会社の登記簿謄本(登記事項証明書)とは?種類や必要となる8つの場面、取得方法を解説

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会社の設立登記が完了すると、登記簿謄本(登記事項証明書)が作成されます。

登記簿謄本にはその会社に関する情報や実態が記載されており、広く一般に公開されていることから手続きを行えば誰でも閲覧や取得が可能です。

では、会社を運営する中で、この登記簿謄本はどのような場面で求められるのでしょうか。

この記事では、

  • 登記簿謄本の概要と種類
  • 登記簿謄本が必要となる8つの場面
  • 登記簿謄本の取得方法

などについて解説していきます。

会社の登記簿謄本(登記事項証明書)とは

登記簿謄本とは、会社に関する重要事項が記載された書類のことを指します。具体的には、法務局が保管している会社の登記簿をコピーして認証(※1)した書面のことです。

(※1) 認証とは、文書の作成が正当な手続きでなされことを公の機関が証明すること。この場合では、会社の登記簿を正当な手続きでコピーしたことを法務局が証明する行為を指します。

現在、登記簿謄本は「登記事項証明書」という呼び名に変わっています。これは、法務局において登記情報を紙ではなく電子化されたデータで保管するようになったからです。そのため、厳密に言うと「登記簿謄本」という言葉は、電子化されていない登記簿(閉鎖された登記簿など)のことを指します。

しかし、今だに登記事項証明書のことを登記簿謄本と認識している方も多いことから、この記事では便宜上「登記事項証明書(電子化された登記簿データ)」のことを「登記簿謄本」と記載します

なお、登記簿謄本は「法人登記簿謄本」と呼ばれることもありますが、意味はまったく同じです。

登記簿謄本は4種類ある

登記簿謄本には以下の4つの種類があり、会社の現在の状態や規模、確認したい登記簿の内容によりそれぞれ活用法が異なります。

  • 現在事項証明書
  • 履歴事項全部証明書
  • 閉鎖事項全部証明書
  • 代表者事項証明書

そのため、登記簿謄本を取得する際は、どの種類の登記簿謄本を取得するのかを選択する必要があります。

ここからは、それぞれの登記簿謄本について解説します。

現在事項証明書

会社の登記簿に記載されている内容の事項のうち、現在効力のあるもののみが記載されている証明書です。

具体的には、以下の項目を記載した書面に認証文(=登記官の名前で発行した証明文を付けること)を付したものとなります。

【具体的な内容】

  • 現に効力を有する登記事項(会社の商号や所在地、設立年月日や目的、役員に関する事項など)
  • 本店の登記の変更にかかる事項で現に効力を有するものの直前のもの

履歴事項全部証明書

会社の登記簿に記載されている事項の履歴が確認できる証明書です。

現在効力のある事項と、過去の変更や抹消された事項が合わせ記載されています。

具体的には、登記簿謄本の交付請求があった日から3年前の日が属する年の、1月1日から請求日までの間に変更・抹消された事項を記載した書面に認証文を付したものとなります。

一般的に会社の登記簿謄本と呼ばれている書類は、この履歴事項全部証明書を指すケースがほとんどです。

閉鎖事項証明書

履歴事項全部証明書に含まれない、すでに閉鎖された登記記録の証明書です。

すでに精算が完了した会社や、合併により解散した会社の閉鎖された登記記録が確認できます。

代表者事項証明書

会社の代表者の代表権についての証明書のことです。

会社の代表者の代表権に関する事項で、現に効力を有する事項を記載した書面に認証文を付したものです。

補足:「全部証明書」と「一部証明書」

現在事項証明書と履歴事項全部証明書、閉鎖事項証明書の3点には「全部証明書」「一部証明書」があり、請求の際にいずれの証明書を希望するのか選択可能です。

全部証明書は登記簿に記載されているすべての事項が確認できるのに際し、一部証明書は記載を希望した特定の箇所の履歴のみが確認できます。

例えば閉鎖事項証明書の場合、閉鎖された内容をすべて記載したものは「閉鎖事項全部証明書」、閉鎖された内容を一部記載したものは「閉鎖事項一部証明書」と呼びます。

登記簿謄本の内容とは

登記簿謄本に記載されている内容は、先ほど紹介した登記簿の種類によってそれぞれ異なります。

しかし、一般的に会社の登記簿謄本を取得する際に手にする書面は、履歴事項全部証明書です。

履歴事項全部証明書は、現在の事項だけでなく過去3年間の登記の変遷も記載されており、ほかの登記簿謄本と比べて最も情報量が多い証明書です。

履歴事項全部証明書に記載されている内容は、以下の通りです。

  • 法人の正式名称
  • 法人の本店所在地
  • 公告を行う方法
  • 法人設立の年月日
  • 法人設立の目的
  • 発行可能株式数
  • 発行済株式の総数ならびに種類および数
  • 資本金の金額
  • 代表者や役員に関する事項

登記簿謄本が必要となる8つの場面

会社が登記簿謄本を必要とする場面はいくつかあります。

手続きを進める際や外部機関に提出する際など、登記簿謄本が必要になる場面はほとんど決まっています。

ここでは、登記簿謄本が必要になる5つの場面を具体的に紹介します。

1.法人設立届出書の提出

法人を設立する際には、税務署に法人設立届出書を提出する必要があります。これは、法人税を納付するため、法人の基本的な事項について伝える必要があるからです。

この法人設立届出書を提出する際には、添付書類として登記簿謄本の写しを用意する必要があります。

登記簿謄本には、記載の資本金や代表者の内容など、法人の存在を証明する上で重要な内容が記載されているため、法人を設立する際の公的な証明書類として果たす役割は大きいといえるでしょう。

