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「起業資金」というワードをネット検索すると『起業資金 いくら必要?』『起業資金 ゼロ』『起業資金 調達方法』
といったワードが上位にヒットします。
『起業資金 いくら必要?』⇒元銀行員としてお答えします。正解はありません。
『起業資金 ゼロでもできる?』⇒自己資金なしでの起業は難しい、と元銀行員は考えます。
起業に必要な資金は、事業内容・設備や当面の運転資金など、一概には言えません。
ネットにあふれている「最低必要な起業資金は〇〇万円」という情報は、あくまで参考程度にしかなりません。
また、法人なら会社登記の費用だけでも10万円以上は必要です(司法書士などへの専門家への費用も含む)。
個人事業主でスタートするにしても、起業資金すべてを借入で準備することは難しいですし、おすすめもできません。
今回は、元銀行員が考える理想的な起業資金の調達方法をお教えします。
起業を考えている人はぜひ参考にしてください。
起業資金の調達方法5選
起業資金の調達方法として、下記5つの方法が挙げられます。
- 消費者金融
- カードローン
- ベンチャーキャピタル
- 金融機関の起業融資
- 親からの援助
それぞれのメリット・デメリットをご説明します。
1.消費者金融
消費者金融とは昔でいうところのサラ金や、街金のことです。
「60分で審査完了!」「即日融資!」など、すぐ借りられることをアピールしています。
メリット
上記のとおり、最短即日で融資審査が出て、手続きも簡単なところ。
来店も不要で、ネット完結する形式も多いです。
デメリット
融資の審査は「難しく」「時間がかかる」のが基本です。
ですから、審査基準がこの逆をいく消費者金融は当然金利が高くなります。
また消費者金融からの借入があると、金融機関に融資を申込んだ場合、審査落ちになる場合があります。
利用については、慎重に考えるべきだと思います。
2.カードローン
個人向け・法人向けがそれぞれあります。
こちらも簡単審査・短期で借入可能が売りの商品です。
メリット
すぐに借りることができて、手続きも簡単。
これは消費者金融と同じです。
デメリット
即審査落ちにならないとは思いますが、やはり新規の融資審査の時には影響しますので、こちらも慎重に考えるべきだと思います。
消費者金融と比較すると金利は低いですが、融資と比較すると金利は高くなっています。
3.ベンチャーキャピタル(VC)
ベンチャーキャピタルは、投資専門会社を指し、主に高い成長率を有する未上場企業に対して投資を行い、資金を投下します。
一時よく聞かれた「エンジェル投資家」も同じような仕組みです。
メリット
資本金として投資し、株式を取得する形式なので、一般的な融資のように利息や元金の支払が不要です。
デメリット
一定の割合で株式を渡す(譲渡)ことになるので、経営について関与される場合があります。
ベンチャーキャピタルから見て、投資するかどうか?といった審査基準は厳しく、該当する企業は限定されるので、そもそも一般的ではありません。
ベンチャーキャピタルはごく一部の選ばれた起業だけのもの、といえるでしょう。
4.金融機関の起業融資(民間金融機関・日本政策金融公庫)
銀行や信金には起業専門、または起業時でも対応可能な融資制度があります。
政府系の金融機関である日本政策金融公庫にも、起業専門の融資制度があります。
メリット
起業資金を借りることができたなら、そのあとも継続して融資を受けられる可能性が広がり、メインバンクとしてその銀行と付き合っていけるようになります。
デメリット
審査は厳しく、また時間がかかります(通常1~2ヶ月程度)。
また、審査の結果融資を受けられないことも多く、このあたりがネットなどで「金融機関は起業資金を貸してくれない」といわれている要因です。
民間金融機関に比べると、日本政策金融公庫の審査基準は柔軟なので、税理士など起業をサポートする専門家は、日本政策金融公庫を強く推しています。
5.親からの援助
メリット
援助ですから、利息は発生しません。
「ある時払いの催促なし」で、返済を求める親もいないでしょう。
デメリット
親が高額所得者の場合、援助が所得隠しだと疑われないように注意は必要です。
理想的な起業資金の調達方法はなに?
ここまで起業資金の調達方法を5つ、説明してきました。
この中で、銀行員が考える理想的な起業資金の調達方法は「親からの援助」です。
この結論を聞いて、拍子抜けした人もいるかも知れません。
しかし「親からの援助が一番」!!これが銀行員生活で見つけた真実です。
ですから、もう少しだけお付き合い下さい。
なぜ「親からの援助が一番」なのか?
それには2つの理由があります。
- 親からの援助は返済不要だから
- 「親が金持ち」~これが金融機関にとって重要なキーワード
「親が金持ち」~これが金融機関にとって重要なキーワード
援助された金額が大きければ大きいほど、親が金持ちであることがわかります。「親が金持ち」「実家が金持ち」これは金融機関にとって非常に重要なキーワードです。
現在、金融機関が融資する際は、親などの保証人を不必要に求めてはいけないことになっています。
法人への融資なら保証人は社長だけ。
個人事業主なら、奥さんか息子など最低限の人だけ保証人にします。
保証協会の融資なら、個人でも保証人なしで融資をしているほどです。
しかしながら、借金が返せなくなった時はどうなるでしょう。
債務整理や自己破産をする人もいます。
ですが大部分の人は、せっかく自分で起業した会社を何とかして建て直したいと、資金繰りに奔走します。
その結果、多くは「親に助けてもらう」という結論にたどり着きます。
親が金持ちということは、融資を実行している金融機関にとっては貸し倒れの発生が少なくるという観点から重要であり、融資の審査にも大きな影響を与えます。
親からの資金援助がなければ、起業できないのか
そんなことはありません。諦めないでください。
日本政策金融公庫など、企業向けに支援をしている仕組みはたくさんあります。
また、その地域で、県や市単位で新規事業者向けの助成金の制度を整えているところもあります。
事業計画書を助ける専門家を利用する
創業融資を受けるためには、事業計画書が必要になります。
貸し手の金融機関も、融資金がきちんと返済されるかを確認する必要があります。
銀行員が融資しやすい財務諸表や事業計画書とはどのようなものでしょうか。
それは貸したお金が返ってくるかどうかが、わかるものなのです。
そのため、銀行員や資金調達のサポートを長年してきた専門家(税理士やコンサルタント)は、それに留意した事業計画書の作成方法を知っています。
もちろん、経営者自身が事業計画書を書いて融資依頼に来られる方もいますが、本来なら融資実行が可能な事業でも、こちらに提出された返済計画が稚拙なものだったり、ビジョンが見いだせないようなものだと融資をお断りする場合があります。
特に民間金融機関は一度融資を断ると履歴が残るため、すぐに融資依頼が難しくなります。
そのため、専門家を利用する方が起業資金を得れる可能性が高いと考えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回起業資金について、デメリット・メリットをまとめてみました。
どんなにビジョンやアイディアがあっても、先立つものは資金です。
継続的な経営をするためにも、どのような方法が一番自分の資金調達にあっているか、一度考えてみましょう。
また、資金調達を専門家に依頼する場合には、自分の考えや事業を理解してもらえる専門家を探すようにしましょう。
様々な専門家がいるため、この規模であればどのくらいの資金調達が可能かを算定してもらうのもよいでしょう。
この記事を読んだ方が、少しでも多くの方が起業資金を集め起業出来ることを応援しています。
<執筆者・タッツン>
大学卒業後、大阪信用金庫・城東支店の渉外担当として3年間勤務。主に企業融資、預金預り、投資信託、生保販売等の業務に従事。大阪信用金庫を退職後、ハートランドグループの一員として企業の融資や税務会計のサポートを担当中。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。