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法人を設立する際には、法人の銀行口座に資本金としてお金を払い込まなければなりません。
今回はその際の流れ、通帳や書類などの必要な物などをご紹介をします。
近々「会社設立」をされる方、「資本金の払込み」が必要な方はチェックしてみてください。
会社設立の時の「資本金払込み」方法
まずは、会社設立時の資本金の払込み方法について解説していきます。
ステップ1:発起人名義の銀行口座を用意する
発起人名義の個人口座を準備する必要があります。
個人の口座から法人の口座にお金を移動する作業が必要なため、発起人名義の個人口座を準備しましょう。
こちらは新しく口座を開設する必要はなく、今お持ちの口座で問題ありません。
もしも発起人が複数いる場合は代表者名義の口座になります。
ステップ2:発起人名義で資本金を振り込む
この作業のポイントは誰がいくら振り込んだかを証明することです。
「預入れ」ではなく「振込み」で行いましょう。
発起人が複数いる場合は振り込む金額もあらかじめ決めておくため、明確にする必要があります。
ステップ3:通帳のコピーを用意する
通帳のコピーは振込んだ金額を誰がいつ、どの口座から振り込んだものなのかを紙面で証明するために必要になります。
そのため、
- 通帳の表紙
- 通帳の1ページ目(表紙の裏面)
- 振込金額が記帳されているページ
の3つをコピーしなければなりません。
表紙には名前や銀行名、1ページ目には銀行印、払い込み金額が記帳されているページには金額と日付のそれぞれを証明することになります。
ステップ4:払込み証明書の作成
払込み証明書はその名の通り、資本金が発起人から確かに払い込まれたということを証明するためのものです。
今は昔と違い、下記の項目を埋めるだけになっており、とても簡単です。
捺印も忘れずに行いましょう。
払込みがあった金額の総額 金○○万円
設立時発行株式数 ○○株
平成○年○月○日
(本店) 東京都○○区○○○丁目○番○号○○ビル○階
(商号) ○○株式会社
代表取締役 創業 太郎 印
ステップ5:払込み証明書と通帳のコピーをとじ製本する
上の画像のように払込み証明書と通帳の各ページのコピーを一緒にホッチキスで製本します。
その際に、契印を各ページに押すことを忘れないようにしましょう。
契印はページの差し替えを防止し、改ざんされていないことを証明するもので、複数ページの契約書などにはよく使われるものです。
そもそも資本金とは?
よく会社の紹介を聞く際に耳にする資本金とはなんのことでしょうか?
これから会社をされる方にとってはとても常識的な話になりますので、知らない方は必ず知っておきましょう。
知っている方もおさらいのために再度頭の中に入れておきましょう。
会社の大きさや体力を表す
資本金とは会社の持っているお金。
つまり体力や規模を表します。
資本金が多いほど事業が悪方向に傾いてしまった際に切り崩すことのできる「貯金」となり、新しい事業を始める自己資金ともなります。
また資本金が多いほど大きな会社と認識される一つの基準ともなりえます。
1円からでも起業は可能
以前は、会社を設立するにあたってある程度まとまった金額が必要でしたが、最近では会社法の改正により1円の資本金からでも会社を登記できるようになっています。
つまり少額の資金から会社設立ができるようになりました。
ただし資本金の金額に応じていくつか注意すべきことがあるのでご紹介します。
注意点1:資本金額によっては消費税の納税免除がない
法人も個人と同様に消費税の課税対象となっていますが、通常初年度の法人が払うべき消費税の納税義務は免除されます。
1点注意すべきなのが、初回の資本金が1,000万円を超えてしまうと免除されなくなってしまうので注意が必要です。
参考:基準期間がない法人の納税義務の免除の特例 /国税庁HP
注意点2:登録免許税が資本金額によって違う
最終的に、株式会社等の設立の登記をするために法務局に行きますが、その際に資本金の額の0.7%が登録免許税として必要となります。
例えば資本金が3,000万円の場合は、登録免許税は21万円となります。
また資本金が15万円に満たないときは、一律15万円となっています。
資本金次第で登録免許税が少なからず変動しますので注意しましょう。
注意点3:法人住民税が資本金額によって違う
こちらも個人と同じく、事務所をもつ法人も住民税の課税対象となっています。
法人住民税は登記する地域によって金額や規定が変わってくるのですが、資本金によって課税する金額が異なってきます。
例えば東京都ですと、1,000万円以下の資本金は7万円、1,000万円以上でかつ従業員が50名以上ですと18万円とかなり変わってきます。
少ない金額に見えるかもしれませんが、会社にとっては大きな差になるかもしれませんし、地域によっても差がありますのでしっかりチェックしておきましょう。
資金調達の審査に影響
売り上げが立つまでに時間が掛かる事業モデル、もしくは新たに事業拡大・車内で新規事業を立ち上げる際に資金調達が必要になります。
その場合、多くは金融機関や投資家からの資金調達を行うのですが、先ほども話したように資本金は会社の「体力」。
つまり返済能力があるかどうかは、資本金が判断基準の1要素として考えられるので、あまり低すぎる金額に設定していると審査に響く可能性があります。
ただ、初回の会社設立からどれだけ売上が立ち、どれだけ会社にプール(資本金を貯めてきたのか)してきたかが信用を勝ち取る上では重要になります。
他社との契約にも影響
他社との取引、契約、仕事の受注を行う際にも資本金が関係する場合があります。
もちろん業種や会社規模、会社との関係性にもよりますが、特に大企業や長く経営している会社などは資本金を一つの信用と捉えていることも少なくありません。
多くの資本金があるほど経営自体が安定していると捉えやすいので、業種によってはある程度まとまった金額を資本金にすることをお勧めします。
まとめ
資本金の払込み自体はさほど難しくはありませんので、記入漏れや手順ミスなどを起こさないように、流れを丁寧に行いましょう。
むしろ払込みをする金額の方が重要です。
これからどんなビジネスを誰に向けて行なって行くのかによって資本金の金額は変わってくると思いますので、税理士や専門家の方と相談しながら行うことをお勧めします。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。