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ベンチャー企業の資金調達方法として定着してきている「ベンチャーキャピタル」ですが、ベンチャーキャピタルとは、そもそも何なのかご存知でしょうか?
今回は、
- ベンチャーキャピタルの概要や特徴
- ベンチャーキャピタルの仕組み
- ベンチャーキャピタルに投資を受けるメリット・デメリット
- ベンチャーキャピタルと接点を持つ3つの方法
- 日本におけるベンチャーキャピタルの4分類
など、ベンチャーキャピタルとは何なのかという基礎知識から、目的や仕組みなどを詳しく解説します。
ベンチャーキャピタルの概要や特徴
まずは、「そもそもベンチャーキャピタルとは何か?」ということを理解しておきましょう。
ベンチャーキャピタルとは
ベンチャーキャピタルとは、創立間もないベンチャービジネスに資本を提供する機関のことです。
「新規事業の将来性に投資して配当金を回収し、そこから利益を得る」というのがベンチャーキャピタルの仕組みです。
ベンチャーキャピタルという言葉は、英語の「Venture(投機)」と「Capital(資本)」を組み合わせた造語で、「VC」という略称で呼ばれることもあります。
なお、エンジェル投資家とベンチャーキャピタルの違いは、個人か法人かという点です。
ベンチャーキャピタルは個人投資家の資金をまとめ、法人として代わりに投資しています。一方、エンジェル投資家は個人が直接ベンチャー企業へ投資しています。
ベンチャーキャピタルの特徴
創業したての企業に対して、ハイリスク・ハイリターンな投資を行うのがベンチャーキャピタルの特徴です。
まだ成功するかどうかわからない企業に大規模な資金提供を行う点はハイリスクですが、その分投資先が上場すれば莫大な利益(=ハイリターン)を得られることもあります。
そのため、ベンチャーキャピタルは投資先に対してコンサルティングなどを行い、出資が無駄にならないようさまざまな成長支援をします。
もちろん、事業に成功の見込みがないとわかれば損切りのために手を引くこともあります。
銀行との主な違い
銀行とベンチャーキャピタルの主な違いは、資本提供の方法にあります。
銀行は「融資」としてお金を貸し出しますが、ベンチャーキャピタルは「出資」として企業に投資をします。
銀行の融資は簡単にいうと借金のため、資金の提供を受けると返済しなければなりません。返済には利息が発生し、銀行はここから利益を得ます。銀行からの融資を受けるには、問題なく返済していくための信用と担保を要求されます。
対して、ベンチャーキャピタルが行うのは「出資」です。資金を返済する必要はありませんが、ベンチャーキャピタルは出資者として「利益配当請求権」を持つため、配当金の支払いが発生します。
事業内容に将来性があれば信用や担保は重視されないこともあり、創業間もない企業が大規模な資金を必要としているケースに適しています。
ベンチャーキャピタルの仕組み
次に、ベンチャーキャピタルの仕組みをステップごとに詳しく見ていきましょう。
1.投資事業組合(ファンド)組成
ベンチャーキャピタルが投資をするためには、当然ベンチャーキャピタル自体の組成が必要です。
ベンチャーキャピタルはまず「投資事業組合(ファンド)」を組成し、投資家から資金を集めて投資する企業の選定を始めます。
2.ベンチャー企業へのアプローチ
ベンチャーキャピタルとは、優れた将来性を持つ新規事業に投資することを目的とした機関です。
そのため、出資を望むベンチャー企業からアプローチを受けるのはもちろん、有望なベンチャー企業を見つけるための活動も並行しておこないます。
代表的なのは、後述する「ピッチコンテスト」などのイベント開催です。有望な企業とは面談の機会を設け、事業内容や投資額を吟味していきます。
3.投資・経営支援
そして、選定された企業に投資・経営支援を行います。
外部からのコンサルティングだけでなく、場合によっては社員を送り込むなどして、企業の成長を支援していきます。
4.EXIT・資金回収・分配
株式上場など、投資時点で設定した目標を達成したときには「EXIT」といって株式を売却し、資金回収を行います。
また、ファンドの存続期間内に目標達成できなかった場合や、経営状況の悪化で支援を続けることが悪手になると判断した場合も株式を売却します。
そうして得た利益をそれぞれの投資家に分配するまでが、ベンチャーキャピタルの役割です。
ベンチャーキャピタルに投資を受けるメリット・デメリット
それでは、ベンチャーキャピタルから投資を受けるメリットとデメリットをご紹介します。
メリット
返済不要
ベンチャーキャピタルの出資を受ける主なメリットは、資金の返済が不要なことです。
先にも触れましたが、銀行などの金融機関から融資を受けた場合は、必ず返済と利息が発生します。返済能力があることを証明するために、会社の信用度や担保も必要です。
一方、ベンチャーキャピタルの場合、配当金の支払いは発生しますが資金を返済する必要はありません。万が一事業が軌道に乗らず倒産した場合でも、借金は残りません。
