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起業時に利用できる創業融資は、他の融資制度にはない優遇措置が充実しています。
経営が安定していない事業者に有利な条件が豊富に揃っているため、多くの方が利用している制度です。
今回はそんな創業融資について、
- 制度の概要と種類
- 審査で見られるポイント
- 審査で落とされる理由
- 認定支援機関について
などを解説していきます。創業融資を検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。
チャンスは起業時だけ!創業融資とは
創業融資とは「起業をする際に、自己資金のみで事業資金を用意するのではなく、他者からお金を借りること」です。
家族・知人といった周りの人や、銀行・消費者金融などから借りるのも広い意味では創業融資ですが、実際には日本政策金融公庫や自治体の融資を利用する人がほとんどです。
なぜ創業融資が重要かというと、起業してすぐに軌道にのる事業はほとんどないからです。
起業後、経営が安定するまでは、最初に用意したお金を切り崩しながら運転資金や生活費を捻出しなければいけません。具体的には「開業資金+6ヶ月分の運転資金」が、起業の際に最低限用意すべき金額の目安と言われています。
それだけのまとまったお金を自己資金のみで用意するのは難しく、起業して間もない会社は返済力に不安があるため、多額の融資を受けることはこんなんです。
そのため、低金利かつ信用の低い事業者でも借りられる創業融資を利用するケースが多いのです。
起業時に利用できる融資の種類
それでは、起業時に利用できる代表的な創業融資をご紹介していきます。
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫の創業融資とは、創業時に一度だけ利用することができる無担保・無保証の融資制度です。
融資の種類
日本政策金融公庫の創業融資を利用できるのは、以下の条件に当てはまる人です。
<創業の要件>
- 新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方
<雇用創出等の要件>
- 雇用の創出を伴う事業を始める方
- 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方
- 産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方
- 民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方
- 上記いずれかの条件に該当する方
<自己資金要件>
- 創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方
※ただし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」はこの要件は必要ありません。
融資限度額は3,000万円ですが、実際には自己資金の3倍くらいが限度額と言われています。
おすすめの理由
日本政策金融公庫の創業融資がおすすめの理由は無担保・無保証・連帯保証人不要で借りられるからです。
元手がない人や保証人を用意できない人も借り入れが可能なので、誰でも起業にチャレンジすることができます。また、無担保・無保証の融資としては圧倒的に低金利なのも創業融資の特徴です。
例えば、同じ100万円の融資を受けた場合、金利の目安は以下の通りです。
- 日本政策金融公庫:年 2.0%
- 民間の銀行:年 10.0%前後(銀行・条件による)
さらに、借入をする人や事業内容が一定の条件を満たすと、金利の引き下げ措置もあります。
- 生活衛生貸付
- 女性、若年、シニア起業家資金
- 雇用維持または拡大
- 中小企業の会計に関する指針、または基本要領の適用
創業融資の返済期間には、2年以内の「据置期間」が含まれています。据置期間とは、返済をしなくてもペナルティを受けない期間です。つまり最長2年間は返済をしなくてもいいということで、創業直後の不安定な期間をこれで乗り切ることも可能です。
その他の創業時に利用できる融資制度
日本政策金融公庫の創業融資と並んで利用する人が多いのが「自治体の制度融資」です。
制度融資は金融機関から直接融資を受けることが難しい、中小企業の資金調達を支援するために用意されています。
金融機関と企業の間に「地方自治体」と「信用保証協会」が入り、企業と自治体が信用保証協会に保証料を支払うことで貸し倒れを防ぐという仕組みです。
制度融資は創業融資と同様に金利が低く、返済に据置期間があるなど、起業まもない起業が利用しやすい融資制度です。
創業融資の審査で見られる4つのポイント
創業融資は、申し込みさえすれば誰でも受けられるというものではありません。融資が実行される場合にも、希望の金額が貸し付けられるとは限りません。
創業融資の審査が受けられるのは一度きりなので、ポイントを押さえてきちんと融資が受けられるようにしましょう。
1.自己資金
自己資金がない、または少なすぎる企業は、経営の安定性が低く事業への本気度が低いと思われてしまいがちです。
また、融資の実行額は自己資金の3倍程度が限度と言われています。
そのため、自己資金を多く用意できればできるほど、審査を通過する可能性は高くなるのです。起業時は、融資でお金が入るからといって安心せず、自己資金はできるだけ多く用意しておくようにしましょう。
2.事業計画書の内容
創業融資を受けるには、しっかりとした事業計画書を作成するのが大切です。
どんな事業を行うかだけではなく、その事業に将来性や安定性があるかどうかがとても重要になります。
事業計画書を作る際には、ぼんやりとしたアイデアだけではなく、具体的な事業内容を詰め、できればテスト運営なども行なって実現可能性をアピールしましょう。
3.過去の支払い状況
創業融資の審査では、経営者個人の信用情報がチェックされます。
過去にクレジットや公共料金の滞納がある場合には、返済も滞る可能性があると捉えられ、審査は厳しくなるでしょう。
自分の信用情報に不安がある方は、CIC(指定信用情報機関)に登録されている信用情報を自分で開示し、チェックすることも可能です。
4.住宅ローンが残っていても融資は受けられる?
