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これまで、新型コロナウイルス感染症に対し、「特別定額給付金」をはじめ数多くの支援策が実施されました。
そうした給付金、助成金、補助金などは、どうやって確定申告をするべきなのでしょうか?
そもそも、確定申告をする必要はあるのでしょうか?
結論からいうと、
「課税対象であれば確定申告は必要。非課税対象であれば確定申告は不要」
です。
この記事では、
- 課税・非課税の見分け方
- 各種支援策(給付金、助成金、補助金)の課税・非課税分類
- 課税対象の支援策を確定申告をする際の会計処理
- 確定申告で実施されている新型コロナウイルス感染症の影響に対する救済措置
などについて解説していきます。
課税・非課税の見分け方
まず、各種支援策で受け取ったお金を確定申告するかどうかは、それが課税対象か非課税対象かで異なります。
- 課税対象…確定申告をする必要あり
- 非課税対象…確定申告をする必要なし
非課税対象となるお金(所得)は、所得税法に「すべて」記載されています。そのため、所得税法に非課税対象として記載されていない場合は、原則課税対象です。
しかし、所得税法以外に個別の法律があり、そこに非課税対象と明記されている場合は非課税対象となります。
新型コロナウイルス感染症によって影響を受けた個人や事業者に対する各種支援には所得税法が追い付いていないため、非課税対象の場合は個別の法律や規定にその旨が明記されています。
各種支援策(給付金、助成金、補助金)の課税・非課税分類
課税対象の代表的な支援策一覧
課税対象となるのは、基本的に
「個人事業主や中小企業の事業活動に対する支援策」
です。
個人と違い、これらの支援策は「売上を補填するためのお金」「低迷した業績を立て直すための施策を支援するお金」であるため、売上扱い(課税対象)となります。
月次支援金、一時支援金
- 主体:中小企業庁
- 内容:緊急事態措置・まん延防止等重点措置に伴う飲食店の休業・時短営業又は外出自粛等の影響を受けて売上が減少した中小法人・個人事業者等の事業継続及び立て直しを支援
- 公式サイト:月次支援金・一時支援金
持続化給付金
- 主体:中小企業庁
- 内容:新型コロナウイルス感染症の影響により業績が低迷した事業者に対して現金を給付する支援
- 公式サイト:中小企業庁「持続化給付金」
【関連】
・【税理士が解説】持続化給付金の対象要件、申請から給付までの流れ、不備になりやすいポイントとは?
家賃支援給付金
- 主体:中小企業庁
- 内容:新型コロナウイルス感染症の影響により業績が低迷した事業者に対して、家賃の一部を現金で給付する支援
- 公式サイト:経済産業省「家賃支援給付金に関するお知らせ」
【関連】
・法人最大600万、個人事業主最大300万!家賃支援給付金の概要と要点まとめ
持続化補助金
- 主体:中小企業庁
- 内容:個人事業主や中小企業などの小規模事業者の生産性向上と発展のために、事業活動に係る経費の一部を補助する支援
- 公式サイト:日本商工会議所「小規模事業者持続化補助金」
経営継続補助金
- 主体:農林水産省
- 内容:新型コロナウイルス感染症により影響を受けた農林水産業者に対し、販路の回復や開拓、生産性向上のための施策にかかった経費の一部補助する支援
- 公式サイト:農林水産省「経営継続補助金」
雇用調整助成金
- 主体:厚生労働省
- 内容:新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の縮小を余儀なくされ、雇用調整(休業)を実施するた事業主に対し、休業手当などの一部を助成する支援
- 公式サイト:厚生労働省「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」
IT導入補助金
- 主体:経済産業省
- 内容:個人事業主や中小企業の事業者が、事業の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助する支援
- 公式サイト:中小企業基盤整備機構「IT導入補助金」
文化芸術活動の継続支援事業
- 主体:文化庁
- 内容:新型コロナウイルス感染症の影響により活動自粛を余儀なくされた文化芸術関係団体等に対し、活動の再開・継続のための施策にかかった費用の一部を補助する支援
- 公式サイト:文化庁「文化芸術活動の継続支援事業」
営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金
- 主体:東京都
- 内容:新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言後、営業時間短縮の要請に全面的に協力した中小規模の飲食事業者等に対し、現金を給付する支援
- 公式サイト:東京都「営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金」
非課税対象の代表的な支援策一覧
一方、非課税対象となるのは、基本的に
「個人や家庭の生活に対する支援策」
です。
これらはあくまで「生活が困窮した個人や家庭の生活を助けるためのお金」であり、事業活動に対して交付される個人事業主や中小企業の給付金や補助金とは意味合いが異なるため非課税となります。
