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将来独立することを前提に、現在修行や経験を積んでいる方が、いざ独立しようと思ってもできない理由の多くが「独立資金が足りない」ということをご存知ですか?
業界で腕や評判がいい人ほど、「実際にどのように独立すればいいのかのプロセスを知らないという」ことが多々あります。
この記事では、
- 効率のいい独立資金の作り方
- 「信用保証協会」とは
- 「信用保証協会」のメリット・デメリットについて
- 自己資金を貯める方法
- 自己資金と認められない資金
などについて解説していきます。起業時に必要な独立資金についての悩みを少しでも解決できれば幸いです。
効率のいい独立資金の作り方
独立資金には大きく分けて2種類あります。1つは自己資金、もう1つは他人資金です。
独立資金を効率的に作るのは、やはり融資(=他人資金)を調達計画に組込むことが一番いいでしょう。
ただし、融資を受けるにはまずある程度の自己資金が必要です。それでは、自己資金と他人資金について、それぞれのポイントを解説していきます。
ステップ1:自己資金を用意する
「自己資金ゼロで始める」といったようなタイトルの本やネット記事もありますが、他人資金つまり融資を受ける際には、自己資金は必須だと考えておいた方がよいでしょう。
では、自己資金は一体いくら必要なのでしょうか。
独立資金のトータルで必要な金額は、業種毎に変わりますので、今回は例として飲食店やサービス業に絞ってご説明します。
飲食店の場合、自己資金は通常、融資を受ける金額の30%はあるほうがよいされており、自己資金ゼロで、金融機関から借入を成功させることは至難の技だと思われます。
そのため、800~1,000万円の融資を成功させるには、自己資金が最低でも100~300万円はあるとよいでしょう。店舗の必要でない業種では50万円から独立する方もいるそうですが、やはり手持ちの現金は多めに持っている方がベターです。
ステップ2:融資(他人資金)を活用する
ある程度の自己資金を用意できた方は、融資を検討してみましょう。創業時の融資は、
- 日本政策金融公庫
- 金融機関(都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合)
- 自治体の融資制度
の3つの組織・制度がおすすめです。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫では、新規事業の開始時もしくは事業開始時から7年未満の事業者が利用できる融資制度があります。
利用条件は以下の通りです。
- 新規事業に関する経験
開業予定の業種について、前職もしくはこれまでの仕事の中で経験があること - 自己資金
親や親族からの借入ではなく、自身が貯蓄した正味の自己資金があること
自己資金については後で詳しく述べます。 - 事業計画書
事業の成長性もしくは返済計画が妥当であること
金融機関(都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合)
都市銀行と地方銀行は資金力があるため融資限度額が大きい一方で、非常に審査が厳しく、一度審査に落ちてしまうとその金融機関ではなかなか融資にたどり着けない現状が多々あります。
信用金庫と信用組合は、地域の繁栄と相互扶助を目的としているため、都市銀行や地方銀行よりも融資の審査は通りやすい傾向にあります。
返済計画自体もそうですが、返済意欲や事業を成功させる意欲といった人間性も審査項目に加わります。
起業者向けの各自治体の融資制度(制度融資)
各地方自治体では、新規事業主等の支援を行う目的で、様々な融資制度を設けています。
例えば大阪府では、開業サポート資金といって、大阪府内でこれから新たも事業を開始される方、または事業開始後5年未満の中小企業者の方の事業資金向けに制度融資を設置しています。
条件はもちろんありますが、比較的低い金利で借入することが可能です。
このように、各自治体が信用保証協会と連携して行っているものがあります。
そのため、金融機関で融資を得るならまずは信用保証協会に相談することをおすすめします。
「信用保証協会」とは
信用保証協会とは、中小企業等の円滑な資金調達支援を目的として設立された公的機関です。
事業者が銀行等から融資を受ける際の「保証人」になってもらえる公的機関のことです。
金融機関が融資する際は、過去の取引履歴等を参考にしますが、初回取引のように取引実績がない場合では、金融機関側は融資に躊躇します。
もし、融資先が返済不能になった場合、貸倒れだけでなく、融資した側の担当者・支店の成績にも影響するからです。
そのため初回取引時に金融機関側から打診されるのが、信用保証協会付きの融資です。信用保証協会をつけておけば、そのようなリスクの際に、保証人として返済を肩代わりしてもらえるため、金融機関側もリスクを軽減でき安心して融資しやすくなるのです。
