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企業の納税額を把握するための一連の作業が決算。決算月は法人であれば好きな時期に設定できるため、いつにしようか悩まれている経営者の方は多いのではないでしょうか。
この記事では、決算月について以下のことを解説しています。
- 決算月とは
- 法人の決算月を決めるポイント
- 決算月は変更できる
決算月の時期によっては、節税対策に時間をかけられたり、日常業務に支障をきたすことなく遂行できたりします。決算月の決め方を知っておけば経理を少しだけ楽にできる可能性もあるため、ぜひご一読ください。
決算月とは
決算月とは、事業年度の最終月のことを指し、その月までの利益や資産額を決算書にまとめなければいけません。
会社の利益額や資産額を計算する一連の作業を「決算」と呼び、その際に作成される決算書によって、翌年の納税額が決められます。
決算書は以下3つの書類の総称を指します。
- 貸借対照表
- キャッシュフロー計算書
- 損益計算書
作成した決算書に基づいて年度内の事業活動を評価したり、また次年度の計画を立てたりする際に活用するため、非常に重要な書類です。
法人の決算月を決めるポイント
法人の場合、決算月は好きなタイミングで決められます。決算月を決めるポイントは、以下の6つです。
- 自社の繁忙期
- 資金繰り
- 消費税の免税期間
- 会社設立日
- 決算書の印象
- 税理士の繁忙期
順番に見ていきましょう。
自社の繁忙期
自社の繁忙期を避けて決算月を設定するようにしましょう。決算月はやることが多いため、繁忙期に重なってしまうと、従業員の負担が大きくなってしまいます。決算月に行う作業は、以下の通りです。
- 棚卸
- 決算書の作成
- 株主総会の開催
- 顧問税理士とのやり取り
日常業務に加えて上記の作業が上乗せされるため、手が回らずに申告期限に間に合わせられなかった、といったリスクもあるでしょう。
また決算月から2ヶ月以内に税務署への届出および納付が決められているため、その間に税理士とやり取りの上で、決算書の修正などの作業が生じます。そのため決算月から2ヶ月の間も、繁忙期と重ならないようにするのがベストです。
資金繰り
決算月の設定を支出が多い時期を避けたり、逆に利益が多い時期にしたりすれば、資金繰りが容易になります。決算日から2ヶ月以内に納税しないといけないことから、支出が多い時期に重ねてしまうと、資金繰りが困難になる恐れがあります。
企業の支出が多い時期の一例が、賞与支給月です。賞与を設けている企業の場合は、その月に決算月を設定しないようにしましょう。
その一方で企業の利益が多い時期に決算月を設定すれば、税金の支払いにも問題なく対処でき、資金繰りが容易になります。
消費税の免税期間
消費税免税事業者に該当する事業者の場合は、その制度をフル活用できるように、決算月を設定しましょう。
消費税免税事業者とは、以下に該当する事業者のことを指します。
- 前々事業年度の課税売上高が1,000万円以下
- 前事業年度の開始日から6ヶ月間の課税売上高が1,000万円以下
1期目最初の半年間の課税売上高によって、決算月を変えるべきか否か異なるため、各ケースごとに解説します。
1期目最初の半年間の課税売上高が1,000万円未満
1期目最初の半年間の課税売上高が1,000万円未満の場合は、2期目の事業年度までの最大2年間は消費税納税が免除されるため、決算月を変更しないようにしましょう。
事業年度の切り替わりは決算月をまたぐことで変わるため、決算月をずらしてしまうと、消費税免税期間をフル活用できなくなってしまいます。
実際に決算月を変更した場合における消費税免税の期間を、シミュレーションしてみました。
- 3月に会社設立し、同月が決算月として設定。決算月を変更しなかった場合
…2年後の3月に2期目が終了により、最大24ヶ月間の免税期間になる - 3月に会社設立した直後に決算月を9月に設定した場合
…同年9月末をもって1期目終了、翌年9月末で2期目終了に伴い、18ヶ月間しか消費税が免税されない
消費税免税の期間をフル活用するために、決算月はそのままにしておきましょう。
1期目最初の半年間の課税売上高が1,000万円以上
1期目最初の半年間の課税売上が1,000万円を超えそうな場合は、決算月の前倒しがおすすめです。
1期目最初の半年間で1,000万円以上の課税売上があった場合は、2期目から消費税の課税事業者となってしまいます。ただし1期目が7ヶ月以下の場合に限り、免税期間を2期目の末日まで延ばせる制度があるため、それを活用すれば最大19ヶ月間も消費税が免税となります。
1期目最初の半年間の課税売上高が1,000万円を超えるか否かで、決算月を変えるか判断しましょう。
会社設立日
基本的には会社設立日の月を決算月とするといいでしょう。
決算月の変更は1年以内と決められています。そのため無闇に決算月を移動してしまうと、次の決算までの期間が短くなってしまい、従業員の負担が大きくなってしまいます。