また、投資を受ける際も、信用性より事業の将来性の方が重視されるため、場合によっては全く元手や経験がない状態からでも出資を受けられることがあります。
投資以外にも様々なサポートあり
ベンチャーキャピタルは、投資した事業を成功させるために様々なサポートを行います。
ベンチャーキャピタルから社員を派遣する人材支援や、専門家によるコンサルティングなど、企業の成長を促進させるための支援を受けることができます。
技術や意欲はあっても、経験やマネジメント力が足りないベンチャー企業にぴったりと言えるでしょう。
デメリット
経営自由度が下がる恐れがある
ベンチャーキャピタルは利益回収のために企業の運営に干渉します。
これを「自由度が下がった」と不満に感じる経営者もいるでしょう。
また、ベンチャーキャピタルの目的はあくまで投資で利益を出すことです。出資や支援に利益という答えを出し続けなければ、手を引かれてしまったり、経営者が取締役から外されてしまったりすることもあります。
ベンチャーキャピタルからの出資には返済義務はないもの、それなりのリスクもあることを知っておきましょう。
ベンチャーキャピタルと接点を持つ3つの方法
ベンチャーキャピタルに出資してもらいたいと思ったときには、
- 直接連絡する
- 人に紹介してもらう
- イベントやコンテストに参加する
などの方法で接点を持つことができます。
直接連絡する
ベンチャーキャピタルは日本に100以上あり、ほとんどがウェブサイトなどで連絡先を公開しています。
自分の事業に興味を持ってくれそうなベンチャーキャピタルに、直接電話やメール、SNS等で連絡してみるのが一つ目の方法です。
ただし、ベンチャーキャピタルは膨大な数の起業家からアプローチを受けるので、反応が返ってくる可能性は低いでしょう。
人に紹介してもらう
友人・知人・親戚などの中に、ベンチャーキャピタルと関わりのある人がいれば顔を繋いでもらえる可能性があります。
また、会計士・税理士なども職業柄ベンチャーキャピタルと関係していることがあります。頼れそうな知り合いがいれば、ベンチャーキャピタルへの紹介を頼むとチャンスがあるかもしれません。
イベントやコンテストに参加する
最後に、イベントやコンテストに参加して、実力で出資を勝ち取る方法があります。
実際に入賞はしなくても、そこで紹介した事業内容が投資家の目に留まれば出資を受けられるかもしれません。
各ベンチャーキャピタルや、企業・学校・自治体などが「ピッチコンテスト」と呼ばれる事業プレゼンイベントを開催しているので、情報収集も兼ねて参加してみましょう。
【参考】
・PR TIMS「ピッチコンテストに関するプレスリリース一覧」
・LINK-J「ピッチコンテスト一覧」
日本におけるベンチャーキャピタルの4分類
日本のベンチャーキャピタルは、目的や特徴ごとに大きく4種類に分けられます。
政府系ベンチャーキャピタル
政府系ベンチャーキャピタルとは、「産業革新機構」など、政府・公共団体が設立したベンチャーキャピタルです。
日本の技術力を世界に広めるため、技術力の高い中小企業やベンチャー企業を中心に投資を行っています。
金融機関からの融資を受けづらい企業を救済する目的があるのも特徴です。
【参考】株式会社INCJ
事業系ベンチャーキャピタル(CVC)
事業系ベンチャーキャピタルとは、「コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)」とも呼ばれ、自社事業との相互効果が期待できるベンチャー企業に投資を行う機関です。
そのため、同業界内で新規性や専門性の高い企業に投資する傾向があります。
金融機関系ベンチャーキャピタル
金融機関系ベンチャーキャピタルとは、銀行などの金融機関が設立したベンチャーキャピタルのことです。
将来性の高いベンチャー企業に投資し、利益の回収を目的としています。
また、ベンチャー企業が成長して上場した後を見据えて、融資先を確保しておくという意味もあります。
【参考】三菱UFJキャピタル株式会社
独立系ベンチャーキャピタル
独立系ベンチャーキャピタルとは、投資家が独立して設立したベンチャーキャピタルのことです。
自身も起業経験がある場合が多く、出資する企業に経営ノウハウを提供するなどの支援を行なっていきます。
他の種類のベンチャーキャピタルより、出資企業との距離が近いのが特徴です。
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ベンチャーキャピタルは、銀行等の融資以外で資金調達をしたい場合の選択肢の一つです。
返済義務がなく大規模な出資を受けることが可能で、経営支援を受けられるなどメリットがあります。
一方、利益回収のために経営方針のコントロールを受けるため、経営自由度が下がるというリスクもあります。
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監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。