相続税の申告期限は死亡を知ってから10ヵ月以内!延長が認められるケースも解説

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相続税の申告には期限があり、過ぎてしまうといくつかペナルティが課せられます。

ただ相続税の申告はいつまでにしないといけないのか、分からない方もいるでしょう。

そこでこの記事では、

  • 相続税の申告期限
  • 相続税の納付期限
  • 相続税の申告を期限内に進めるためのポイント
  • 相続税の申告期限までの流れ
  • 相続税の申告期限延長(延納)が認められるさまざまなケース
  • 相続税の申告に間に合いそうにない場合の対処法
  • 相続税の申告期限を過ぎた場合の対応とペナルティ
  • ペナルティが変わるケース

について解説します。

相続税の申告期限について知りたい場合は、ぜひご一読ください。

相続税の申告期限

相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。

「死亡日」ではなく「死亡したことを知った日」というのがポイントです。

例えば、7月10日に被相続人の死亡を知った場合、申告期限は翌年の5月10日までです。もし10ヵ月目に当たる日が土・日・祝日なら、翌日以降の平日まで申告期限となります。

申告期限を過ぎてしまうと延滞税などのペナルティが課せられるので、期限内に申告手続きを終わらせましょう。

ただ、相続税はさまざまな特例によって延長が認められるケース(詳しくは後述)もあります。

「死亡したことを知った日」とは

相続税の申告期限を計算する上で重要な「死亡したことを知った日」とは、具体的にどのような日を指すのでしょうか。

「死亡したことを知った日」とは、被相続人の死亡事実を認識し、かつ、自己が相続人となった事実を知った日のことをいいます。

単純に死亡日を知ったというだけでは不十分で、自分が相続人になったという事実を知る必要があります。

例えば、被相続人の死亡時に同居していた場合や、病院から連絡を受けた場合など、一般的に死亡日を知った日が「死亡したことを知った日」となります。

また、遠方に住んでいて死亡の連絡が遅れた場合は、実際に死亡の連絡を受けた日が「死亡したことを知った日」です。

ただし、縁が遠く生死がわからない行方不明の人の「死亡したことを知った日」に関しては特殊で、被相続人が長期間行方不明で失踪宣告を受けた場合、失踪宣告の日が「死亡したことを知った日」となる点に注意してください。

また、「死亡したことを知った日」は、客観的に証明しなければならない場合があるため、必要に応じて書類を用意しなければなりません。

例えば、死亡診断書や死亡届の写し、連絡を受けた日時を記録したメモなどが挙げられます。

自分が相続人であることを知らなかったとしても、「死亡したことを知った日」を遅らせる理由にはならないため、3ヶ月の熟慮期間内に相続の承認もしくは放棄を選んで、適切な手続きを行いましょう。

相続税の納付期限

相続税の納付期限は、申告期限と同じで被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。

土・日・祝日を挟んだ場合の期限や、期限が切れるとペナルティが課せられることも同じです。

相続税の手続きを申告期限内にスムーズに進めるための3つのポイント

相続税の申告は、期限内にスムーズに進めることが重要です。

そのためには、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

被相続人の財産状況を洗い出す

相続税の申告には、被相続人の財産状況を正確に把握する必要があります。

預貯金、不動産、有価証券など、すべての財産を洗い出し、評価額を算出しましょう。

財産状況の具体的な洗い出し方として、まずは財産目録の作成が挙げられます。

財産目録には被相続人の預貯金通帳、不動産の権利証、有価証券の取引履歴などの情報を記載していきます。

また、被相続人が取引していた金融機関に問い合わせ、預貯金残高証明書や取引履歴を取得するのも有効です。

不動産を保有している場合は、不動産の登記簿謄本や固定資産評価証明書を取得し、不動産の評価額を算出し、有価証券を保有している場合は有価証券の取引履歴や評価額を証券会社に確認しましょう。

財産の中には住宅ローンや家賃、未払いの税金など負の財産も含まれている可能性がありますが、それらもあわせて記載し、プラスとマイナス両方の財産を把握してください。

相続人を把握する

相続税の申告には、相続人全員の情報を記載する必要があります。

まずは被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍などを取得し、相続人を確定します。

その後戸籍謄本をもとに、相続人の関係性を視覚的に把握できる相続関係説明図を作成するのがおすすめです。

特に相続人の中に、認知した子や養子がいる場合は注意してください。

遺産の分割方法を決める

相続税の申告をする際には遺産分割協議書を添付しなくてはならないため、相続人全員で話し合い、まずは遺産の分割方法を決めましょう。

話し合いで遺産分割についての内容が決まったら、遺産分割協議書にまとめて、相続人全員が署名・押印をしてください。

遺産分割協議書は、後々のトラブルを防ぐために、公正証書で作成することをおすすめします。

相続税の申告期限までの流れ

相続税の申告期限までの一般的な流れは、以下のとおりです。

  1. 相続の開始:被相続人の死亡
  2. 相続人の確定:戸籍謄本などで相続人を確定
  3. 相続財産の調査:預貯金、不動産、有価証券などの財産を調査
  4. 相続財産の評価:相続財産の評価額を算出
  5. 遺産分割協議:相続人全員で遺産の分割方法を協議
  6. 相続税の計算:相続税額を計算
  7. 相続税の申告・納付:税務署に申告書を提出し、相続税を納付

