<この記事は約 9 分で読めます>
「金融機関から創業資金の融資を受けたいけれど、何に気をつけるべきかわからない」
「確実に創業融資を受ける方法はないの?」
「融資を断られたらどうしよう・・・」
「創業融資申込みのガイドブック=マニュアルのようなものがあれば良いのに」
創業に必要な資金をどうやって確保したら良いか?これは新しく事業を始めようと考えている人なら、誰もがぶつかる悩みです。
自己資金が潤沢なら悩むことはありませんが、それは一握りの人だけ。
大多数の人は、創業融資を受けて事業を始めるのが一般的です。
では、創業融資の攻略法・裏ワザのようなものはあるでしょうか?
元銀行員の私が、特別にお答えします。
創業融資を確実に受けられる裏ワザはありません!
そんなものがあれば、誰も苦労しません。もしあるとすれば、それは違法なやり方です。
しかし、融資の申込みには手順があります。
金融機関が求める資料が準備できなかったなど、基本ルールを知らないと融資を受けることはできません。
この記事では、融資する側の視点から、こうした基本ルールや融資を依頼する際のコツ・注意するポイントについて解説していきます。
融資担当として、私は長年銀行でいろいろな事例を見てきました。そんな元銀行員の経験に基づいて説明していきますので、ぜひ今後の参考にしてください。
創業融資申込みガイド!融資を受けるにあたってのポイント
創業融資に限ったことではありませんが、融資申込みにはいくつかの手順が存在します。
銀行員という人種は「手順」「ルール」といった言葉を重視します。よく言えば真面目、悪く言うならマニュアル人間といったところでしょうか。
ですから創業融資申込みも、この手順通りでないと上手く進みません。
とはいってもこの手順、実はすごくシンプルで、決して難しいものではありません。
社会常識がある人なら、なるほど!と理解できる事柄ばかりです。
ただしポイントがひとつあります。それは金融機関が何を気にしているのか?という点です。
以下の内容は、これを意識しながら読み進めていただけると内容が入って来やすいかと思います。
今回は『創業融資の申込みをするために、あなたが銀行の融資窓口に来店した』というケースをイメージして下さい。
その1.銀行選択の理由~銀行員に警戒されないように
創業融資の申込みにお客様が来店すると、まず銀行員の頭に浮かぶのは「なぜウチに来たのか」という疑問です。
金融機関はたくさんあるのに「なぜウチに?」これはもっともな考えです。
ですからここで明確な理由を説明できないと、銀行員に警戒されることになります。
金融機関の融資審査というものは、基本的に人間の手作業です。
銀行員に警戒されたら、その後の審査はスムーズに進まなくなってしまいます。
「口座を持っているし、引き落としなどを利用してメインバンクにしているから」
「仕事場の近くだから」
これらが、もっとも自然で警戒されない理由でしょう。
実際の創業融資申込みでも、金融機関を選ぶ基準として代表的なものです。
これとは逆に
「ネームバリューがあるからこの金融機関にした」
「この金融機関と取引していることが良い宣伝になるから」
これもある意味そのとおりでしょうが、あからさま過ぎて逆に警戒されてしまいます。
また、
「なんとなく」
「特に理由はありません」
これはもう論外、疑ってくれと言っているようなものですので控えましょう。
またそのような発言をする人は、そもそも金融機関から相手にしてもらえません。
金融機関を選択した理由を理路整然と話すことができて、銀行員に警戒されないこと。
これは創業融資の、まさに入り口ですので非常に重要です。
その2.創業融資申込みの理由~「貸してくれ」ではなく「必要なので申込みます」
融資申込みをするわけですから、「貸してくれ」というのは決して間違いではありません。
ただし、創業融資の場合「貸してくれ」はNGワードになります。
融資の中でも、特に創業融資の申込みでは銀行員にネガティブな印象を与えるのは避けるべきです。
ですからこの場合は「貸してくれ」ではなく、「必要なので申込みます」が正解になります。
