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経理DXは企業の経理業務を効率化し、経営全体の透明性や競争力を高める重要な取り組みです。目指すべき業務プロセスを明確にすることや、部門間の協力を得ることは、DX導入を円滑に進めるための鍵となります。また、適切なツール選定やセキュリティ対策を講じることで、デジタル化に伴うリスクを最小限に抑えつつ、持続可能な経理運営を実現できるでしょう。
この記事では、以下について解説します。
- 経理DXとは
- 経理DXが重視される背景
- 経理DXの4つのメリット
- 経理DXの進め方
- 経理DXを成功させる5つのポイント
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経理DXとは
経理DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、経理業務においてデジタル技術を活用することで業務効率化や生産性向上を図る取り組みを指します。これにより、従来の手作業や紙ベースの業務を削減し、企業全体の経理プロセスを最適化します。具体的には、会計ソフトやクラウドサービスを導入することで帳簿の作成や経費精算、請求書管理などの日常業務を自動化することが可能となります。
経理DXは単なる業務のデジタル化にとどまらず、データ分析や予測機能を活用して経営判断を支援する役割も果たします。例えば、リアルタイムで財務状況を把握することで、迅速な意思決定が可能になります。
また、税務調査への対応力を高める点でも経理DXは有効です。デジタルツールを活用することでデータの保存や検索が容易になり、必要な情報を迅速に提出できる環境が整います。経理DXは単なる効率化にとどまらず、企業の信頼性向上やコンプライアンス強化にも寄与する重要な取り組みと言えるでしょう。
経理DXが重視される背景
近年、経理DXが注目されている背景には、業務効率化の必要性と企業を取り巻く環境の変化が大きく影響しています。経理業務は、従来から紙や手作業に依存する部分が多く、時間や人手がかかる上にミスが発生しやすいという課題を抱えていました。また、税制改正や企業会計基準の変更に迅速に対応する必要があるため、正確で効率的な運用が求められる場面が増えています。
さらに、社会全体でデジタル化が進む中で、経理部門においても業務の自動化やリアルタイムなデータ処理が期待されるようになりました。例えば、電子帳簿保存法の施行に伴い、紙の書類をデジタルデータとして保存・管理する仕組みが法的に求められるようになっています。このような法規制への対応には従来の手法では限界があり、デジタルツールを活用する必要性が高まっています。
業務効率化や法規制への対応、経営判断の迅速化という観点から経理DXは企業の持続的な成長に欠かせない重要な取り組みとして重視されています。
経理DXの4つのメリット
経理DXを進めるメリットは、主に以下の4つです。
- 属人性を排除して経理作業が誰でもできるようになる
- 経理にかかるコストを削減できる
- 企業ガバナンスを強化できる
- 柔軟な働き方ができるようになる
それぞれのメリットを紹介するので、経理DXを検討する際の参考にしてください。
属人性を排除して経理作業が誰でもできるようになる
経理業務は特定の担当者の経験や知識に依存しがちな分野です。属人性は担当者の退職や異動に伴う引き継ぎの困難さや、業務停滞のリスクを高めます。しかし、経理DXを導入することで、業務フローがシステム上に標準化され、担当者のスキルに左右される部分を削減できます。
例えば、帳簿作成や経費精算など、これまで経験豊富な担当者が行っていた作業を、初心者でもミスなく処理できる環境が整います。また、操作手順が分かりやすく設計されたツールを利用することで特別なスキルがなくても業務に取り組むことが可能です。このように、属人性を排除することは業務の継続性を確保し、組織全体の効率を高める重要な要素です。
経理にかかるコストを削減できる
経理業務には人件費や紙書類の保管費用、事務用品の購入費用など、さまざまなコストがかかります。経理DXを活用することで、これらのコストを大幅に削減できます。例えば、会計ソフトやクラウドサービスを導入することで手作業による処理時間を短縮し、経理担当者の負担を軽減することが可能です。
さらに、電子帳簿保存法に対応したシステムを利用すれば、紙の書類を電子化することで保管スペースや管理コストも削減できます。また、従来は外部に委託していた業務を自社内で効率的に処理できるようになり、外部委託費の削減にもつながるでしょう。
