会社設立時に提出する印鑑届出書と印鑑の種類について解説します

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個人が不動産の売買などの契約をする際には、実印と印鑑証明書が必要です。

すでに会社を設立したことがある方はご存知かと思いますが、会社でも個人と同じように、契約などで実印や印鑑証明書が必要になる場面がたくさんあります。

そのため、会社でも、個人と同じように実印を届け出る必要があるのです。

この記事では、法人が実印を届け出る際に提出する印鑑届出書や法人で必要になる、

  • 会社実印(代表者印)
  • 会社銀行印
  • 会社認印
  • 角印(社印)

の4種類の印鑑について解説していきます。

1.印鑑届出書とは

印鑑届出書は、会社設立の手続きの中で、登記の際に法務局へ提出する書類のひとつです。

個人の実印と同じように、会社が様々な契約を結ぶ際には会社の実印を押します。その実印を登記所に登録するための申請書が「印鑑届出書」になります。

なお、印鑑届出書の届出人は、印鑑提出者か代理人のどちらかになります。代理人が届出を行う場合、届出書の委任状欄を記入する必要があります。

2.会社で使用する印鑑の種類

まずは、会社で使用する印鑑にはどのようなものがあるのかご紹介します。

個人の場合、契約書などの重要な書類には実印を、銀行に口座を作る場合には銀行印を、その他でハンコが必要な時には認印をというように、それぞれ印鑑を使い分けているかと思います。

会社も同じで、目的によって印鑑を使い分けます。

会社で必要な印鑑には、

  • 会社実印(代表者印)
  • 会社銀行印
  • 会社認印
  • 角印(社印)

があります。

その他、会社設立時には発起人と取締役個人の実印が必要になります。
【関連】会社を設立する時の印鑑証明書について取得方法まとめ

2-1.会社実印(代表者印)

会社実印とは、本店所在地に届出した会社の実印のことを言います。

経営者が会社の代表者として契約を結ぶときなどに使うため、印鑑届出書が必要です。会社の代表者としての役割を果たす印鑑のため「代表者印」とも呼ばれています

会社実印は、外枠に会社名が入ります。

内枠には、株式会社の場合は「代表取締役印」、合同会社の場合は「代表社員之印」や「代表職務執行者印」などと入れます。

2-2.会社銀行印

会社銀行印とは、会社が会社名義の銀行口座を作る時や、銀行口座からの支払い、手形・小切手に押印するために銀行に届け出る会社の印鑑です。

会社実印を銀行印として使用することもできますが、紛失など万が一の事を考え、会社実印と会社銀行印は別のものを使う方が安全です。

会社銀行印には、外枠に会社実印と同じように会社名を、内枠に「銀行之印」と入れるのが一般的です。

2-3.会社認印

会社認印とは、会社として印鑑を押す必要がある場合に、登記印である実印の代わりに使用するものです。

会社認印には、会社実印や会社銀行印と同じように、外枠に会社名が入ります。

内枠には、会社実印と同様に、株式会社の場合は「代表取締役印」と、合同会社の場合は「代表社員之印」や「代表職務執行者印」などと入れます。

2-4.角印(社印)

角印とは、会社実印よりやや大きめの会社名だけを彫った文字通り四角い印鑑です。

角印は代表者印と合わせて使われることが多く、注文書や請求書などの社外文書の他、稟議書などの、社内文書に押印するものです。

会社名だけが刻印された印鑑のため「社印」とも呼ばれています。

2-5.それぞれの印鑑の大きさの違い

会社実印と会社銀行印種にはそれぞれ規定があります会社認印と角印は規定はありませんが、一般的なサイズは存在します。

詳細は以下の通りです。

  • 会社実印:10.0mm以上30.0mm以内の正方形におさまるものと規定されています。
  • 会社銀行印:銀行によって規定が異なりますが、一般的に、会社実印と区別するために、会社実印よりもひと回り小さいサイズで作ります。
  • 会社認印:一般的には、13.5mm/12.0mmが多いです。
  • 角印:一般的には、一辺20.0mmから30.0mmで作成します。

