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会社設立手続きにおいて、定款作成は必須事項のひとつです。
そんな定款の中でも、会社の活動範囲や内容を決める事業目的は慎重に決めていく必要があります。
この記事では、
- 事業目的とは?
- 事業目的が必要な2つの理由と3つの要件
- 事業目的の記載する際の4つのポイント
など、事業目的を作成したり記載したりする際のポイントを解説していきます。
定款に記載する『事業目的』とは
事業目的とは、会社がどのような事業で収益活動を行うのか記載したものです。
会社の業務内容を規定する極めて重要な項目のため、定款の中でも絶対的記載事項と定められており、必ず記載する必要があります。
会社を設立した場合、事業目的に記載した範囲内のみで権利能力を有するため、事業目的に記載した以外の事業を行うことはできません。
そのため、将来的に行う予定のある事業も記載しておきましょう。記載したからといって必ず実現しなければならないという制約もありませんし、事業目的の記載上限数もありません。
とはいえ、関連性のない事業を羅列していると、何をしている会社か分からず対外的な信用に関わることもあるため注意が必要です。
そもそも定款とは?
会社設立手続きを行う場合、必ず作成しなくてはならないのが定款です。
定款とは、会社の商号や本店所在地、事業目的や事業内容、資本金額や発起人名などの事項を記載した会社のルールブックのようなもので、会社の憲法とも呼ばれています。
定款は会社法に則って作成せねばならず、公証人により認証を受けた定款に記載した内容は法的な効力が発生します。
定款には絶対的記載事項と相対的記載事項、任意的記載事項を記載します。中でも、絶対的記載事項は必ず記載しなければならない事項で、違法性があったり記載がなかったりした場合は、定款自体が無効になります。
この絶対的記載事項の中の項目の一つが事業目的です。
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事業目的が必要な2つの理由
事業目的を定款に記載しなくてはならない理由は以下のとおりです。
1.何をしている会社か明らかにするため
定款に事業目的を記載することは、その会社がどのような事業を行っているのか公にすることを意味しています。
定款を閲覧できるのは会社関係者に限られていますが、関係者以外でも事業目的を確認することは可能です。
定款に記載されている内容は、登記事項証明書にも記載されているため、手続きさえ行えば誰でも事業目的を見ることができます。
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新規取引を検討している会社が、取引先の信用度をはかる目的で登記事項証明書をチェックするケースも多いようです。
新規に設立した会社は実績もなく、どのような事業を行っているのか実態が分かりません。定款に事業目的を記載することで事業内容が明らかになります。
2.許認可申請に必要であるため
事業目的に記載する業務の中には、行政機関の許認可や届出が必要なこともあります。
一定の要件を満たしていれば許認可を受けることができますが、そのためには許認可申請を行い、行政機関からの厳しいチェックを乗り越えなくてはなりません。許認可申請では、定款に記載されている事業目的に対して、規定どおり記載しているかどうかもチェックが入ります。
許認可の必要な事業を行う場合、事業目的を定款に定めていないと許認可を取得できず会社の登記も行えないため注意が必要です。
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事業目的に必要な3つの要件
事業目的の内容は、自由に記載できるわけではありません。どのような事業を行っているか誰が見てもすぐに分かるよう、記載するための要件が設けられています。
それが「適法性」「営利性」「明確性」という3つの要件であり、この要件を事業目的の適格性といいます。
事業目的の適格性の適否は管轄法務局の登記官が判断するため、事前に法務局で確認することをおすすめします。地域によっては若干の表現差があるため、どのように記載すれば良いかアドバイスを受けられます。
事業目的の適格性の判断基準は、それぞれ以下のとおりです。
1.適法性
違法行為にあたる内容の業務であれば、当然事業目的として認められません。
たとえば窃盗や強盗、殺人の請負や麻薬販売などは法律違反となる行為であるため、定款認証の時点で却下されます。犯罪行為だけでなく、愛人紹介事業など道徳的に認められない公序良俗違反にあたる場合も同様です。
また、資格を有していない一般の会社が、士業など特定の資格が必要な業務を事業目的とすると違反行為にあたります。