企業ガバナンスを強化できる
経理DXの導入により経営の透明性と信頼性を向上させ、企業ガバナンスを強化することができます。従来の経理業務では紙の記録や手作業のミスが原因で、情報の抜け漏れや不正が発生するリスクがありました。しかし、デジタルツールを導入することで、データの一元管理や自動記録が可能となり、不正の防止やエラーの削減につながります。
また、リアルタイムで財務状況を把握できるため、経営陣は適切なタイミングで意思決定を行うことができます。さらに、法令遵守の観点からも電子帳簿保存法や税制改正に対応したシステムを活用することで、監査対応や税務調査への備えが容易になるでしょう。
柔軟な働き方ができるようになる
経理DXは働き方の柔軟性を高める点でも大きなメリットをもたらします。従来、経理業務は事務所内での作業が主流であり、特定の場所に縛られるケースが多くありました。しかし、クラウド会計ソフトやオンラインツールの普及により、経理業務をリモート環境で実施できるようになっています。
これにより、在宅勤務やサテライトオフィスでの作業が可能となり、職場環境やライフスタイルの変化に柔軟に対応できます。また、デジタル化によって業務時間が短縮され、余剰の時間を別の業務やスキル向上に充てることもできます。
経理DXの進め方
経理DXは、以下の流れで進んでいきます。
- 経理関連書類をペーパーレス化する
- 業務を自動化・効率化する
- 経営状況を可視化する
経理関連書類をペーパーレス化する
経理業務をデジタル化する第一歩として、書類のペーパーレス化が挙げられます。従来の紙ベースの書類管理は保管スペースの確保や管理コストの増加、さらには紛失リスクなどの課題を抱えています。ペーパーレス化を進めることでこれらの問題を解決し、効率的な業務運営が可能となります。
具体的には、電子帳簿保存法に対応した会計システムを導入し、請求書や領収書をデジタルデータとして管理する方法があります。これにより、紙の書類を保存する手間が省けるだけでなく、必要なデータを迅速に検索・参照できるようになります。
また、クラウドサービスを活用することで、物理的な場所に縛られずに書類へアクセス可能となり、リモートワークにも対応しやすくなるでしょう。
業務を自動化・効率化する
経理DXの核心となるのが、業務の自動化と効率化です。これにより、手作業に依存していたプロセスが削減され、経理担当者の負担軽減や作業ミスの防止につながります。例えば、会計ソフトの導入により、仕訳処理や帳簿作成といった日常的な業務を自動化することが可能です。
さらに、経費精算システムを活用すれば、従業員が申請した経費データをリアルタイムで管理でき、承認プロセスも迅速化されます。給与計算や税務申告の自動化を進めることで、煩雑な作業を減らし、経理担当者はより高度な業務に集中できるようになります。
自動化の導入においては既存の業務フローを見直し、ボトルネックとなっている部分を特定することが重要です。その上で、自社に適したツールやシステムを選定し、段階的に導入を進めることでスムーズな移行が実現するでしょう。
経営状況を可視化する
経理DXを導入する最終的な目的は、経営状況の可視化を実現し、経営判断を支援することにあります。デジタルツールを活用することで、企業の財務データをリアルタイムで一元管理し、経営陣や関係者が必要な情報を迅速に把握できる環境を構築できます。
例えば、売上やコスト、キャッシュフローといったデータを視覚的に表現するダッシュボードを活用することで、現在の経営状況や課題を直感的に把握することが可能になります。また、データ分析ツールを併用することで、過去の傾向や将来の予測を行い、適切な意思決定を支援することができます。
さらに、経営状況の可視化は外部への説明責任を果たすうえでも有効です。投資家や金融機関に対して経営の透明性を示すことができるため、信頼性の向上や資金調達の円滑化につながります。
経理DXを成功させる5つのポイント
最後に、経理DXを成功させる5つのポイントを紹介します。
- 目指す業務プロセスを定義する
- ステークホルダーと連携する
- 属人化を防ぐ工夫をする
- システムのグランドデザインに沿って導入ツールを決める
- セキュリティ対策とガバナンス対応を徹底する
目指す業務プロセスを定義する
経理DXを導入する前に、目指すべき業務プロセスを明確に定義することが重要です。現在の経理業務のフローを洗い出し、どの部分をデジタル化することで効率化が図れるのかを把握する必要があります。この際、業務のどの工程がボトルネックになっているか、どの作業に時間がかかっているかを客観的に分析することが求められます。