この場合、登記事項全部証明書もしくは現在事項証明書が必要です。

2.労災・雇用・社会保険の手続き

労災・雇用・社会保険の手続きをする際にも必要です。

労災や雇用保険など、労働保険に関する手続きを厚生労働省に届出する際には、登記簿謄本の写しが必要になります。また、社会保険は日本年金機構に届出をする必要があり、この場合にも登記簿謄本の写しが必要です。

いずれの場合にも、全部事項証明書もしくは現在事項証明書を用意しておく必要があります。

3.法人口座開設

法人設立時、新たに金融機関で法人口座を開設する際にも必要です。

近年は、振り込め詐欺事件などが多く発生しているため、法人の存在を公的に証明する必要性が高くなっています。そのこともあって、金融機関での口座開設には登記簿謄本の写しの提出が必要となります。

4.決算申告

法人の確定申告の手続きを行う際に、税理士から取得を求められる場合があります。

発行可能株式数や資本金などを確認するためです。

5.登記内容の変更

役員の変更や発行可能株式数の変更など、登記の内容を変更する際に登記簿謄本が必要とされます。

変更する前に内容を確認するために取得します。

6.融資申請

銀行などの金融機関から会社が融資を受ける場合、登記簿謄本の提出が求められます。

7.補助金申請

国の補助金や助成金を申請する際にも、会社の登記簿謄本が求められます。

本当に会社として実態があるのか確認するために求められます。

8.取引開始

特定の会社と取引を開始するにあたり、登記簿謄本を確認される場合があります。

会社の名前を聞いたことがない場合や信頼性に疑いがある場合、その会社の実態を確認するために必要とされます。

登記簿謄本の取得方法は2パターン

登記簿謄本は、指定された手続きを踏み、手数料さえ納付すれば誰でも取得・閲覧することができます。

登記簿謄本の取得方法は、

  • 登記所(もしくは最寄りの法務局)の窓口で申請・取得する方法
  • オンライン上で申請する方法

の2つがあります。

窓口申請の場合、以前は登記所での窓口申請がメインでしたが、現状は最寄の法務局などでも取得することができるようになっています。

メリットデメリット
窓口申請
  • パソコンやインターネットがなくても申請できる
  • 手数料が高い
オンライン申請
  • 直接窓口へ行く必要がない
  • 受付時間が長い
  • 手数料が安い
  • パソコンやインターネットが必要
  • システム障害のリスク

ここでは、それぞれの取得方法について具体的に解説します。

1.登記所の窓口で申請・取得する方法

法務局(登記所)の窓口で会社の登記簿謄本を取得する場合は、会社の本社を管轄する登記所の窓口に申請する必要があります。

あるいは、法人登記情報交換システムを活用することにより、最寄りの登記所などほかの登記所で登記簿謄本を取得することも可能です。

申請後の受け取り方法として、窓口に取りに行く方法または郵送してもらう方法を選択できます。

窓口取得のメリット

  • パソコンやインターネットがなくても申請できる

窓口取得のデメリット

  • 手数料が高い
登記簿謄本の取得方法手数料
窓口で取得600円
オンラインで取得郵送受取: 500円
登記所の窓口受取: 480円

2.オンライン上で取得する方法

自宅やオフィスのパソコンから、オンラインで「登記・供託オンライン申請システム」にアクセスし、登記簿謄本を交付請求することが可能です。

インターネットを経由して申請した登記簿謄本は、最寄りの登記所、法務省管轄の証明サービスセンター、郵送で受け取りが可能です。

オンライン取得のメリット

  • 直接窓口に行く必要がない
  • 受付時間が長い
  • 手数料が安い

パソコンとインターネット環境があれば、わざわざ窓口にいかなくても、自宅やオフィスにいながら登記簿謄本を交付請求できます。

さらに、窓口での受付時間は平日8:30〜17:15までであるのに対し、オンラインの場合は平日8:30〜21:00です。

忙しく時間が取れない方は、オンラインで登記簿謄本を取得することをおすすめします。

オンライン取得のデメリット

  • パソコンやインターネット環境を用意する必要がある
  • システム障害が発生した場合は手続きが滞る可能性がある

補足:英語の登記簿謄本が必要な場合

近年は、英語の登記簿謄本が必要になる場合もあります。しかし、法務局では英語の登記簿謄本の取得はできません。

したがって、まずは登記簿謄本を取得し自分で英訳する必要があります。

ただし、英訳すると私文書として扱われてしまうため、公証役場にて認証を受け、外務省の公印確認を取得しなければなりません。その後、駐日大使館で領事認証を取得すると、英語の公的な法人登記簿謄本として扱われます。

このように、通常の場合と比べて、英語の法人登記簿謄本の取得には手間がかかります。余裕をもって取得するようにしましょう。

まとめ

登記簿謄本は、会社の内部事項が記載されている重要な書類で、度々必要となる場面が出てきます。

しかし、取得するためには定められた手続きを踏む必要があり、予想以上に時間がかかる場合があります。

そのため、事前に記載されている内容や取得手続きをきちんと押さえておくことが大切です。

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