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起業時の資金調達として代表的なものには創業融資がありますが、他にも助成金や補助金を受けるという方法もあります。
助成金や補助金は返済が不要であるため、融資とうまく組み合わせることで、資金調達後の負担を減らすことが可能です。
ここでは、助成金や補助金が起業に対してどのように有用であるか、どのような種類があるのかについてお伝えしていきます。
1.助成金や補助金とは
助成金や補助金とは、国や自治体が一定額の資金を支給することで、事業者をサポートする制度であり、支給された資金に返済義務が発生しないという特徴があります。
助成金は、「社会的に困っている人をサポートしたり、従業員が働きやすい環境を整備したりする行為」に対して支払われる公的資金です。
支給額は少額ですが特に申請時期に規定はなく、支給条件が満たされれば必ずもらえるお金です。
補助金は、「日本の経済活動を明るく前向きに進める行為」に対して支払われる公的資金であり、支給金額が多額になることもあります。
助成金とは異なり、申請時期も限られています。
さらに、審査が厳しいため申請の条件を満たしている場合でも、審査に通らないことも多いのが特徴です。
2.助成金・補助金の種類
助成金や補助金の支給元は次の4種類です。
以下にそれぞれの支給について触れていきます。
2-1. 経済産業省による支給
経済産業省からは、地域活性及び中小企業振興を目的とした補助金や、海外からの訪日客を地域に呼び込む事業に対する補助金、省エネ推進事業に対する補助金等が受けられます。
起業予定者を支援する中小企業庁も、経済産業省の管轄の補助金になります。
経済産業省系の補助金で代表的なものに、以下の4つがあります。
- 地域創造的起業補助金(通称、創業補助金と呼ばれます)
- 事業承継補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- ものづくり補助金
2-1-1. 地域創造的起業補助金(創業補助金)
創業補助金はこれから起業する人に対して、創業に必要となる費用の一部分を補助するために支給されるものです。
補助対象としては、人件費や建物の借入費用、設備投資費用や顧客開拓などにかかる費用になります。
補助率は2分の1以内であり、補助金額は外部資金調達のあるなしで支給額が異なります。
前者の場合は50万円以上100万円以内であり、後者の場合は50万円以上200万円以内で支給されます。
2-1-2. 事業承継補助金
事業継承補助金とは、会社の経営が後継者に引き継がれる際に発生する費用や、経営者の交代に伴って新しい取り組みに挑戦することに対して支給される補助金です。
補助率は3分の2以内であり、補助金額は、100万円以上200万円以内ですが、事務所の廃止や既存事業の廃止・集約を伴う場合、廃業等に関わる費用として最大300万円が上乗せされた形で、最大500万円が支給されます。
2-1-3.小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業の販路開拓による持続的な発展を促進するために支給されるものです。
販路開拓においては商工会議所からの支援を受けることが求められます。
補助率は3分の2以内であり、補助金額は50万円を上限としますが、従業員の賃金引上げや海外展開、その他購買者の利益に基づく新しい取り組みが認められた場合には、補助金が加算されることがあります。
2-1-4. ものづくり補助金
ものづくり補助金はその名称の通り、生産性向上に結びつくための新しいサービスの開発や試作品の開発、開発のための設備投資などに発生する諸費用の一部を補助するものです。
補助率は2分の1から3分の2以内で、補助金額は500万円から最大1000万円となります。
2-2. 厚生労働省による支給
厚生労働省の場合、管轄対象の一つに雇用があり、雇用促進を目的とした助成金が用意されています。
そのため、起業後に人を新たに雇う場合などにおいて申請可能です。
補助金と異なり助成金となりますので、申請時期に制限はありません。
一例としてキャリアアップ助成金があります。
キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者の会社内でのキャリアアップを促進することで、労働者のモチベーションを上げるためのものです。
創業における直接の資金援助ではありませんが、創業において新たに人を採用する際に利用できる助成金制度といえます。
【関連】会社設立をしたら助成金を活用しよう!種類は?自己資金は必要?
