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起業するときは、まず資本金を用意しておく必要があります。
しかし、起業の際に用意する資金にはいくつか種類があり、資本金はそのひとつに過ぎません。
今回紹介するのは、そうした資金の中でも資本剰余金と呼ばれるものです。資本剰余金とは、一言でいうと「資本金として計上した以外の元手となる資金」のことです。
また、似た名前でも性質や用途がやや異なる「利益剰余金」というものもあります。
この記事では、
- 資本剰余金とは
- 資本剰余金と利益剰余金の違い
- 資本剰余金の配当について
- 資本剰余金がマイナスになった場合の3つの対策
などについて解説していきます。
資本剰余金とは
「資本剰余金」とは、資本金として計上した以外の元手となる資金のことです。
例えば、法人を設立した場合には一定金額以上の資本金を定めておく必要があり、それ以外の手元資金は資本剰余金となります。
そして、資本剰余金は大きく「資本準備金」と「その他資本剰余金」にわけられます。資本準備金は資本金の2分の1未満の額を用意するように会社法で定められており、それ以外の資本剰余金はその他資本剰余金となります。
「資本準備金」は、債権者からの請求によって突発的な支払いが発生するときに備え、積み立てて残しておくものです。「その他資本剰余金」は、資本金の減少時や、利益が十分に確保できなかったときの株主への配当、自社で取得した株式の処分などの原資として用いられます。
資本剰余金と利益剰余金の違い
利益剰余金とは、商品やサービスの販売などで稼いだ利益のなかから、剰余金として残しておくものです。
資本準備金と同じように、債権者からの請求などで突発的な支払いが発生するときのために、利益の一部を残しておくように法律で定められています。
資本剰余金も利益剰余金も、突発的な支払いに備えるためのお金であることは共通しています。ただし、利益剰余金は経営活動によって稼いだ利益が元になっているため、株主の配当の支払の原資になります。
資本剰余金と利益剰余金の違いを簡単にまとめると、
- 資本剰余金…起業のために用意した資本金以外の資金
- 利益剰余金…起業後、商品やサービスなどの販売を通して稼いだ利益の中から残しておく資金
となります。
「使用の用途は突発的な支払いということで共通しているものの、お金の出所が違う」というわけです。
資本剰余金の配当について
資本剰余金のうち、突発的な支払いが発生するときに使用する「資本準備金」以外は、自動的に「その他資本剰余金」となります。
その他資本剰余金は、起業や規模拡大などの際に株主から資金調達したお金から成り立っており、営業活動を通して得たものではありません。そのため、むやみに使うことはできないのです。
ただし、その他資本剰余金を株主に支払う配当の原資にする場合があります。
たとえ利益が少なくても、その他資本剰余金を原資にして株主に配当を支払うことで株主をつなぎとめ、他社からの買収を避ける狙いがあります。
ただし、基本的に資本剰余金の配当は経営が軌道に乗っていないことを表すため、できる限り避けるべきです。
資本剰余金がマイナスになった場合の3つの対策
企業の経営においては、いつも利益が出続けるとは限りません。
利益が少なかったり、そもそも利益が出なかったりした場合には、生じた損失を別の方法で補填する必要があります。
資本剰余金がマイナスになるケースには、起業直後に何らかの原因で業績が低迷し、当初出資された資金を減らさざるを得ない場合が当てはまります。
では、そうした場合は具体的にどうすればいいのでしょうか?ここでは3つの対策を紹介します。
資本金・資本準備金から取り崩す(拠出する)
まず、資本金や資本準備金を取り崩しが挙げられます。
しかし、これは株主の利害に関わる事柄であるため容易にできるものではなく、株主の特別決議を経る必要があります。その後、特別決議を経て資本金を減少させた場合には、その減少分を資本剰余金で補填する必要があります。
また、自社の株式を株主から購入して処分した場合にも、資本剰余金は減少します。
利益剰余金から補填する
次に、利益剰余金から補填することもできます。
そもそも資本剰余金というのは、資本金を取り崩した場合に補填するためのものです。そのため、資本剰余金そのものをマイナスにしてはいけないので、利益剰余金を用いて補填することが認められています。
しかし、利益剰余金から資本剰余金へ補填するとなると、株主に配当する原資を取り崩すことになり、株主の利害に関わります。したがって、株主の決議などによって株主から一定の同意を得られなければ、利益剰余金から資本剰余金に補填することが認められないため注意が必要です。
自社株式を処分する
自社で発行した株式を取得して処分する方法もあります。
売却して利益が出た場合には資本剰余金にプラスされ、損失が出た場合には資本剰余金からマイナスされます。
また、自社株式を株主の決議を経て売却ではなく消却処分することも可能です。その際は、資本剰余金から消却分をマイナスすることになります。
なお、自社株式を処分して資本剰余金が0円を下回った場合には、最低でも資本剰余金が0円になる分まで利益剰余金を減額して補填する必要があります。
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資本剰余金は資本金に計上されていなものの、株主から資金調達によって得た資金が元になっています。
そのため、むやみにマイナスにしてしまうと、債権者からの突発的な支払い請求に対応できなくなります。
資本金だけでなく資本剰余金についても、どのような性質をもつものであるのか、あらかじめ知っておきましょう。
【関連】資本金とは?会社設立に必要な金額や目安、決定する際のポイントなどを解説
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監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。