会社設立時の電子定款の作り方と概要を解説!オンラインで手続きをおこなうメリット・デメリットは?

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会社設立を行ううえで欠かせない手続きが、定款作成です。

定款は作成後に公証人よる認証を受けなければ効力を有しないため、公証役場に出向く必要があります。

しかし、電子定款を作成してオンラインで申請すれば、公証役場に出向く手間を省くことが可能です。

この記事では、

  • 電子定款の概要
  • 定款認証と電子定款認証の違い
  • 電子定款のメリット・デメリット
  • 電子定款の作り方(申請方法)

などについて解説していきます。

電子定款とは

電子定款とは、Microsoft Wordなどの文書作成ソフトウェアで作成した定款をPDF化した電子媒体の文書を指します。

以前は書面での申請しか認められていなかった定款ですが、平成19年より電子公証制度が導入されたことから、現在は電子媒体での申請が認められるようになりました。

わざわざ公証役場に書面の定款を持参し、認証を受ける手間が不要になったことから、会社設立がよりスピーディーに行えるようになりました。

そもそも定款とは?

定款とは会社の基本的な規則を記した文書です。

会社設立時には必ず作成しなければならない重要な書類の一つであり、「会社の憲法」とも呼ばれます。

定款には会社名や本店所在地、役員名や資本金額、事業目的など基本的な事項と会社の運営ルールなどが記されています。

【関連】会社設立に必要な定款の作り方と認証手続きを分かりやすく解説

従来の定款認証と電子定款認証の違い

これまでの紙ベースの定款認証と電子定款認証では、どのような違いがあるのでしょうか。

従来の定款認証

従来の紙ベースの定款の場合、認証を受けるためにあらかじめ定款を3通作成しておく必要があります

1通は会社の保存用、1通は公証役場の保存用、もう1通は法務局への登記申請用と、計3通の定款を用意しなくてはなりません。各ページの継ぎ目ごとに発起人すべての割印が必要で、加除訂正があった場合にも発起人すべての訂正印が必要です。

また、不備があった場合は訂正や再提出を求められます。

公証役場へ何度も足を運ぶことにならないよう、事前に公証役場へ連絡し、作成した定款をFAXまたはメールすることで定款内容をチェックしてもらいましょう

内容に問題がなければ電話やメールなどで公証役場から連絡がきますので、同時に訪問する日時を予約することもできます。

定款認証が完了すると、用意していた3通の定款のうち1通は公証役場で原本として保管され、残り2通は「謄本」の朱印が押されて返却されます。

返却された定款謄本のうち、1通は法務局へで登記申請する際に利用し、残り1通は会社の保存用として保管します。

会社保管用の定款謄本は、会社名義で銀行口座を開設する際に必要となるため、大切に保管しましょう。

電子定款認証

電子定款はオンライン申請となるため、従来のように3通の定款を用意しておく必要がありません。

ただし、従来の紙媒体の定款は、申請時に加除訂正があれば発起人全員の訂正印で対応できますが、電子定款は一度オンライン申請すると内容を修正・変更できないため注意が必要です。

電子定款の場合にも、定款の内容に不備がないか事前にチェックしてもらうことをおすすめします。

申請前にまず、PDF化する認証前の定款ファイルをメールまたはFAXなどで公証役場へ送ると、チェックの結果を返送してもらえます。

内容に不備がなければ認証を受ける日時を予約し、公証役場で定款を受け取ります。電話やFAX、または認証を受ける公証役場のホームページに設置されている予約申し込みフォームを利用して予約をすることも可能です。

電子定款で申請した場合、会社の保存用分だけ定款謄本を取得します。

会社設立登記に必要な定款は、電子媒体で記録したファイルでの提出が可能です。

オンライン申請の場合は、電子証明書を取得する必要があるため、事前に署名用電子証明書を取得できるマイナンバーカードを用意しておきましょう。

電子定款のメリット・デメリット

オンラインで手続きが完結するため何かと便利に感じる電子定款ですが、当然ながらメリットもあればデメリットもあります。

電子定款のメリット

  • 印紙代を節約できる

書類の定款の場合、申請時に印紙代が4万円必要になりますが、電子定款は印紙代がかかりません

電子定款は電子情報で、印紙税法の対象外になるため印紙代が不要なのです。申請手続きの違いで4万円もの経費を削減できる点は大きなメリットです。

  • 時間を有効活用できる

電子定款は紙ベースの定款と違い、公証役場とのやり取りがすべてメールや申請フォームなどで行えます。

そのため、認証を受けるために日時調整を行ったり、公証役場に何度も足を運んだりする手間を省くことができます。

また、紙ベースの定款の場合は、発起人全員で署名し、公証役場で公証人に認証してもらうプロセスが必要ですが、電子定款は1名のみの電子署名で構いません。

会社設立時にはやることが多く時間に追われているため、定款認証に取られる時間を有効活用できるはメリットの一つといえます。

電子定款のデメリット

  • 専用ソフトが必要

電子定款作成の際には、まずMicrosoft Wordのような文書作成ソフトウェアを利用して定款を作成し、そのファイルをPDF化します。

電子定款は、PDF化したファイルに電子署名を入れなければ有効とされません。そのため、電子署名機能がついた専用ソフトを用意する必要があり、ソフトを持っていない場合はかなりの負担になります。