相続財産の総額が多い場合や不動産や株式がある場合には評価額を算出しなければならないため、税理士に相続税申告書の作成を依頼するのがおすすめです。

相続税の申告期限延長(延納)が認められるさまざまなケース

特別な事情がある場合は申告期限の延長が認められます。

申告期限を延長できるのは長くても2ヵ月後までで「相続税延納申請書」を提出といった手続きが必要です。

相続税はどのような場合なら期限延長が認められる主なケースを順番に見ていきましょう。

被相続人の死亡日と相続開始を知った日が異なる場合

兄と弟、前妻と後妻などの関係で被相続人の死亡を知った日が異なる場合は、期限延長が認められます。

相続税の申告・納税義務は、被相続人の死亡を知った日から発生するためです。

仮に被相続人である夫が7月10日に死亡し、妻が同じ日に死亡を認知した場合、申告期限は5月10日までです。

しかし、息子となかなか連絡が取れない等の理由で7月12日に死亡を知った場合、息子の申告期限は5月12日となります。

相続期限は死亡した日から10ヵ月以内ではないため、死亡を知るのが遅ければその分ずれ込みます。

相続人に異動が生じた場合

異動とは、相続人の排除や欠格など相続権を失ってしまう状態のことです。

異動によって相続人の数が途中で変化すると相続税の金額も変わるため、申告期限の延長が認められます。

すでに申告手続きを済ませていた場合、再度10ヵ月の期限で財産分割を行い、申告書を提出し直します。

遺言書が発見された場合

遺言書が見つかった場合、その日から10ヵ月以内が申告期限となります。

例えば、死亡確認から半年経過していても、遺言書の発見日が申告期限の基準です。

遺贈(法定相続人ではない人に遺言を通して財産を遺すこと)だと、自分が相続するかは遺言書を見るまで確認できないためです。

ただ、遺言書で法定相続人が指定された場合は、遺言書ではなく死亡確認日から10ヵ月後が申告期限なので注意しましょう。

遺贈の放棄があった場合

遺贈の放棄を家庭裁判所が認めると別の人が相続人になるため、申告期限を延長できます。

新たに相続人となった人がそのことを認知してから10ヵ月以内に、相続税の申告が必要です。

相続放棄の手続きができるのは、相続するかの熟慮期間として設けられている3ヵ月以内です。

それ以降は相続放棄が認められないので、遺贈の放棄による延長も適用されません。

相続人の失踪宣言があった場合

相続人の生死が7年以上不明だと、家庭裁判所から失踪宣告を出せます。

失踪宣告を受けると、相続人が死亡し相続権を失ったものとして手続きを進められます。

この場合は別の人が相続人となり、失踪宣告が出されてから10ヵ月以内が申告期限です。

相続等によって取得した財産の権利・帰属に対する訴えの判決があった場合

「この財産は自分のものだ」「その相続はおかしい」など、財産の権利・帰属に対する訴えの判決があった場合は、申告期限が延長できます。

裁判所の判決によっては相続内容が変わり、それに伴い納税額も変動するためです。

申告期限は、裁判所の判決が出て相続内容が確定した日から10ヵ月以内が新たに設けられます。

相続人となる胎児がいる場合

相続人となる胎児がいる場合は、出生日から10ヵ月以内が申告期限です。

民法886条の「相続に関する胎児の権利能力」では、相続開始時の胎児は生まれているものと扱うと定められています。

【参考】e-Gov法令検索「民法」

ただ、胎児は相続発生から10ヵ月以内に生まれていることが条件で、もし死産してしまった場合は相続権は発生しません。

10ヵ月以内に生まれそうなら申告するのを待っておくと、手続きが二度手間にならずにすみます。

災害などの特殊な事情がある場合

災害の影響で申告ができないと認められれば、申告期限を延長できます。

災害による期限の延長は、主に3つのパターンがあります。

地域指定による期限延長国税庁長官が指定した地域・期日で申告期限が延長
対象者指定による期限延長国税庁長官が対象者の範囲と期日を指定し、期限が延長される
個別指定による期限延長やむを得ない理由があることを納税地の所轄税務署長に申し出ることで、最大2ヵ月延長

