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法人最大600万、個人事業主最大300万の支援が受けられる「家賃支援給付金」。
この記事では、
- 家賃支援給付金の概要
- 損をしないために押さえておきたい申請のタイミング
- 算定となる契約や費用
- 申請手順
- 東京都限定の上乗せ家賃給付金
などについて、Q&Aも交えながら解説していきます。
家賃支援給付金とは?
家賃給付金とは、新型コロナウイルス感染症やそれに伴う緊急事態宣言により売上が減少した事業者の事業継続をサポートするために、地代・家賃(賃料)の負担を軽減する給付金です。
支給対象は?対象外の場合も特例で救済措置あり
支給対象
以下の条件1〜3のすべてを満たす事業者が支給の対象です。
(条件1)資本金10億円未満の中小企業、個人事業主(フリーランス含む)など。
※企業や個人事業主だけでなく、医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人など幅広い事業者が対象です。
(条件2)2020年5月〜12月の売上高が1ヶ月で前年比マイナス50%もしくは連続する3ヶ月の合計が前年同期比で30%以上マイナス
(条件3)事業をするために占有する途中、建物のを賃料を支払っていること
※事務所として利用するなど、事業のために賃料を支払っていることが条件です。単なる住居の家賃は対象外です。
給付対象外の方
以下のいずれかに当てはまる場合は給付対象外です。「性風俗産業と宗教団体は対象外」と覚えておきましょう。
- 風俗営業等の規制および業務の適正化等に関する法律に規定する「性風俗関連特殊営業」、当該営業に係る「接客業務受託営業」をおこなう事業者
- 宗教上の組織もしくは団体
- 上記1と2に掲げる者のほか、給付金の趣旨・目的に照らして適当でないと中小企業庁長官が判断する者
給付要件には当てはまらないが、給付対象となる可能性がある方
給付要件に当てはまらない方でも、以下の場合は給付対象となる可能性があります。
給付額と算定方法について
法人は最大600万円、個人事業主は最大300万円です。
算定方法は下記の表をご覧ください。
(例1:家賃100万円のオフィスを借りている法人の場合)
100万円×2/3=月額約66万円、支給額396万円
(例2:家賃50万円の店舗を借りている個人事業主の場合)
25万円+[(50万円-37.5万円)×1/3]=月額約29万円、支給額174万円
詳しくは「よくあるQ&A」の項目で後述しますが、すでに地方自治体から別の賃料支援を受けている場合、減額となる可能性があります。
算定対象となる契約や費用
算定の対象となるのは、「自らの事業のために占有する土地・建物の賃料の支払い」です。
自己保有の土地・建物についてローンを支払っている場合や、単なる住居は対象外となります。
一方、個人事業主の「自宅兼住所」は、確定申告書における損金計上額などで一部事業用に使用していることが証明できれば、事業に用する部分については対象となります。
そのほか、詳しい費用などは下記画像を参考にしてください。
申請期間は2021年1月15日まで。申請のタイミングには注意が必要
申請期間は、2020年7月14日〜2021年1月15日までです(電子申請の場合2021年1月15日の24時まで)。期間は他の給付金に比べてゆとりがあり、2020年8月現在は対象外の方でも、今後の売上次第では対象となる可能性があるでしょう。
また、家賃支援給付金は申請の期間中のどの月においても申請をおこなうことができます。
直前で支払いの猶予を受けている月や値下げ、または免除けているときに、家賃支援給付金を申請する必要はありません。元の水準の賃料に戻った時に元の水準で賃料を支払い、申請をおこなえば、元の賃料の水準を対象として給付金を受けとることができます。
制度を最大限活用できるタイミングで申請するようにしましょう。
申請は原則WEB上。難しい場合は相談窓口や申請サポート会場の活用を
申請は原則WEB上でおこないます。
ただ、PC操作に不慣れな方をはじめ、WEB上での申請が困難な方は「申請サポート会場」や「電話相談窓口」をご利用ください。スタッフが申請のサポートをしてくれます。申請サポート会場は事前の電話予約が必要なため気をつけましょう。
(電話相談窓口)
・電話番号:0120-150-413
・受付時間:09:00〜18:00(土日・祝日を含む)
申請に必要な添付書類
申請に必要な添付書類は下記の通りです。
法人の場合
- 自署の誓約書(公式HPからダウンロード可能)
- 2019年分の確定申告書別表第一の控え
- 法人事業概要説明書の控え
- 受信通知(e-Taxで確定申告をおこなった場合のみ必要)
- 対象月もしくは対象期間の売上台帳など(経理ソフトの売上データ、エクセル等で自作した売上データ、手書きの売上台帳のコピーなど)
- 賃貸借契約書の写し
- 直近3ヶ月間の賃料の支払実績を証明する書類(貸主からの領収書、銀行取引明細書、銀行通帳の表及び支払い実績がわかる部分の写し、賃料の支払い証明証明書のいずれか)
- 給付金の振込先がわかる口座情報
売上を証明する書類(売上台帳など)は、「2020年○月」と明記されていることに加え、申請に用いる売上が減少した月もしくは期間がわかりやす いよう、下線を引いたり枠で囲んだりするなど工夫してください。
個人事業主の場合
- 自署の誓約書(公式HPからダウンロード可能)
- 2019年分の確定申告書別表第一の控え
- 所得税青色申告決算書の控え
- 受信通知(e-Taxで確定申告をおこなった場合のみ必要)
- 対象月もしくは対象期間の売上台帳など(経理ソフトの売上データ、エクセル等で自作した売上データ、手書きの売上台帳のコピーなど)
- 賃貸借契約書の写し
- 直近3ヶ月間の賃料の支払実績を証明する書類(貸主からの領収書、銀行取引明細書、銀行通帳の表及び支払い実績がわかる部分の写し、賃料の支払い証明証明書のいずれか)
- 給付金の振込先がわかる口座情報
- 本人確認書類(運転免許証、マインナンバーカード、写真付き住民基本台帳カード、在留カード、特別永住者証明書、外国人登録証明書のいずれか。住民票の写し及びパスポートの両方、住民票の写し及び各種健康保険証の両方)
申請の流れ
1.家賃支援給付金HPへアクセスし、マイページを作成する
IDとパスワードは再ログインする際に必要なため、必ず保管しておきましょう。
また、推奨環境は下記画像の通りです。
2.マイページから申請をおこなう
マイページから必要書類を添付し、申請をおこないます。
3.家賃支援給付金事務局で申請内容を確認する
内容に不備があった場合は事務局からメールとマイページの通知で連絡が入ります。
4.給付通知が発送され、登録の口座に振り込まれる
申請者本人と貸主(もしくは管理会社)の両方に給付通知書が発送され、給付金が振り込まれます。
貸主に通知書が送られるのは、貸主に黙って不正受給することを防ぐのが目的だと考えられます。
よくあるQ&A
Q.個人事業主やフリーランスの自宅兼住居も対象になるのでしょうか?