例えば、Adobe Acrobatの永続版ライセンスだと、4万5,770円(税別)ほどかかります。

また、電子証明書の取得や一連の手続きに必要な周辺機器も用意しなければなりません。

  • 申請後は修正変更できない

紙ベースの定款の場合は、訂正が必要なときには訂正印や捨印を押すことで修正が可能ですが、電子定款は修正不可とされています。

一度オンライン申請してしまうと修正・変更を行うことができません。

そのため、訂正箇所があった場合、再度申請をやり直す必要があり、申請のための手数料もかかります。

電子定款認証を受ける際の手数料は5万円で、電磁的記録の保存手数料が300円かかります。こうした手数料も再度支払う必要があるため、慎重に申請する必要があります。

電子定款の作り方(申請方法)

【出典】地方公共団体情報システム機構 公的個人認証サービスを利用した電子申請までの流れ

ステップ1:マイナンバーカードを取得する

新しい電子証明書を発行してもらう場合、マイナンバーカードを取得する必要があります。

マイナンバーカードは郵便、またはパソコンやスマートフォンなどから交付申請が行えますが、交付まで1カ月程度かかります。電子定款のオンライン申請を予定しているなら、早めにマイナンバーカードの交付申請を行いましょう。

以前は住民基本台帳カード(以下、住基カード)で署名用電子証明書を取得することができましたが、マイナンバー制度の導入により、住基カードは廃止されることとなりました。

平成30年12月21日をもって、すべての住基カードの電子証明書の有効期限が満了したため、住基カードを持っていたとしても新たに電子証明書を発行することはできません

ステップ2:電子証明書を取得する

次に、居住地の市区町村窓口で電子証明書発行の手続きを行いましょう。

マイナンバーカードと印鑑を窓口に持参し、電子証明書を発行してもらいます。電子証明書はマイナンバーカードの中に記録されるため、事前にマイナンバーカードを用意しておく必要があります。

初回のみ発行手数料は無料となっています。

ステップ3:ICカードリーダライタを用意する

マイナンバーカードに記録された電子証明書をパソコンに読み込ませるには、ICカードリーダライタが必要です。

住民基本台帳カードで使用していたICカードリーダライタは、マイナンバーカードには対応していないこともあるため、事前にメーカーのホームページなどで確認しましょう。

詳しい対応機種については、「地方公共団体情報システム機構 公的個人認証サービスポータルサイト」をご確認ください。

ICカードリーダライタを新たに購入する場合は、公的個人認証サービスに対応しているものを選んでください。

市販されているICカードリーダライタは、機能によって価格が大きく変わります。約1,000円~5,000円と価格幅がありますので、必要な機能を確認して購入するようにしましょう。

また、ICカードリーダライタのドライバは、最新のバージョンをインストールするようにしてください。

平成29年よりスマートフォンに搭載されているNFC(近距離無線通信技術)機能を利用して、スマートフォンをICカードリーダライタ代わりに利用することも可能となっています。

ステップ4:PDFに電子署名を付ける

PDFに電子署名を付けるために、まずは「PDF署名プラグインソフト」をダウンロードします。

法務省の登記・供託オンライン申請システムにて、無料で「PDF署名プラグインソフト」を配布していますが、利用するにあたりAdobe Acrobatを用意する必要があります。

次に、このソフトを利用してPDFに電子署名を付与した後、マイナンバーカードに記録した電子証明書を利用するための「利用者クライアントソフト」をインストールします。

インストールしたソフトウェアを起動させ、ICカードリーダライタをパソコンに接続してマイナンバーカードを読み込み、電子署名を完了させます。

ステップ5:電子定款の認証手続きを行う

作成した電子定款は、法務省のオンラインシステムを利用して認証手続きを行います。

まずは「登記・供託オンライン申請システム」で申請者情報を登録します。

次に、手順に従って「申請用総合ソフト」をインストールし、「申請用総合ソフト」を起動し、申請書を作成します。

その後、電子定款を添付し、2度目の電子署名をして申請書をアップロードします。

最後に、公証役場にオンライン申請した旨を連絡したら電子定款の申請は完了です。

まとめ

電子定款申請を自分で行うことは可能ですが、コスト面を考慮した場合、自分で手続きを行うのはあまりおすすめできません。

電子定款を作成するための専用ソフトを購入したり、パソコンにソフトをインストールして申請する手間を考えると、会社設立に詳しい税理士事務所や税理士法人などに依頼したほうが結果的にコスト削減につながります。

電子定款を作成する際は、ぜひハートランド税理士法人にご相談ください。定款の内容のチェックはもちろん、会社設立に関する手続きを代行手数料0円で対応させていただきます。

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