そしてもう一つ、創業融資では「事業計画」が重要になってきます。
事業計画に基づいて必要な資金を借りる⇒つまり「創業融資は必然だ」と胸を張って話すことがポイントになります。
その3.事業計画①~どうやって返していくのか?金融機関はそこに注目する
創業融資では事業をゼロから始めるので、当然過去の実績というものはありません。
全ては将来の見通しや予想という「未来」です。この未来を描いたものが「事業計画」であり、創業融資関連サイトでは事業計画に関する内容が多いのもこのためです。
今回は創業融資の申込みガイドがテーマですので、事業計画の詳しい中身は省略して、金融機関がどこに注目するのか?ということに着目したいと思います。
事業計画には、“会社が事業をして、利益をどのように獲得するのか?”が書かれています。
借入金は、利益で返済していくものです。
事業計画では、どうやって利益を上げるか?⇒つまりどうやって借入金を返していくのか?と言う部分に金融機関は注目します。
ネット上では事業計画書の作り方が多数紹介されていますが、突き詰めれば、どうやって利益をあげるのか?という内容を書いてあるものが事業計画書なのです。
専門家の力を借りるのも良いですが、自分で考えて、自分で作り上げた事業計画書であれば、たとえ手書きのかっこ悪いものでも、金融機関はちゃんと審査をしてくれます。(私の実体験です!)
大事なことは、手書きでも、専門家が作った立派なものでも区別なく、「断言」と「推測」の使い分けがしっかりされているか?という点になります。
その4.事業計画②~「断言」と「推測」の使い分け
「未来を描いたものが事業計画」と書きました。未来のことは誰も断言などできません。
しかし、事業に対する思い・理想が断言できていない計画書では創業融資を受けられません。
これとは逆に「推測は消極的」が大原則です。
業績、売上や利益の予想といった数字は推測するしかありませんが、バラ色の業績予想、根拠のない利益予想では単なる夢物語になってしまいます。
自分が100と思っているなら最高でも90にする、といったように事業計画書での推測は消極的に徹するべきです。
事業計画を作成する際は、「断言」と「推測」を使い分けるようにしましょう。
その5.事業計画③〜ダメだったらどうするのか?失敗を想定しておく
金融機関が一番恐れるものが貸倒です。ですから金融機関は常に貸出先が借入金を返せなくなったらどうするか?を考えています。
また金融機関は成功しか考えず、前しか見ていない人はどこかで転ぶ、と経験から知っています。
かといって、なにも事業計画書に失敗した場合の対処法まで書く必要はありません。
ただ、銀行員と話すときには「もし事業に失敗したらどうするのか?」という考えを、あるいは失敗した場合も考えていますよ、という姿勢だけでも見せるべきです。
「事業が上手くいかなくても〇〇を▲▲して、借入金を全部返してから出直します」
これくらいのことは言えるようにしておきましょう。
「断言」と「推測」の使い分けでもお話ししたように、断言すべきところはきっぱりと断言する。推測になる部分は消極的に徹する。
理想ばかり追うのではなく、足元を見据え失敗した場合などのリスクも常に考えている。
こうした姿勢こそ、私が長い銀行員生活から感じた思い描く理想の経営者像であり、他の多くの銀行員も同じだと信じています。
最後に
冒頭でお伝えした通り、創業融資を確実に受けられる裏ワザはありません。
しかし、銀行員が理想とする経営者像を知り、それに近づくことこそが、創業融資を受けることに繋がるのです。
創業融資を受けられる際はぜひ、今回お伝えしたポイントを意識して手続きに臨んでいただければと思います。
<執筆者・タッツン>
大学卒業後、大阪信用金庫・城東支店の渉外担当として3年間勤務。主に企業融資、預金預り、投資信託、生保販売等の業務に従事。大阪信用金庫を退職後、ハートランドグループの一員として企業の融資や税務会計のサポートを担当中。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。