金融機関に相談に行った際は、ぜひお近くの信用保証協会の担当支店を確認してみてくださいね。
「信用保証協会」のメリット・デメリット
メリット
1.金融機関からの融資が通りやすくなる
融資先に万が一のことがあっても、金融機関は信用保証協会が代位弁済をしてもらえるので融資がしやすくなります。
2.金利が低くなる可能性がある
金融機関の金利は、貸倒れリスクや返済の実績がないと上昇します。
その点、信用保証協会が付いているということは、プロパー融資(保証なし)よりも、低くなる可能性があります。
3.長期借入が通りやすくなる
信用があるため、長期での借入れを認めてもらいやすくなります。
デメリット
1.信用保証協会に支払うコストがかかる
プロパー融資は保証がない分、金融機関への金利を支払うだけで済みます。
しかし、信用保証協会をつければ融資が通りやすくなる分、保証料が加算されます。
保証料は返済の仕方によって以下のように計算式がかわります。
(1)最終期日に一括返済される場合
・借入金額×{保証期間(月数)÷12か月}×保証料率=信用保証料
例えば、保証料率が年1.5%の保証付融資1000万円を期間6ヵ月で借り入れ、最終期日に一括返済される場合
10,000,000×6か月÷12か月×1.5%=75000 この75,000円が保証料とされます。
(2)返済方法を元金均等返済とされる場合
・借入金額×分割返済(回数別係数)×{保証期間(月数)÷12か月}×保証料率=信用保証料
例えば、保証料率が年1.5%の保証付融資1000万円を期間36ヵ月で借り入れ、返済方法を元金均等返済とされる場合
10,000,000×0.55×{36÷12}×1.5%=315,000 この315,000円が保証料とされます。
※均等分割返済のため、分割返済回数別係数は、保証協会の参照ください
※そのほか、均等分割決済で、返済据置の期間がある場合・返済方法が不均等分割決済の場合など計算式が違います。ご興味のある方は、信用保証協会HPをご参照ください。
そのため、長期的に借入すればするほど、保証料は下がります。
2.保証であって、代わりに返済してくれるわけではない
返済が厳しくなった場合、信用保証協会が代位弁済をしてくれますが、借入が0になるわけではありません。
あくまでも返済する場が変わるだけです。
自己資金を貯める方法
自己資金を貯めるには、給料からの天引きが一番です。
毎月自分で決めた金額を給料から天引きします。給料の1~3割の金額がオススメです。
月20万円の給料であれば、月に2~6万円。12ヶ月で、24万円から72万円が貯蓄となります。3年経てばある程度の資金が出来るでしょう。
また、融資面談時には審査担当者から自己資金を確認されます。
例えば、親からの借入を考える方もいますが、融資面談時は過去6か月間の通帳の提出を求められます。他人名義で大きな金額の振り込みがあれば、返済義務の有無を確認されて自己資金としてカウントされない場合があります。
特に日本政策金融公庫ではその部分を確認されます。
自己資金として認められない資金
融資の際に、自己資金として認められない資金もあります。
タンス預金
通帳に入れずにタンス預金として、「現金で貯めた数百万を自己資金にします」と相談にいらっしゃる方がいます。
しかし、その資金を自分で貯めたかのか、借入でないかを証明することはできません。金融機関側からみれば、形成過程のわからない資金であるため、自己資金とは認められないのです。
借入した資金
金融機関の借入ではなく、親族などからの借入した分も自己資金とは認められません。
無利息であっても、返済義務があれば借入金とみなされます。
多額な資金として通帳に浮上しているもの
過去6か月間の通帳のコピーの提出を求められるわけですが、その期間に多額の資金が振り込まれていると「見せ金」として疑われます。
金融機関は「見せ金」を極端に嫌がるので、多額の資金が急に振り込まれていると、融資担当者からどのような経緯かと質問を受けることになります。
【関連】
徹底解説!資本金の「見せ金」が絶対ダメな理由&銀行に見せ金と誤解されてしまうケースとは?
まとめ
独立資金を作るには、長期的なプランの元に、自己資金と他人資金(融資)を組み合わせることが非常に大切です。
巷では、「自己資金ゼロで始める」といった言葉も見受けられますが、どんなにいい事業計画書を作っても、融資を受ける場合は自己資金が30%ほど必要になります。
職人気質の方にとってみると「事業計画書なんて難しい」「この技術があるから必ずうまくいく」との意見が出るのはわかりますが、やはり事業計画書と自己資金は必要になります。
もし融資で何かお困りのことがあれば、創業融資で開業以来成功確率100%を維持している私たちハートランド税理士法人の無料相談をご活用ください。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。