3.印鑑届出書の作成方法

ここでは、会社実印を届け出る際に使用する印鑑届出書が、どのような内容になっているのか、また作成する際のポイントなどについてご説明します。

会社実印の登記手続きは、「印鑑届書」という決められた様式の書類を作成し、提出することで行われます。

実際の印鑑届出書の記載例は、法務局のホームページでも公開されています。

法務局HPより引用

また合同会社で代表社員が法人の場合は、書き方や押印に使用する印鑑に注意が必要です。

3-1.会社実印を押印する

印鑑届出書の左上の大きな欄に、会社の実印として登録する会社実印(代表社印)を押印します。

途切れや滲みがなく鮮明な印影となるように十分気を付けて慎重に押印しましょう。

なお、届け出る会社実印は、すでにご紹介したように、一辺の長さ10mm以上30mm以内の正方形に収まらなければならないという決まりがあります

3-2.会社代表者の事項を記入する

印鑑提出者は、設立する会社およびその代表者に関する事項を、印鑑届出書の右上の欄に記入します。

記入する項目は、

  • 会社の商号・名称
  • 本店・主たる事務所(所在地)
  • 印鑑提出者の資格(代表取締役等)
  • 印鑑提出者の氏名、生年月日
  • 会社法人等番号

です。

会社の商号・名称は、株式会社の場合は(株)などと省略せず、定款に記載したとおりに記入しなければなりません。

本店・主たる事務所は、会社設立の登記申請を行う本店の住所と一言一句違わずに書く必要があります。

印鑑提出者の資格は、取締役を設置する会社の場合は「代表取締役」に、そうでない場合は「取締役」にマルをします。

印鑑提出者の氏名及び生年月日は代表取締役もしくは取締役のものを記入します。

会社法人等番号とは設立した法人・団体に対し日本の国税庁が指定する数字13桁からなる識別番号のことです。
分からない場合には空欄でかまいません。

3-3.届出人の事項を記入する

印鑑届出書を誰が届け出るかによって、印鑑届出書の中央にある届出人欄の記入の仕方が変わります

3-3-1.印鑑提出者が届出する場合

印鑑提出者本人のチェックボックスにチェックマークを入れ、印鑑証明書に記載されているとおりの住所・氏名を記入します。この時、フリガナも記入しましょう。

右の四角い欄には、印鑑提出者本人の実印を押印します。

3-3-2.代理人が届出する場合

司法書士などに手続きを代理してもらう場合には、代理人のチェックボックスにチェックマークを入れ、代理人の住所・氏名を記入します。右の四角い欄には代理人が認印を押印します。

また、印鑑提出者は印鑑届出書の下部にある委任状欄を記入し、代理人は実印を押印します。

3-4.登記申請書に添付する印鑑証明書を援用する場合は?

印鑑証明書を援用する場合は、「市区町村長作成の印鑑証明書は、登記申請書に添付のものを援用する。」という項目にチェックマークを入れます。

本来、印鑑届出書を提出する際には、届出者の印鑑証明書を添付する必要があります。

また、会社を登記申請する際にも印鑑証明書を添付しています。
【関連】会社を設立する時の印鑑証明書について取得方法まとめ

それぞれの場合で印鑑証明書を添付すると、発行するための手数料が余計にかかってしまいます。

そこで、登記申請書に添付した印鑑証明書を、印鑑届出書を提出する際に援用することができるようになっています。

チェックマークを入れておくことで、改めて印鑑届出書用の印鑑証明書を用意する必要がなくなります。

3-5.合同会社で代表社員が法人の場合は?

設立する会社が合同会社で、法人が代表社員(※株式会社の場合は、法人が取締役になることは不可)として印鑑提出者になる場合は、書き方や押印に使用する印鑑が異なるため注意が必要です。

印鑑提出者の氏名の欄には、本店の住所や商号、職務執行者の氏名を記入します。

届出人の欄には、

  • 届出人が印鑑提出者本人で、職務執行者が法人の代表者の場合
    「住所」は法人の住所、「氏名」は役職も添えて記入し、右下には法人の代表者印を押印します。
  • 届出人が印鑑提出者本人で、職務執行者が法人の代表者以外の場合
    「届出人」の「住所」は職務執行者の住所を記入し、「氏名」には役職名を記入しません。右下には職務執行者の認印を押印します。
  • 届出人が代理人の場合
    印鑑提出者が代理人の住所・氏名を記入、代理人が認印を押印します。
    また委任状欄にも、印鑑提出者が代理人の住所・氏名と委任者の住所・氏名を記入します。
    ただし、委任状欄に押印する印鑑は、職務執行者が当該法人の代表者である場合と代表者以外の者である場合とでは異なります。
    当該法人の代表者の者である場合は代表者の実印を、代表者以外の者である場合は、職務執行者の認印を押印します。

4.まとめ

印鑑届出書は、会社にとって重要な会社実印を登録するための手続き書類です。

会社実印と代表者個人の実印をそれぞれ押印したり、会社の商号や住所などを定款と同じように記載したりと、注意すべきことが多くあります。

印鑑届出書を作成・提出する際に、この記事が参考になれば幸いです。

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