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法人を設立してまだ間もない事業者にとって、会社の運転資金や設備投資は、いくらあっても足りないものです。
この記事では、
- 助成金の概要
- 会社設立時に活用できる助成金の種類
- 助成金を受け取る際の注意点
についてご紹介していきます。
これらのことを知っているか知らないかでは、資金繰りに大きな差がでます。ぜひこの記事を参考に、ご利用を検討してみてください。
1.助成金とは
助成金とは、簡単に言うと「国や地方自治体からもらえる返済不要の資金」のことで、最大のメリットは返済義務がないことです。
社会的に困っている人をサポートしたり、従業員が働きやすい環境を整備したりする行為に対して支給される公的資金で、比較的少額という特徴があります。定められた条件を満たせば支給され、基本的にいつでも申請ができます。
雇用の創出を目的とした助成金は、厚生労働省が担当しており、起業後に人を新たに雇う場合などにおいて申請が可能です。職業能力向上や雇用促進を目的とした様々な助成金が用意されています。
また、厚生労働省以外でも、各市区町村の自治体や公益団体・民間企業などが主催している助成金もあります。こちらは、それぞれの地域の活性化や社会公益などを目的としていることから、趣向を凝らしたものが多く、バラエティに富んでいます。
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2.会社設立時に利用できる助成金2選
前提として、今回紹介する2つの助成金は「人を雇用すること」が利用の条件となっています。そのため、「社員は社長の自分一人だけ」というように一人ビジネスをされている方は利用できません。
今回は助成金の中で
- キャリアアップ助成金
- 地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
についてご紹介していきます。
他にも、その年の予算によって新しく生まれる助成金や補助金、金融機関や財団法人などが単発で募集しているものもありますので、定期的に各省庁などのプレスリリースを確認しておくと良いでしょう。
気になる助成金を見つけたときは、ぜひ主催団体に相談してみてください。
2-1. キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。
会社設立時に、契約社員やパート従業員として雇っていた人を社員化するなど、人材に関する変更を行う際はチェックしておきたい仕組みです。
具体的には、契約社員やパート従業員などの有期契約労働者などを正社員に登用した場合や、必要な職業訓練を受けさせたような場合に受給することができます。
キャリアアップ助成金には全部で7つのコースが設けられていて、例えば「正社員化コース」だと、該当する従業員1人につき57万円(生産性要件を満たすと72万円。ただし、上限20人まで)をすることができます。6ヵ月間以上雇用実績のある契約社員、パート社員を正社員に登用し、さらに6ヵ月継続雇用した場合に支給対象となります。ただし、正社員登用前の雇用期間が3年以下であることに注意が必要です。
申込みは、事前にキャリアアップ計画を労働組合等の意見を聞いて作成後、労働局またはハローワークに提出します。中小企業の場合、計画届が受理されると所定の申請書類が届きますので、必要事項を申請書類に記入し提出してください。
それでは、8つのコースを具体的にご紹介します。
2-1-1.正社員化コース
契約社員、パート社員を正社員として雇用する場合や、派遣契約から直接雇用契約へと切り替える場合に利用できます。
2-1-2.賃金規定等改定コース
すべての従業員に対して一律、または一部の契約社員、パート従業員に対して基本給の支給額を2%以上アップする場合に利用できます。
2-1-3.健康診断制度コース
契約社員、パート従業員などに対して法律上定められている範囲を超えた健康診断を、合計4名以上実施した場合に利用できます。
2-1-4.賃金規定等共通化コース
正社員以外の従業員に対して、正社員と共通の職務に応じた賃金ルールを適用した場合に利用できます。
2-1-5.諸手当制度共通化コース
正社員以外の従業員に対して、正社員の従業員と同様の諸手当に関するルールを設け、実際に支給を行った場合に利用できます。
2-1-6.選択的適用拡大導入時処遇改善コース
基本給を増額する形で、社会保険(健康保険、厚生年金)の適用対象となる従業員の範囲を拡大した場合に利用できます。
2-1-7.短時間労働者労働時間延長コース
短時間労働者の1週間当たりの所定労働時間を5時間延長し、社会保険の適用対象となる従業員の範囲を拡大した場合に利用できます。
2-2.地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)は、各都道府県と中小機構が資金を出し合ってファンド(資金運用を行う団体)をつくり、中小企業者などに助成金を支給する制度のことです。
地域中小企業応援ファンドは、新しい商品の開発や、営業販路の開拓など、事業活動上の幅広い取り組みに対して支給を受けられることが特徴です。
特に、地域コミュニティへの貢献度が高い取り組みに対して助成金がおりやすい傾向があります。支給金額は各都道府県ごとのファンドによって異なるため、ファンドそれぞれが独自に設定している基準によって審査を受ける必要があります。
なお、地域中小企業応援ファンドは、一般の中小企業者だけではなく、NPO法人や農林漁業者なども利用することができます。
3.助成金を受けるときの注意点
返済義務が生じない助成金とはいえ、各主催団体に合わせて書類を整えるのは大変な作業です。
また、それだけの労力をかけても、必ず受給できる保証はありません。
助成金の申請から、実際に受給するまでに注意した方が良いポイントをまとめましたので参考にしてください。
3-1.自己資金がないのはダメ
助成金があれば自己資金が無くても良いのでは?と考えてしまうかもしれません。
しかし、助成金はあくまで「足りない分を補う」という制度です。
事業を始める以上は、ある程度の自己資金を用意しておきましょう。
3-2.提出書類の準備には時間と労力が必要
助成金を申請する際には、多くの書類を用意しなければいけないケースがほとんどです。
すべての書類を準備するためには、かなりの時間と労力が必要なことは覚悟しておいたほうが良いでしょう。
3-3.メリットが大きい助成金は倍率も高い
返済義務がある融資に対して、返済しなくても良い助成金。しかし、メリットが大きい助成金には応募が殺到します。
まずは、事業計画をしっかり立てて、サポートする価値が十分にあると思わせる事業を作っていくことが大切です。
また、税金が財源になっている政府系の助成金は、複数のものを受給できない可能性が高いことも覚えておきましょう。
4.まとめ
会社設立後、資金が必要なタイミングで事業資金の足しにできる助成金についてご紹介してきました。返済が不要という点で、助成金はとてもありがたいものです。
いくらあっても足りない事業資金。
資金不足のせいでビジネスチャンスを逃すことがないよう、ぜひ助成金の活用を検討してみてください。
監修:播广 祐子(はりま ゆうこ)
ハートランド社会保険労務士法人 代表社会保険労務士(大阪府社会保険労務士会所属 登録番号第27210131号)
地方自治体において17年間勤務。人事労務業務、社会保険の保険給付指導、保険医療機関指導業務のほか、総予算11億円を超えるベネッセアートサイト直島との協動による現代アートイベントのディレクションを担当。その後、23歳で取得した社会保険労務士の資格を活かすため、大阪市内の大手社労士法人に7年間勤務。年間1,000件を超える助成金申請をこなした助成金のスペシャリスト。労務相談、給与設計・計算、就業規則制定などの労務コンサルティング業務にあたりながら、研修講師としても活躍中。