2-3. 地方自治体による支給
地方自治体においても、地方の経済活性化を目的とした補助金の支給を制度化している所があります。
補助金の申請の条件や支給額は自治体によって異なり、省庁が定める制度よりもユニークなものが多いです。
例としては起業予定者に補助金を支給することで家賃を負担する代わりに、近隣の商店街に対する活性化への活動に参加することを条件としているものがあります。
他にも自治体によっては産業系よりも福祉系の起業に力を入れているなど方針が異なりますので、それぞれの公式サイトを確認する必要があります。
2-4. 公益団体や民間企業による支給
社会公益を目的とする事業に対しての、独自の補助金や助成金を支給する制度が、公益団体や民間企業によって設けられていることがあります。
補助金や助成金の金額や支給条件、申請時期などは団体や企業によってまちまちですのでそれぞれ公式サイトで確認するとよいでしょう。
3.日本全国の補助金・助成金窓口一覧
日本全国には、地方自治体や公益団体による支給制度を設けている所も多いです。
以下に都道府県別に一覧で紹介します。
4.助成金や補助金の支給を受ける際の注意点とは
返済不要で資金調達の負担を減らしてくれる助成金・補助金ですが、注意すべき点もあります。
助成金のデメリット
- ランニングコストが必要
雇用促進や社員の育成補助を目的とした助成金を受ける場合、雇用や研修などにコストがかかってきてしまいます。
補助金のデメリット
- 採択される必要がある
- 費用を先出する必要がある
- 入金までのスパンが非常に長い
- 減額される可能性がある
補助金は、採択されて、その後いったん費用を全額負担し、実績報告書を提出してようやく入金されるため、資金調達が実行されるまでの時間が非常に長くなります。
助成金や補助金の頼りすぎるのはNG
助成金や補助金を受けるためには、申請用の書類をいろいろ準備する必要があります。
しかしそれによって「助成金や補助金を受ける事自体がゴール」になってしまう事になりがちです。
特に補助金の場合は審査が厳しいことが多いため、審査への対策に時間を掛けがちです。
本来、補助金や助成金は起業時の費用の一部を担うものに過ぎず、大切なことは事業を収益化につながるよう軌道に載せることなのです。
起業時には、事業開始の準備という本来のやるべきことに力を注ぐべきでしょう。
補助金や助成金はその準備の延長に留めるべきであり、どうしても申請したい際は専門家への依頼も検討することが必要です。
5. まとめ
国や地方自治体、公益団体、民間企業などから支給される助成金や補助金は、起業時の費用の負担を軽減することで事業促進をはかるためのものです。
助成金や補助金は、融資と異なり返済の義務を負うことのない資金調達方法です。
しかし起業する上では支給を受けること自体を目的として申請書類作成に労力をかけるのではなく、あくまでも費用の負担軽減のチャンスとして、本来の事業開始の準備の中で並行して申請することが大切です。
ぜひ上記の補助金・助成金の窓口のサイトをチェックしてください。
また個人で情報を探すのも大変です。
補助金・助成金について詳しい専門家もいます。
ぜひ問い合わせてみるとよいでしょう。
創業時は融資と合わせて、こういった制度を上手く利用して事業を成功に導けることを願っています。
監修:播广 祐子(はりま ゆうこ)
ハートランド社会保険労務士法人 代表社会保険労務士(大阪府社会保険労務士会所属 登録番号第27210131号)
地方自治体において17年間勤務。人事労務業務、社会保険の保険給付指導、保険医療機関指導業務のほか、総予算11億円を超えるベネッセアートサイト直島との協動による現代アートイベントのディレクションを担当。その後、23歳で取得した社会保険労務士の資格を活かすため、大阪市内の大手社労士法人に7年間勤務。年間1,000件を超える助成金申請をこなした助成金のスペシャリスト。労務相談、給与設計・計算、就業規則制定などの労務コンサルティング業務にあたりながら、研修講師としても活躍中。