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企業が資金調達を行う方法はいくつかありますが、その中でも金融機関からの融資は、最も一般的な資金調達手段として知られています。
しかし、ベンチャー企業や創業間もない企業にとって、金融機関からの融資はなかなかハードルが高いと考えている人も多いのではないでしょうか。
最近では、大きな銀行でも、ベンチャー企業への支援を大きくしたいと考えている金融機関が増えてきました。
ベンチャー企業でも融資を受けることが可能な時代が、もうすぐそこに迫っているのです。
この記事では、ベンチャー企業が融資を受けるための方法と注意点をご紹介していきます。
1.ベンチャー企業が融資を受けることは可能なのか
昨今の不景気や人手不足の影響により、中小企業の倒産が相次いでいます。
金融機関としては、融資先=顧客がどんどんと減っている状況であり、顧客を減らさない方法を考えなければなりません。
こうした状況を鑑み、金融機関からベンチャー企業に対して、積極的に支援を行い、将来の顧客に育てるという機運が高まっています。
ベンチャー支援に積極的な金融機関の例
最も大きな動きを見せているのはみずほ銀行です。
みずほ銀行は、2016年から商談会と称して、大企業とベンチャー企業を招待してビジネスの話をする会を作っています。
2018年には、100社近くの大企業と200社以上のベンチャー企業が集まり、500件を超す商談が行われました。
更に、ベンチャー向けの融資残高も増やしており、2018年にはなんと500億円を超える金額を用意しています。
今後、ベンチャー企業の動きに合わせて、更に融資残高を増やしていくという考えを示しており、ベンチャー企業の経営者や創業者にとって見逃せない環境が出来上がっていると言えるでしょう。
日本におけるベンチャー企業向けの金融機関の支援策は、4000億円程度と言われています。
一方でアメリカや中国では3兆円規模といわれており、まだまだ資金援助が足りない状況と言えます。
みずほ銀行以外の動きも含めて、今後さらにベンチャー向け融資枠は増えていくでしょう。
2.ベンチャー企業が利用可能な融資の例『日本政策金融公庫』
ここでは、日本政策金融公庫の融資制度を見ていきましょう。
日本政策金融公庫には、
- 新創業融資制度
- 中小企業経営力強化資金
の2種類の融資制度があります。
日本政策金融公庫の融資は、融資が決まる前に担当者との面談があり、この際に事業計画などをしっかりとプレゼンする必要があります。
そのため、事業のブラッシュアップが可能です。
新創業融資制度
新創業融資制度は、日本政策金融公庫における代表的な創業者・ベンチャー企業向けの融資制度と言えます。
無担保無保証で、3000万円までの借入枠があり、日本政策金融公庫に直接申し込みが出来るため、資金調達までの期間が非常に短いことで有名です。
中小企業経営力効果資金
一方、中小企業経営力効果資金は、最大2000万円までの枠のある制度です。
新創業融資制度と同じように無担保無保証で融資が出来ますが、認定支援機関を通して申請する必要があります。
つまり、認定支援機関の許可が下りなければ、この制度を利用することは出来ません。
金利については、新創業融資制度よりも中小企業経営力強化資金のほうが低く設定されています。
3.融資を受ける際の注意点
- 資金用途に縛りがある
- 返済スケジュールは明確にしておく
- 返済は計画的に行う
金融機関の融資を受ける際には、資金用途に縛りがあることを覚えておいてください。
先述した『新創業融資制度』でも『中小企業経営力強化資金』でも、「何をどのように利用するのか」「どうしてその資金が必要なのか」という点に関して非常に細かく聞いてくる傾向があります。
そのため、資金の使い道に自由度が少なく、予定外のトラブルへの対応などが難しいことが多いです。
また、返済スケジュールを明確にしておきましょう。
返済スケジュールさえ金額の裏付けがあれば、融資の必要性など詳しく説明しなくても、銀行の担当者が納得してくれることもあります。
ただし、融資という仕組みは、『返済』という避けられない仕組みがあります。
また、『返済』には必ず『利息』が生まれます。
結果的に、うまく利用できないと、月々の返済に負われ、事業での収益を成長するために利用できない可能性も出てくるのです。
4.融資以外の資金調達の方法とは
ベンチャー企業において、融資以外の仕組みを使った資金調達手段は、かなり広がりつつあります。
ベンチャーキャピタルやクラウドファンディングといった出資が注目されています。
また、出資以外でも資金調達する手段はいろいろあるでしょう。
場合によっては、家族や親類縁者から個人的にお金を借りるといった方法もあります。
ぜひ、可能性を探ってみてください。
ベンチャーキャピタル(VC)
出資という仕組みにおいては、やはりベンチャーキャピタルの力を借りるということがあるでしょう。
ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業に対して株式からの配当などを期待してお金を提供する企業の事を言います。
ベンチャーキャピタルによっては、ベンチャー企業のステージに応じて得意・不得意があるため注意が必要です。
クラウドファンディング
また、クラウドファンディングという仕組みもあります。
この仕組みでは、インターネットを通して自分の活動を発信することで集まった支援者から資金を募ります。
クラウドファンディングは、いくつかのポータルサイトで行うことができます。
Campfire・Makuake・Readyforといったサイトが非常に有名で、毎日のように新しいプロジェクトや企業が紹介されています。
5.ベンチャーが融資を受けるなら専門家の力を借りよう
ベンチャー企業が金融機関などから融資を受ける際に必ず注意しなければならないことがあります。
それは書類です。
多くの場合、事業計画書や返済スケジュールの策定だけでなく、財務の整備などをしておく必要があります。
特に財務諸表については、ある程度会計に詳しい人でなければ、漏れや抜けが出てきてしまいます。
この漏れや抜けのせいで融資にたどり着かないといったことはよくあります。
この場合には、公認会計士や税理士などのお金に強い専門家の力を借りるべきでしょう。
また、ベンチャー企業として成長していくときに、必ず必要になってくるのは決算報告です。
この決算報告の際にも、専門家の力は大いに有用です。
将来のことも考えて、融資段階から信頼できる専門家と伝手を持っておくことは、安心して成長できるでしょう。
専門家によっては、非常に格安で書類を整備してくれるというサービスを展開しているところもあります。
ぜひ確認してみてください。
6.まとめ
ベンチャー企業が金融機関から融資を受ける際の方法と注意点について見てきました。
融資の基準は、仕組みによって様々です。
融資の特徴や融資を提供している機関の特徴などを理解して、金融機関が展開するサービスを上手に利用していきましょう。
ベンチャー企業への融資枠は確実に広がっています。
安定した経営や成長に対して、大きな力となってくれるでしょう。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。