特別定額給付金
- 主体:総務省
- 内容:新型コロナウイルス感染症の影響を受けた個人や家庭へ現金給付する支援
- 公式サイト:総務省「特別定額給付金(新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関連)」
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
- 主体:厚生労働省
- 内容:新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止の措置の影響により休業させられた中小企業の労働者のうち、休業手当を受けとることができなかった人へ現金を給付する支援
- 公式サイト:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」
学生支援緊急給付金
- 主体:文部科学省
- 内容:新型コロナウイルス感染症による影響で「学びの危機」に瀕した学生に対し、「学びの継続」のために現金を給付する支援
- 公式サイト:学生支援緊急給付金
子育て世代への臨時特別給付金
- 主体:内閣府
- 内容:新型コロナウイルス感染症による影響を受けた子育て世代へ現金を給付する支援
- 公式サイト:内閣府「新型コロナウイルス対応に係る子育て支援について」
ひとり親世帯への臨時特別給付金
- 主体:厚生労働省
- 内容:児童扶養手当を受給しているひとり親世帯や、新型コロナウイルス感染症の影響で家計が急変しているひとり親世帯へ現金を給付する支援
- 公式サイト:厚生労働省「ひとり親世帯臨時特別給付金」
ベビーシッター利用支援事業
- 主体:東京都
- 内容:新型コロナウイルス感染症の影響により「臨時休園等となった保育所等の利用児童」や「臨時休業となった小学校等に通う小学生」などの養育において、認可外のベビーシッターの利用を余儀なくされた場合に利用料の一部を助成する支援
- 公式サイト:東京都福祉保健局「ベビーシッター利用支援事業」
企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置における割引券
- 主体:内閣府
- 内容:企業主導型ベビーシッター利用者支援事業に申請している事業主に雇用される従業員がベビーシッターサービスを利用した場合に、利用料の一部(またはすべて)を助成する支援
- 公式サイト:内閣府「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業における「ベビーシッター派遣事業」の令和2年度の取扱いについて」
新型コロナウイルス感染症対応従事者への慰労金
- 主体:厚生労働省
- 内容:新型コロナウイルス感染症の拡大防止・収束に向けて日々働いている医療従事者に対し、現金を給付する支援
- 公式サイト:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症対応従事者慰労金交付事業について」
課税対象の支援策を確定申告する際の会計処理
貸方勘定科目は「雑収入」です。
例えば、持続化給付金が普通預金口座に200万円振り込まれた場合の会計処理は以下の通りです。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
普通預金 | 2,000,000円 | 雑収入 | 2,000,000円 | 持続化給付金 |
確定申告で実施されている新型コロナウイルス感染症の影響に対する救済措置
国税庁では新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、各種税制上の救済・優遇措置を実施しています。
具体的には、
- 納税の猶予制度の特例
- 欠損金の繰戻しによる還付の特例
- テレワーク等のための中小企業の設備投資税制
- 文化芸術・スポーツイベントを中止等した主催者に対する払戻請求権を放棄した観客等への寄附金控除の適用
- 住宅ローン控除の適用要件の弾力化
- 消費税の課税選択の変更に係る特例
- 特別貸付けに係る契約書の印紙税の非課税
などがあります。
例えば、新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な場合、一定の条件を満たすと納税を猶予してもらえるようになっています。必要に応じて活用しましょう。
【参考】
国税庁「新型コロナウイルス感染症に関する対応等について」
まとめ
新型コロナウイルス感染症に対する各種支援は、課税か非課税かによって確定申告が必要かどうかがわかります。
基本的には、
- 事業者の事業活動に対する支援…課税
- 個人や家庭の生活に対する支援…非課税
と覚えておきましょう。
なお、確定申告自体の提出書類、やり方、ポイントなどについては下記記事をご覧ください。
もし確定申告についてわからないことや不安なことがあれば、私たちハートランド税理士法人の無料相談をお気軽にご利用ください。
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監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。