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創業期においても、お金の入出金がある限り、銀行口座は必要不可欠なものです。
では、どの銀行に銀行口座を作るべきなのでしょうか。
今回は、創業期や起業の際の銀行選びについて、いったい何を基準に選ぶべきなのか、ご紹介していきます。
1.創業支援から見る銀行選び
創業期、あるいは起業したばかりのベンチャー企業にとって、銀行選びは、思った以上に重要なものです。
銀行と一言でいっても、大きく分けて4つに分類されます。
- 都市銀行
- 地方銀行
- 信用金庫
- 信用組合
企業にとっては、融資やビジネス支援が受けられるかどうかは非常に重要です。
創業支援を受けられる可能性は、銀行によって変わるのです。
またこれらの金融機関は、それぞれ役割が決まっており特色もあるため、口座を複数開設し、それぞれの特徴を活かしていくという手もあります。
創業期や起業してすぐの企業は、信用金庫や信用組合のサービスをうまく活用できるように、メガバンクや地方銀行に一つ、信用金庫に一つといった形で口座を開設することが多いようです。
都市銀行
都市銀行とは、多くの人が大きな銀行として認識している金融機関です。
具体的には、三菱東京UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行・りそな銀行の4つです。
都市部を中心に全国展開している金融機関で「メガバンク」ともいわれています。
地方銀行
地方銀行とは、各都道府県に本店を構えて、その地域に根差したサービスを展開している金融機関です。
地域経済に大きな影響力を持っているため、地場で長くビジネスを行っていこうと考えているのならば、無視できない存在です。
信用金庫
信用金庫とは、会員の出資による地域金融機関といわれ、営業地域はその地域に限定して行われています。
その地域のための金融機関であり、その地域に対する知見の深い金融機関です。
信用組合
信用組合は、組合員の出資によって賄われている金融機関であり、相互扶助を目的とする非営利の団体です。
貯金の受け入れや貸し付けが組合員に限られていて、組合員になれれば、様々なサービスを気軽に受けられるようになっています。
2.新米起業家の銀行選びの基準・ポイント
銀行選びにおいて、融資が受けやすいかどうか、ビジネス支援が充実しているかどうかは非常に重要なポイントです。
重視される点が違う
一般的に、都市銀行や地方銀行は『株式会社』であり、株主の利益を最大限に追及するため、利益重視の経営が基本です。
利益重視の経営ということは、当然、お金や収益性を重視されます。
ベンチャー企業のような成長性や可能性を評価するという話になると、途端に話が通じにくくなってくるのが都市銀行や地方銀行の特徴です。
一方で、信用金庫や信用組合は、利用者である会員や組合員の利益を追求していきます。
そのため、社会的信用が少ない起業して間もない新興企業でも、熱心に話を聞いてくれる傾向にあります。
財務状況だけでなく、社長の人柄や成長性、あるいはその事業の必要性などを温かく見守ってくれるのが信用金庫や信用組合の特徴です。
また、起業時であれば、そもそも口座が作りやすいかどうかという点も注意が必要でしょう。
審査の難易度が違う
都市銀行や地方銀行において法人口座を作る際には、審査が非常に厳しいという点を忘れてはなりません。
一方で、信用金庫の場合は、審査がかなり緩く、法人化したばかりでも比較的口座が作りやすくなっています。
審査機関は、都市銀行や地方銀行では2週間前後、信用金庫では1週間程度です。
ただし、地方銀行の中には、横浜銀行など1週間前後で審査が終わるといった素早い対応をしてくれるところあります。
結果として、都市銀行や地方銀行は、起業時の融資などが非常に難しい可能性が高いです。
金利が違う
都市銀行、地方銀行の金利は非常に低い傾向にあります。
一方で、信用金庫、信用組合の金利は高めに設定されています。
しかし、起業時の融資などを考えると、信用金庫、信用組合は非常にサポートが厚いです。
このあたりの性格の違いをしっかりと理解して、取引先金融機関を決めていくことをお勧めします。
金融機関選びのポイントは3つ
事業を進めていく際に、金融機関と付き合っていく上でのポイントは、大きく分けて
- 融資の受けやすさ
- 社会的信用性
- 起業支援に対する充実度
です。
都市銀行の場合は、融資が難しいですが社会的信用性は高まります。
信用金庫や信用組合の場合は、この逆になります。
今の経営環境を考えて、何が一番必要なのか意識していきましょう。
最近では、インターネットバンキングも広まりつつあります。
手数料が安い、24時間対応してくれている、口座維持手数料が無料といった魅力も高いため、利用しない手は無いしょう。
ただし、社会的信用性に関しては低い傾向にあるため、こちらも注意が必要です。
3.事業ステージで金融機関を変えるのが◎
実は、最近ではメガバンクでもベンチャー支援を掲げて融資枠を広げている金融機関が出てきています。
みずほ銀行では、2016年に200億円程度だったベンチャー・創業支援融資枠を、2018年には500億円にまで広げています。
また地方銀行の中にも、中京銀行や常陽銀行などで、積極的な創業支援策を展開しているところも出てきているのです。
しかし、創業支援と一言でいっても、その質は大きく変わってきます。
つまり、自分の事業のステージによって金融機関を変えるべきなのです。
一般的な基準で考えるとやはり年商ベースで考えるべきでしょう。
- 都市銀行・・・年商10億円超
- 地方銀行・・・年商5億円前後
- 信用金庫・信用組合・・・年商1億円以下程度
ベンチャーや創業、起業においても、コツコツ着実に進んでいくという考え方は非常に重要です。
確かに、都市銀行と取引をしているというのは、社会的信用性を考えると非常に大きいものです。
もしかしたら、他の取引先とのやり取りにすら影響を与えかねません。
しかし、いきなり都市銀行を主要な取引銀行としてしまうと、融資サポートを受けられず、資金調達に大きな問題を抱えがちになります。
自分の事業のステージに合わせて、少しずつ付き合う金融機関を変えていくことで、効率的に事業を成長させることができるでしょう。
また、信用金庫や信用組合は、社長の人となりを見ながら付き合ってくれる傾向にあります。
そのため、コツコツ少しずつ事業を成長させているという信用が得られると、大きなサポートを提案してくれることがあるのです。
事業自体の採算性を度外視しての、こうした努力や過程を評価してくれる存在というのは、お金という面で大きな苦労をしていくベンチャー企業の社長としては非常にありがたく心強い存在となるのは間違いありません。
ぜひ、創業時には、信用金庫や信用組合とのつきあいを大事にしてみてください。
4.まとめ
起業間もない法人にとって、都市銀行との付き合いは、社会的信用性という意味で非常に大きな価値を持ちます。
しかし、いきなり都市銀行とのやり取りのみで進めていくことは、リスクを伴います。
確かに、起業というスピードの激しい環境にいると、コツコツではなくジャンプアップを目指したくなります。
しかし、そうした環境でどこまでコツコツと着実に進められるかが、その後の成長性に大きな影響を与えるのです。
ぜひ、創業時には、心強い存在となる信用金庫や信用組合にも目を向けてみてください。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。