A.はい、対象です。ただし、事業に使用している部分(=確定申告の家事按分で経費計上している金額)に限ります。
家賃支援給付金はあくまで「事業所の家賃支援」のため、住居部分は対象外となります。
Q.地方公共体から賃料支援を受けている場合も対象になるのでしょうか?
A.はい、対象です。ただし、家賃支援給付金が減額される可能性があります。
具体的には、地方公共団体から受け取った支援金(中小企業家賃支援給付金や中小企業等賃料補助金など)と家賃支援給付金の金額の合計が賃料の6ヶ月分を超えた場合、超過分が減額されます。
Q.管理費や共益費は賃料の範囲に含まれますか?
A.はい、含まれます。ただし、賃料とは別に管理費と共益費について規定された契約書がある場合は対象外です。
Q.借地に建物がない場合でも対象になるのでしょうか?
A.はい、対象です。
借地であれば、その場所に建物があるかは関係ありません。例えば、駐車場や事業に借りている資材置き場なども対象となります。
Q.社宅や会社の寮は対象になるのでしょうか?
A.はい、対象です。ただし、従業員に転貸している場合は対象外となります。
法人が社宅・寮に用いる物件を賃貸借契約等に基づいて借り上げ従業員を住まわせており、さらにその物件の賃料を当該法人の確定申告等で地代・家賃として計上している場合は給付対象です。
ただし、賃貸借契約に基づいて従業員に転貸している場合は対象外となります。
その他の質問については、公式HPの「よくあるご質問」をご参照ください。
【東京都限定】東京都家賃等支援給付金について
東京都では国の家賃支援給付金に上乗せして、独自に家賃支援給付金を支給しています。
概要は以下の通りです。
対象要件
以下のすべてを満たすことが要件です。
(要件1)国の家賃支援給付金の給付決定を受けていること
(要件2)都内に本店又は支店等のある中小企業等または個人事業主であること
※医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人、一般社団法人、公益社団法人、一般財団法人、公益財団法人等、会社以外の法人も幅広く対象
(要件3)都内の土地又は建物において、家賃等(管理費、共益費、消費税を含む)の支払いを行っていること
このため申請の手順としては
- 国の家賃支援給付金を申請
- 給付決定、振込
- 東京都家賃等支援給付金を申請
となります。
給付額
給付は国の家賃支援給付金に丸々上乗せでおこなわれます。計算方法や給付額は下記をご参照ください。
上限額は、
- 中小企業等:37万5,000円(家賃月額225万円以上の場合)
- 個人事業主:18万7,500円(家賃月額112.5万円以上の場合)
となっており、家賃の金額によってそれぞれ支給額が定められています。
なお、中小企業等と個人事業主は給付の上限額が違うだけで、家賃に対する給付額の割合は同じです。
例えば、家賃月額が20万円の場合、中小企業であろうと個人事業主であろうと支給額は5万円となります。
詳細は下記の「給付額早見表」をご覧ください。
受付開始は2020年8月17日から。申請方法はオンラインのみ
東京都家賃支援給付金は2020年8月17日から受付を開始しています。
また、申請方法は国の家賃支援給付金と同じくオンラインのみとなっています。相談窓口は下記の通りです。
<東京都家賃等支援給付金コールセンター>
電話番号:03-6626-3300
開設時間:09:00~19:00(土曜日・日曜日・祝日含む毎日、11月以降は土曜日・日曜日・祝日・年末年始除く)
まとめ
ポイントをまとめると、
- 対象となるのは事業目的で支払っている家賃であり、自宅兼住所や社宅も対象。ただし、単なる住居やローンは対象外。
- すでに他の制度で家賃の減額や免除がされている場合、申請は元の家賃水準に戻ったタイミングでおこなうのがもっともお得
- すでに他の制度で補助金等を受け取っている場合も対象となるが、減額される可能性がある
となります。
特に申請のタイミングについては給付金額が大きく変わってくる可能性があるため、十分に注意しておきましょう。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。