例えば、手作業で行われている経費精算や請求書処理をデジタル化することで、大幅な時間短縮とミスの削減が期待できます。また、紙ベースの帳簿管理を電子化し、データの保存や検索が容易になる仕組みを構築することも効果的です。このように、現状の課題を明確化し、目指すべき業務プロセスの姿を具体化することで、経理DXの導入がより現実的で実行可能なものになります。
ステークホルダーと連携する
経理DXの成功には、経理部門だけでなく、他の部門や経営層との連携が不可欠です。DXの導入により経理業務が効率化される一方で、その影響が他部門の業務に及ぶ場合があります。そのため、経理DXの計画段階から各部門の担当者を巻き込み、意見や要望を収集することが重要です。
また、経営層からの支援と理解を得ることも欠かせません。経理DXの実施には一定の予算やリソースが必要であり、その必要性を経営陣に納得してもらうことが成功のカギとなります。さらに、DXによって経理部門がもたらす効果が、全社的な利益につながることを示すことで、全体の協力体制を構築しやすくなります。
属人化を防ぐ工夫をする
経理業務が特定の担当者に依存している場合、その人が退職や異動をすると業務が停滞するリスクがあります。経理DXでは、このような属人化を防ぐための仕組みづくりが重要です。例えば、経理業務の標準化を進めることで、誰が業務を担当しても同じ結果が得られるようになります。
具体的には、マニュアルを整備し、業務手順を明確化することが挙げられます。また、デジタルツールを導入して業務を自動化すれば、特定のスキルや知識がなくても業務を遂行できる環境を構築できます。さらに、ツールの操作方法や業務フローについての研修を実施し、複数の担当者が業務を理解し共有できる状態を作ることが有効です。
システムのグランドデザインに沿って導入ツールを決める
経理DXを進める際には、全体的なシステムのグランドデザインを策定し、それに基づいて適切なツールを選定することが重要です。単一の業務を効率化するだけではなく、経理業務全体の流れを統合的に最適化することを目指します。
まず、現状のシステム環境を把握し、既存のツールやプロセスと新たに導入するツールがどのように連携するかを検討します。その上で、自社の業務に適した機能を持つツールを選ぶことが求められます。例えば、会計ソフトと経費精算システムが連携できる環境を整えることで、データの一貫性を保ちつつ効率的に運用できます。また、将来的な拡張性も考慮し、長期的に利用可能なシステムを選定することが望ましいです。
セキュリティ対策とガバナンス対応を徹底する
経理DXを進める上で、セキュリティ対策とガバナンス対応を徹底することは必須です。デジタル化により業務が効率化される一方で、データの漏洩や不正利用といった新たなリスクが生じる可能性があります。そのため、強固なセキュリティ対策を講じることで、これらのリスクを最小限に抑える必要があります。
具体的には、アクセス制限を設けることで、関係者以外が重要なデータに触れられないようにすることが挙げられます。また、ログ管理を徹底し、不正な操作や異常が発生した際に即座に検知できる体制を整えることも重要です。さらに、ガバナンス対応として、データ保存や処理が法令に準拠していることを確認し、定期的な監査を実施することが求められます。
経理作業を効率化するならハートランド税理士法人へ
経理DXは企業の経理業務を効率化し、経営全体の透明性や競争力を高める重要な取り組みです。経理DXを成功させるには、単なるツールの導入にとどまらず、業務プロセスの再定義やステークホルダーとの連携、属人化の防止、システムの全体設計、セキュリティ対策とガバナンス対応といった多角的な視点が求められます。
特に、目指すべき業務プロセスを明確にすることや、部門間の協力を得ることは、DX導入を円滑に進めるための鍵となります。また、適切なツール選定やセキュリティ対策を講じることで、デジタル化に伴うリスクを最小限に抑えつつ、持続可能な経理運営を実現できます。
今回紹介した内容をもとに計画的に経理DXを進めることで、効率化やコスト削減に加え、企業の信頼性向上や働き方の柔軟性確保といった多くの効果を得ることが可能です。担当者は長期的な視点で取り組みを進め、企業の成長を支える基盤を構築していきましょう。
東京・大阪で経理作業を効率化させたいと考えている方は、一度ハートランド税理士法人へご相談ください。無料で相談に乗らせていただきます。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。