たとえば、税務書類の作成などは税理士のみが行える業務ですが、一般の会社が事業目的に設定した場合は税理士法違反となります。
2.営利性
株式会社は営利法人であるため、事業目的には利潤を追求する内容を記載します。
ボランティア活動や寄付活動といった営利性のない業務内容を記載しても、事業目的にはあたりません。
非営利活動のみが目的であれば、それはNPO法人や社団法人に該当するため、設立する法人の形態が異なります。非営利活動を行うこと自体は問題ありませんが、利益をあげる可能性が低いことから事業目的としては記載できません。
3.明確性
事業目的は、誰が見ても何をしている会社なのかすぐに分かるよう明確に記載しなくてはなりません。
専門用語や業界用語、一般の人が理解しづらい表現や文言は明確性がないと判断され、登記できないことがあります。明確性のある言葉かどうかを判断するには、「現代用語の基礎知識」や「イミダス」などで確認してみると良いでしょう。
一般の人に理解しづらい言葉は時代によって変化するため、現在は明確性に欠ける言葉であっても、時代の流れとともに一般的な用語として普及することもあります。
たとえば、今では当たり前になっている「インターネット」という言葉も、十数年前はごく一部で使用されていました。そのため、一般の人には何のことか分かりづらく明確性に欠けたものであると判断されていましたが、現在では誰でも分かる用語となっています。
事業目的を記載する際の4つのポイント
事業目的を記載する重要性は十分理解していただけたかと思います。
しかし、実際に事業目的を作成する際、どのようなポイントに注意しながら記載していけばいいのかわからない方も多いでしょう。
そうした方は、以下の4つのポイントを参考にしてみてください。
1.同業他社を参考にする
既に登記済みの会社であれば、登記要件を間違いなく満たしています。
事業目的は登記事項証明書に記載されているため、業務が類似している会社の事業目的を参考にしましょう。謄本を発行してもらうには手数料がかかりますが、確実に認められる事業目的を作成する参考になります。
また、類似他社がホームページなどで定款を公開している場合もあります。
2.許認可が必要な事業は記載方法を事前に確認する
許認可を受けなくてはならない事業を行う場合、事業目的への記載方法も気を付けなくてはなりません。
許可や届出が必要となる事業のことを許認可事業と呼びますが、これらの事業については会社設立前に許可や届出をしておく必要があります。
許認可を受ける場合、定款の事業目的に不備があると許認可が下りないこともありますので、定款の認証を受ける前に許認可が必要な監督官庁に問い合わせ、事業目的の記載方法について確認するようにしましょう。
会社設立後に許認可申請をして認められなかった場合、定款の事業目的を変更する必要が出てきてしまいます。一人社長であれば、定款変更にそれほど時間を要することはないでしょうが、株主が複数名の場合は、株主総会の特別決議が必要となり変更に手間と時間が割かれることとなります。
また、登記変更のための費用が3万円かかります。
3.事業目的数を増やし過ぎない
許認可申請や助成金申請、融資審査、新規取引など、さまざまな場面で事業目的が確認されます。
登記事項証明書で事業目的が確認され、何をしている会社なのかがチェックされますが、あまりにも多くの事業目的が並んでいると不信感を持たれる原因になりかねません。
ひと昔前であれば、事業目的はなるべく多く入れたほうが良いとされていましたが、近年は事業目的数が少ないほうが専業と判断され信頼性が高まるとされています。
大手企業だと事業目的を50個前後記載していることもありますが、中小企業の場合は10個前後に抑えておいたほうが良いでしょう。
事業目的の最後に記載すべき魔法の言葉
事業目的はシンプルなほうが分かりやすいですが、あまり限定してしまうと後でトラブルを引き起こす可能性もあります。トラブル回避のため、事業目的を記載した最後に以下の一文を入れておきましょう。
「前各号に付帯関連する一切の事業」
この一文を入れることで、登記した事業目的に関連する事業であれば、どのような事業でも始めることができます。新たに事業目的を追加する必要もなくなるため、必ず入れるようにしましょう。
まとめ
事業目的を記載するポイントについてまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。
事業目的は公にされる項目であるため、過不足のないよう明記することが大切です。
事業目的の記載例などをお手本にするのも良いですが、確実なものに仕上げたい場合は相談無料かつ会社手続代行手数料も0円の私たちハートランド税理士法人にぜひご連絡ください。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。