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飲食店を始めようと思っても、他業種から参入するとわからないことがたくさんあるかと思います。
例えば、オペレーションや店内の整備、それだけではなく、開業資金はいくら必要なのか、という点でも疑問を持たれる方がいるでしょう。
今回は、飲食店を始める方向けに、開業資金はどの程度準備するべきか、またどのように資金調達をすればいいのかをまとめてみました。
1 飲食店の開業資金は平均いくらか
では飲食店を開業するにはいくら必要なのでしょうか。
飲食店といえど、居酒屋からカフェまで色々な業種があります。
開業資金の要素として、大きく3つに費用を分けることができます。
1) 店舗の物件取得費用
店舗開業では、店舗となる物件を取得する費用がかかります。
一般的に物件取得には、
- 敷金・礼金(保証金)
- 仲介手数料
- 前家賃
等の費用が発生します。
また居ぬきでの取得の場合は、内装や整備を移行してもらえるため「造作譲渡費」がかかります。
敷金礼金については、多額の資金が必要ではないと思われる方も多いのですが、個人で賃貸する場合と違い保証金が賃料の6~10か月分と長くなっています。
家賃が10万円から50万円程度であれば、60万円~500万円ほどは準備する必要があります。
2) 店舗整備投資費用
飲食店の工事費は、坪単価で40~80万円前後といわれています。
特に必要なのは、厨房周りでしょう。キッチンの設備やダクトがとても多いです。もちろん「居ぬき」という格安で取得できる方法もあります。
厨房を改造するならば、300万円以上の費用をみておいたほうがいいかと思います。
また、設備(シンクや冷蔵庫)をそろえるにあたって、新品の設備を購入するだけでなく、リサイクルショップでの購入やリースを活用することも検討して下さい。
長期的に飲食店を経営するならば、設備のメンテナンス資金も考えればリースの方がいい場合もあります。
3) 経営の余力資金(運転資金)
おすすめは、半年から1年ほどの余力資金は用意しておくことです。
どんなに別のところで繁盛したとしても、店舗が移れば客層が変わり、オープン当初は、継続的な客足を確保することが困難です。
黒字になるまで事業を継続できるだけの資金は、多めに用意しておきましょう。
金額としては150万円~200万円ほどを用意しておくといいでしょう。
2 開業資金を安くするコツとは
開業資金には先述した通り、やはり諸々の費用がかかることをお分りいただけたかと思います。
では、開業資金を出来るだけ安く抑えるコツはあるのでしょうか?
方法の一つとして、例えば先ほど話に出た「居ぬき」という方法があります。
個人でいえば家具付き物件のことで、初期費用が安く済む利点があります。
もう少し詳しくみていきましょう。
居ぬき物件は本当に良いのか?
既に、店舗運営をしていたところを受け入れるため、ある程度の設備が整っています。
例えば、飲食店の居ぬき物件を引き継ぐ場合、キッチン周りや椅子・机などもそのまま引き継げ、改装費・設備費などを抑えることが可能になります。
ただし、デメリットもあります。
引き継いだ設備が劣化している場合、利用できずに廃棄することがあります。
業者に引き取ってもらえる場合もあるのですが、大型廃棄であれば別途金額がかかる場合もあります。
ダクトや配線が痛んでいれば、一から工事しないといけません。
居ぬき物件の場合は、今までどのようなメンテナンスをしたか下調べが必要になります。
また、引き継ぐ店舗がなぜ辞めたのか確認する必要があります。
例えば、客足が遠のいた理由が、単純にそのお店が地域にあわなかったのか。もしくはその店舗自体になにか問題があったのかのどちらかです。
不動産会社への問い合わせや、実際にその店舗に赴いて状況を確認するとよいでしょう。
移動式飲食店(カフェ)の経営
固定費を抑える方法の一つに、「家賃をかけない」という考え方があります。
移動式のカフェや、ランチ販売であれば、顧客の多い場所へ移動することもでき、多額の固定費がかかりません。
費用は100~300万円あれば開業が可能です。
このような販売車のリースもあります。
3 開業資金の集め方~日本政策金融公庫からの融資はなぜいいのか~
日本政策金融公庫では、新企業育成貸付といった融資制度があります。
個人や小規模の法人を対象に700万円程度の融資をおこなっています。
新企業育成貸付には「新規開業資金」、「女性、若者/シニア起業家支援資金」、「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」、「新事業活動促進資金」、「中小企業経営力強化資金」の5種類の制度があります。
飲食店を新たに起業される方は、「新規開業資金」・「女性、若者/シニア起業家支援資金」が一番融資を獲得しやすいかと考えます。
民間金融機関の融資は企業自体の実績の確認や与信の審査がとても厳しいため、開業資金の調達はやや困難です。
ですが、日本政策金融公庫の場合は上記のような新規事業向け貸付の制度が多く、比較的開業資金が得られやすいです。
とはいえ日本政策金融公庫でさえも、「事業計画書」や数多くの資料を用意しなければなりません。
それでも、おすすめしたい理由として、日本政策金融公庫で融資を受ければ、それが実績となります。今後銀行から融資を受ける際に、与信だけでなく借入の信用度が増します。
また、経営状況が悪化した場合には、「減額申請」をすることが可能です。
返済期間は延長しますが、毎月の返済金額を減らすことが可能です。
4 そもそも開業資金の考え方とは
開業資金とはオープンするための資金だけではなく、開業後も店舗運営を可能にする資金です。
そのため、運転資金も含まれます。運転資金には、人件費・家賃・光熱費、また資金調達した場合は借入れに対しての利子の支払いも考えなければなりません。
先に述べた日本政策金融公庫に融資を申請する際には、「事業計画書」が必要になります。
事業計画書の作成を通して、本当にいくら必要なのかを見直すきっかけになるのではないでしょうか。
ただし個人で開業の準備を行いつつ、事業計画書や各種方面の資料を作成するのはとても難しいと思います。
専門家に依頼するのもよいでしょう。
ぎりぎりの経営はよくはない。準備はしっかりと
あるカフェのオープン前に立ち会うことがありました。
そのカフェは賃貸ではなく購入した物件で、お皿やカップは親せきからの貰い物でした。
店舗の内装は非常にシンプルであり、驚いたことに庭も整備されておらず、お祝いのつもりで行ったはずが、庭の整備を手伝う羽目になりました。
どうしたものかと、オーナーに話しを伺ったところ、前店舗では固定客がついて、より良い立地にいい物件が見つかったので、今回移転して出店を行ったとのことでした。
また飲食店のコンサルタントと契約しており、月々の支払は相当な額になっていたようです。
しかし最も驚くべきことは、運転資金の借入は3か月分しか考慮していないということでした。結果的にその店舗は、固定客が着くまでに時間を要して、1年半で閉店することになりました。
店舗の開業にいたっては、やはり色々なトラブルや予想外のことがつきものとなります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回こちらで述べた飲食店の開業資金は、あくまで一般論です。
設備や内装をよりよくするとさらに経費が掛かります。自分が経営したい業態は開業資金がどのくらいかかるか、実際にどこまで融資を得ることができるかのを考えてみましょう。
資金調達が出来なければ、その計画も絵に描いた餅になります。
そのためにも事業計画書はとても大切です。
経営者自身が作成することも多いですが、もし難しいようでしたら、資金調達の専門家に依頼するのも一つの手でしょう。
ですが、経営者との相性もあります。
そのため、複数の専門家に相談をしてみて一番コミュニケーションが円滑で、実績も伴った専門家を選ぶことおすすめします。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。