決算月の変更は「会社設立日(=決算月)が自社の繁忙期と重なってしまった」など特別な事情がない限りは、そのままにしておくのがおすすめです。
決算書の印象
決算書の印象をよく見せられるように、会社が軌道に乗るタイミングを見計らって決算月を設定する方法もあります。
決算書に借入金や未払い金が多いと、それを見た株主や融資担当者の印象が悪くなってしまい、融資や資金調達に影響が出てしまうリスクが考えられます。
そこで会社が軌道に乗り、借入金や未払い金が少ない状態の決算書が作れるようになれば、第三者が見たとしても好印象を与えられます。
将来的に融資や資金調達を見越している場合は、検討してみるのもいいでしょう。
税理士の繁忙期
経理作業のノウハウや経験に自信がない場合は、税理士の繁忙期をずらして決算月を設定するのもおすすめです。
税理士の繁忙期から決算月をずらすことで、決算書を作成する際に丁寧に対応してもらえます。
税理士の繁忙期は一般的に2月と5月と言われており、理由としてはその2ヶ月前に決算を設定している企業が多いからです。
- 2月:12月末決算の企業や個人事業主が多いため
- 5月:3月末決算の企業が多いため
税理士と密にコミュニケーションを取りながら決算書を作成したい場合は、2月と5月は避けて決算月を設定しましょう。
決算月は変更できる
法人の場合は決算月の変更が可能となっています。とはいえ決算月の変更は、メリット・デメリット両方あります。変更する際の手続きについても解説しているため、ぜひご一読ください。
決算月を変更するメリット
決算月を変更するメリットは、以下の3つです。
- 決算処理がしやすくなる
…主要取引先の決算月に合わせると経理作業が楽になることがある - 年間売上の見通しを立てやすい
…売上の大きな月を期首に持ってくれば、年間の計画を立てやすい - 節税対策に時間をかけられる
…期首の売上が大きければ、経費の使い道など節税対策にじっくり取り組める
決算月を変更すれば、経理作業が楽になったり、節税対策に取り組めたりする可能性があります。
決算月を変更するデメリット
決算月を変更するデメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 1年以内の期間しか変更できない
…通常よりも短い期間で次の決算をしなければいけない - 決算月の変更に手間がかかる
…定款の変更や税務署とのやり取りが必要 - 消費税免税期間が短くなる
…「年間」ではなく「期数」で決められる
上記のデメリットを理解した上で、決算月を変更するようにしましょう。
変更する際の手続き
決算月を変更する際の手続きは、以下の2つです。
- 定款を変更する
- 税務署等へ異動届を提出する
一つずつ解説します。
定款を変更する
決算月は定款に記載されているため、まずはその変更を行う必要があります。
定款の変更方法は、企業の形態によって異なります。
- 株式会社:過半数の株主が出席し、かつそのうち3分の2の賛同を得る
- 合同会社:総社員の同意を得る
定款については以下の記事で解説しているため、こちらもぜひご覧ください。
【関連】合同会社における定款の役割は?記入すべき事項と作成時の注意点を解説
税務署等へ異動届を提出する
定款の変更後、税務署へ「異動事項に関する届け出」を提出します。税務署指定のフォーマットがあるため、それに記入しましょう。
異動事項の内容を税務署が確認することがあるため、変更済みの定款の写しを添付しておくと、スムーズに進められます。
なお「異動事項に関する届け出」はe-Taxに対応しているため、簡単に提出できます。
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決算月を適切に設定すれば、節税対策ができたり、日常業務に支障なく作業を遂行できたりします。「今の決算月では業務に支障が出てしまう」といった場合は、決算月の変更もできるため、ご安心ください。
ただし決算月を変更することで、余計な手間が生じる恐れもあることを理解しておきましょう。
ハートランド税理士法人では会社設立の代行から承っているため、手続きに関することはもちろん、決算月についてもお客様にとって最適な月を提案できます。
会社設立代行は最短即日かつ無料で対応できるため、会社の設立方法が分からない方は、ぜひご相談ください。会社設立後も決算書の作成の対応も引き受けておりますので、そちらもぜひご検討いただけたらと思います。
【関連】税理士に決算のみを依頼した場合の費用の相場、メリット・デメリットは?
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【関連】大阪で会社設立するなら【代行手数料無料】かつ【最短即日設立可能】なハートランド税理士法人へお任せください
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。