創業融資も借金の一種なので、他の金融機関からもお金を借りていると審査は厳しくなります。
ただし、住宅ローンは例外的です。返済額が創業計画書上の役員報酬の範囲内で、無理なく返せるようであれば審査に影響はありません。
創業融資の審査で落とされる5つの理由
創業融資の審査に通らない場合、どんなところに問題があるのでしょうか。審査に落とされる5つの理由をご紹介していきます。
1.自己資金が少ない
先にもお伝えしましたが、自己資金が少ないと、事業への本気度が低いと見なされて審査が通りにくくなります。
創業融資は事業資金の1/10が自己資金で用意できれば申し込むことができますが、これはあくまでも最低条件です。創業融資に申し込む人の事業資金総額に対する自己資金の割合は3割程度が平均となっています。
2.融資希望額が高過ぎる
融資希望額が高すぎる場合、融資を断られたり、減額されての融資実行となったりすることが多いです。
創業融資は無担保・無保証なので、あまりにも高額の融資は難しいです。
上限金額は3,000万円となっていますが、1,000万円以上の融資はほぼ通りません。なるべく自己資金を用意した上で、その3倍程度を目安に融資を申し込むようにしましょう。
3.滞納歴・サラ金などからの借入歴あり
信用情報に滞納歴やサラ金からの借入歴があると、審査が厳しくなります。
少なくとも、現在進行形で滞納や借入がある場合にはまず審査を通らないので、借金の清算が必要です。
もし過去に返済を終えているものの、履歴が残っているという場合は、その時の状況や借入をした理由を明らかにできると印象がいいです。
4.事業計画書・収支計画の実効性が低い
事業計画書や収支計画の実効性が低いと、創業融資を断られてしまいます。
繰り返しになりますが、創業融資は無担保・無保証なので、日本政策金融公庫から見ると貸し倒れのリスクがとても高い制度です。
お金を貸した会社が、起業後すぐに倒産してしまうと資金が回収できないため、実現可能性の低い事業は審査で落とされてしまいます。
5.面談や書類に虚偽がある
創業融資を受けるために、嘘や隠し事をすると審査を通りません。
審査の中で嘘をついていることが発覚すると、それだけで否決理由になります。
そのため、言いにくいことであっても面談や書類では正直に、本当のことのみを伝えるようにしましょう。
起業時の融資をサポートしてくれる認定支援機関について
「認定支援機関」とは、「認定経営革新等支援機関」ともいい、経営における課題のある中小企業や小規模経営者に対して相談・支援を行うための機関です。
「税務・金融・財務などに関する専門知識」「一定の実務経験を持つこと」を条件として、国が認定しています。
創業融資を受ける際、「どんな制度を利用すればいいかわからない」「なかなか審査を通らない」など悩み事がある場合は、認定支援機関で相談しましょう。
起業に関するアドバイスを受けられたり、金利の優遇措置、補助金・助成金の申請が可能になったりなどのメリットがあるため、起業を考えている方はぜひ利用してみてください。
まとめ
日本政策金融公庫の創業融資は、創業時のみに利用することができる無担保・無保証の融資制度です。起業間もない事業者を応援するため、金利や返済機関などに優遇措置が設けられているのが特徴です。
多くの起業家が利用する制度なので、今回お伝えした情報を参考に、申し込みや審査に役立ててみてください。
また、ハートランド税理士法人では、開業以来、サポートさせていただいた創業融資の審査通過率は100%を継続中です。創業融資だけでなく、融資について何かお困りのことがあれば、ぜひ無料相談をご活用ください。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。