注意すべきポイントは以下の3つです。
- 税理士への依頼内容を明確にする
- 自社に合う税理士を選ぶ
- 費用の内訳や業務範囲を確認する
順番に見ていきましょう。
税理士への依頼内容を明確にする
税理士と顧問契約を結ぶ前に、依頼内容を明確にすることが重要です。税理士に何を依頼するのかが不明確なまま契約を結ぶと、期待していた業務が提供されない場合や追加料金が発生する可能性があります。
例えば、税務申告や記帳代行だけでなく、経営アドバイスや資金調達支援も必要であれば、契約前にその内容をしっかりと伝えておく必要があります。
依頼内容を具体的にすることで税理士側も適切な対応が可能となり、双方にとってのミスマッチを防げるでしょう。
相性のよい税理士を選ぶ
税理士と顧問契約を結ぶ前には、相性がよいと感じる税理士を選ぶことが重要です。税理士は経営や財務に関するアドバイスを提供するビジネスパートナーであるため、コミュニケーションが円滑に行えるかどうかは大切です。
相性が悪いと相談がしにくくなり、適切なサポートを受けられない場合があります。初回の面談や相談で、その税理士の対応や考え方が自分のビジネスに合っているかを確認し、信頼関係を築けるかどうかを見極めてください。
相性の良い税理士と長期的な関係を築くことで、より効果的なサポートを受けられるでしょう。
費用の内訳や業務範囲を確認する
税理士と顧問契約を結ぶ前に、費用の内訳や業務範囲をしっかりと確認することが大切です。税理士の顧問料には、税務申告や記帳代行などの基本業務だけでなく、経営コンサルティングや節税対策などの追加サービスが含まれる場合があります。具体的な費用の内訳が不明確なまま契約を結ぶと予期せぬ追加費用が発生する可能性があります。
事前にどのサービスが基本料金に含まれており、どのサービスが追加料金となるのかを明確に確認して納得した上で契約を結ぶことがトラブルを防ぐポイントです。
税理士との顧問契約がおすすめなケース
税理士との顧問契約がおすすめなケースは以下の通りです。
- 初めて会社を設立するケース
- 売上が1,000万円を超えているケース
- 会計処理の知識がないケース
- できるだけ節税したいと考えているケース
- 決算をプロに丸投げしたいと考えているケース
個人事業主とは異なり、法人の設立は提出する申告書類が多く複雑です。自分で申告書を作成するのは難易度が高いため、顧問税理士に依頼するのがおすすめです。
また、売上が1,000万円を超える場合も顧問税理士の契約を検討する目安となります。売上が1,000万円を超えると消費税の検討が必要になることにより、テクニカルなアドバイスの需要が増えるだけでなく、売上に比例して利益が大きくなり、役員報酬の設定額や社宅の検討などで節税の余地が出てくるためです。
また、「会計処理が難しそう」「忙しくて自分で対応できない」と感じる場合も、顧問税理士と契約することをおすすめします。
税理士への報酬の費用相場
顧問税理士への報酬の相場は契約内容や会社の規模によって変わります。ここでは、顧問税理士への報酬の相場や決算申告報酬の目安を紹介します。
税理士への報酬は契約内容によって変わる
税理士への報酬は契約内容によって大きく変わります。基本的な顧問契約の場合、記帳代行や税務申告が主な業務となります。一方で、経営コンサルティングや節税対策、資金調達支援など、より専門的なサービスを依頼する場合は追加料金が発生することがあります。
報酬は業務の内容や頻度、会社の規模によって異なるため、契約前に自社のニーズを整理して業務範囲に応じた報酬を税理士と話し合って決めることが重要です。
なお、基本的な業務を依頼する場合の顧問料の相場は、月あたり30,000円ほどです。
決算申告報酬の相場は、顧問料の約4~6ヵ月分
決算申告報酬の相場は、月々の顧問料の約4~6ヵ月分が目安とされています。例えば、月々の顧問料が5万円であれば決算申告報酬は20万〜30万円程度が目安です。決算申告は通常の税務業務よりも手間や時間がかかるため、その分報酬が高く設定される傾向にあります。
また、企業の規模や業種、決算書の内容の複雑さによっても報酬額は変動することがあります。
自分(自社)にあった顧問税理士の選び方
多くの税理士の中から、自分(自社)にあった人をどうやって選べばいいか迷っている方もいるのではないでしょうか。