【参考】国税庁「No.8001 災害等による期限の延長」

地域指定による期限延長・対象者指定による期限延長も、延長期間は原則2ヵ月以内です。

また、災害で被害を受けたことで、相続税が減免される可能性があります。

災害の被害を受け日が申告期限前か後かで手続きが変わるため、最寄りの税務署に確認してみましょう。

相続税の申告に間に合いそうにない場合の対処法

「遺産分割が終わらない」「退職金額が期限までに確定しない」などの理由で申告期限に間に合わない場合は、法定相続分にそって概算の金額で申告しましょう。

金額が確定した後に改めて申告と納税を行えば、期限を過ぎたことにはなりません。

ただ、概算の金額で申告すると、期限内の申告が適用条件である「配偶者控除」「小規模宅地等」「特定計画山林」「特定事業用資産」などの特例や控除が受けられません。

この場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付して期限内に提出すれば、申告期限日から3年の期間延長が可能となります。

特例・控除について詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてみてください。

【関連】相続税の特例一覧!活用した場合は0円申告が必要
【関連】相続税に関する控除の種類一覧まとめ!各制度を税理士が解説

相続税の申告期限を過ぎた場合の対応とペナルティ

申告期限を過ぎて申告する場合の対応

申告期限が過ぎても「期限後申告書」を使えば申告手続きが可能です。

しかし、期限後の申告には以下で解説するペナルティが課せられます。

申告が遅れるほどペナルティとして支払う金額が増えるので、できるだけ早く申告しましょう。

申告期限を過ぎて申告した場合のペナルティ

無申告加算課税もしくは重加算税

期限後の申告には、本来の納税額に加えて「無申告可算税」もしくは「重課加算税」が課せられます。

それぞれの概要や税率、ポイントは以下の通りです。

名称概要分類加算税率
無申告加算税申告期限内に申告をしなかった場合に本来納付すべき税額に対して課される税金正当な理由があると認められる場合
または
期限後、1ヶ月以内に申告した場合
0%
期限後、自主的に申告した場合5%
期限後、税務署の指摘により申告した場合(50万円までの部分)15%
期限後、税務署の指摘により申告した場合(50万円を超える部分)20%
重加算税故意に仮装・隠蔽などをした場合に本来納付すべき税額に対して課される税金申告書は提出しているが、その内容に仮装・隠蔽があった場合35%
申告書を提出していなかった場合40%
期限後申告のあった日から5年前までの間に税務署の指摘により無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合50%

延滞税

延滞税は、期限を過ぎてから納付するまでの期間に課せられます。

相続税の延滞税は毎年変動します。

令和3年1月1日以後は、

  • 納期限から2ヶ月以内
    …「年7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合
  • 納期限から2ヶ月経過後
    …「年14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合

となっています。

延滞税特例基準割合とは、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。

引用:国税庁「延滞税の割合」

年ごとの延滞税特例基準割合は以下の表をご参照ください。

期間納付期限の翌日から
2ヵ月経過するまで
納期限の翌日から
2ヵ月を経過した日以降
令和3年1月1日以後年2.5%年8.8%
平成30年1月1日から令和2年12月31日まで年2.6%年8.9%
平成29年1月1日から平成29年12月31日まで年2.7%年9.0%
平成27年1月1日から平成28年12月31日まで年2.8%年9.1%
平成26年1月1日から平成26年12月31日まで年2.9%年9.2%

【参考】国税庁「No.9205 延滞税について」

特例や控除制度が適用外

申告期限を過ぎると、相続税の特例や控除制度が適用されません。

数千万〜億単位になる控除枠が利用できないのは、非常に大きな損失です。そのため、必ず期限までに申告しましょう。

ペナルティが変わるケース

相続税の申告期限を過ぎてしまった場合、状況によってペナルティの金額が変わることがあります。

こちらでは、ペナルティが変わるケースについて解説します。

税務調査通知前までに自主的に申告したケース

税務署から税務調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をした場合は、無申告加算税の割合が軽減されることがあります。

具体的な軽減額は5%で、この背景には税務署が調査を行う手間が省けるため、納税者に一定のインセンティブを与える目的があります。

税務調査を受けてから申告したケース

税務署から税務調査の事前通知を受けた後、または税務調査を受けた後に期限後申告をした場合は、無申告加算税の割合が高くなります。

具体的な増加額は15%または20%で、税務署が調査を行う手間が増えるため、納税者にペナルティを課す目的が背景です。

さらに、意図的に財産を隠したり、偽ったりした場合は、無申告加算税ではなく、より重い重加算税が課される可能性があります。

相続税の申告は間違いなく、適切な方法で行いましょう。

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相続税の申告期限に間に合わないと、余計な税金が課せられる・特例や控除が受けられないなど金銭的な負担が大きくなります。

申告には書類の準備などで時間がかかりますが、できるだけ早く手続きを終えられるよう進めることが望ましいです。

もし大阪で相続税対策・生前贈与などに疑問点があるなら、弊社「ハートランド税理士法人」にご相談ください。

相続税の申告・納税や生前贈与がスムーズに行えるよう、サポートして参ります。

【関連】【税理士が解説】遺産相続手続きのすべて!必要な書類や期限、間接的に派生する手続きなども網羅

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