顧問税理士は、以下5つの基準から選ぶのが有効です。
- 依頼する目的に合わせて選ぶ
- 対応力(レスポンスのスピードと質、態度)で選ぶ
- 予算に合う税理士を選ぶ
- 求める業務範囲に対応できるかで選ぶ
- 節税の知識が豊富かで選ぶ
順番に見ていきましょう。
1. 依頼する目的に合わせて選ぶ
税理士に依頼する目的に合わせて選びましょう。税理士によって、得意な業務が異なるためです。
例えば資金調達は、税理士自身の経験によって差が出ます。創業融資の実行率は3割程度が相場ですが、税理士によっては新規の創業融資で90%以上の実行率を持つ人もいます。
税理士によって得意な業務が異なるため、依頼する目的とそれをしっかり行ってくれるかを判断して契約する人を選びましょう。
2. 対応力(レスポンスのスピードと質、態度)で選ぶ
契約する税理士のレスポンスのスピードと質も重要なポイントです。税務に関する相談をしても、返事が遅いと緊急時の対応ができないためです。
仮に税務調査が入った場合、顧問税理士に直接連絡できないと対応に苦心します。そうした際、対応の早い税理士ならすぐ相談できるので、問題解決がスムーズです。例えば、顧客対応の優れた税理士の中には、名刺に緊急時の連絡先を明記するといった配慮も行っています。
また、レスポンスは早いだけでは意味がなく、質も重要です。難しい質問ですぐに答えられない場合、充分に調べた上で後日対応してくれるのがいい税理士といえるでしょう。
その他、税理士はサービス業のひとつですが、その意識が低い税理士も存在します。いい税理士は、顧客満足度を高めることを意識しているため、丁寧な言葉遣いで親身な態度で接してくれるでしょう。
どのような顧客対応をしているかをよく見て、信頼できる税理士と顧問契約を結びましょう。
3.予算に合う税理士を選ぶ
顧問税理士を選ぶ際には、自分や自社の予算に合う税理士を選ぶことが重要です。税理士の顧問料は事務所やサービス内容によって大きく異なるため、まずは自社の財務状況や必要なサポート内容を明確にして見合った料金設定の税理士を探すことがポイントです。
安さだけで選ぶと必要なサポートが不十分になる可能性があるため、費用対効果を重視した選択が求められます。
また、事前に見積もりや対応範囲を確認して予算に合ったサービスを提供してくれる税理士かどうかを確認しましょう。
4.求める業務範囲に対応できるかで選ぶ
顧問税理士を選ぶ際には、求める業務範囲に対応できるか確認するのも重要です。税理士の業務内容は記帳代行や税務申告、節税対策など基本的な業務に加え、資金調達支援や経営コンサルティングなど多岐にわたります。
自社が何を求めているかを明確にし、ニーズに応じたサービスを提供できる税理士を選びましょう。
例えば、経営のアドバイスが必要であれば経営支援に強い税理士を選ぶべきです。事前に相談内容を具体的に伝え、その範囲で対応可能かを確認するとよいでしょう。
5.節税の知識が豊富かで選ぶ
顧問税理士を選ぶ際には、節税の知識が豊富であるかを基準にすることも重要です。節税対策は企業の利益を最大化するための重要な要素であり、事業戦略にも大きく影響します。
節税に関する知識や経験が豊富な税理士であれば、税法の改正や最新の税務情報に精通しており、適切なアドバイスを提供してくれるでしょう。特に、部署が多く分かれている企業や成長期にある企業は、効果的な節税策を実行できる税理士の存在が欠かせません。
事前にどのような節税対策が可能かを具体的に相談することが大切です。
まとめ
今回は、顧問税理士について解説してきました。
税理士との顧問契約には、節税対策や資金調達が行いやすくなるなど、多数のメリットがあります。税務に関する疑問点をいつでも相談できますし、会社経営において強い味方となってくれるでしょう。
顧問税理士を探している方は、私たちハートランド税理士法人へお気軽にご相談ください。
創業融資の審査通過率トップクラスの資金調達のプロフェッショナル集団が、資金調達から販路拡大までご支援いたします。
税務調査対策にも精通しているため、貴社の税務を全面的にサポートさせていただきます。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。