相続税の特例一覧!注意点や支払えない場合の対処法も解説

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財産を相続すると、金額に応じて相続税が発生します。

財産の額が大きくなればなるほど納める相続税も高額になるため、「できる限り相続税を減らしたい」と思う方も多いのではないでしょうか。

そんな方に活用していただきたいのが、相続税の「特例」という制度です。

この制度を活用すれば、相続税の負担を軽減できる可能性があります。

ただ、特例を使って相続税が0円になった場合は「0円申告」という手続きが必要となるため、注意が必要です。

この記事では、

  • 相続税の計算方法
  • 相続税の特例とは
  • 3つの主な特例
  • 特例を活用した場合は相続税が0円でも申告必要
  • 特例と基礎控除やその他控除は併用可
  • 相続税の特例等を受ける場合の注意点
  • 相続税の非課税枠がある財産
  • 相続税が支払えない場合の対処法

などの項目について解説します。

相続税の特例にはどのような種類があるかをはじめ、相続税が支払えない場合の対処法も理解できるので、ぜひご一読ください。

相続税の計算方法

相続税の特例を解説する前に、まずは相続税の計算方法をご説明しましょう。

相続税は、相続財産の総額から基礎控除額を差し引いた金額に、税率をかけて計算します。

相続財産の総額とは、現金や預貯金、不動産、有価証券などの財産から、借入金や葬式費用などの債務を差し引いた金額です。

基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。

相続税の特例とは

相続税の特例とは、「税金の支払いを減額できる制度のこと」です。

例えば、特例を使うことで相続税が0円となることもあります。

金銭的な負担も少なくするためにも、どういった特例があるのかを把握し、有効活用しましょう。

なお、ほぼすべての方が活用できる相続税の基礎控除については、以下の記事をご参照ください。

【関連】相続税の基礎控除とは?計算方法、注意点もあわせて解説

3つの主な特例

相続税に適用される主な特例は3つあります。

  1. 小規模住宅地等の特例
  2. 配偶者の税額軽減
  3. 寄付

それぞれ条件が違うため、自分が当てはまるものを把握し活用するといいでしょう。順番に解説していきます。

小規模住宅地

小規模住宅地等の特例のひとつに、特定居住用宅地等の特例というものがあります。

基本的に、被相続人の自宅敷地を配偶者か同居親族が相続した場合が適用となり、土地の330㎡の範囲まで、相続税評価額が80%減額されます。

仮に相続した土地が1億円で、法定相続人が1人だと考えてみましょう。

この場合基礎控除額は3,600万円なので、残りの6,400万円が相続税の対象です。

特例を使うと80%減額されるので、相続税対象は2,000万円となります。

特例によって基礎控除額の3,600万円を下回るので、相続税は0円です。

もし特例を使わなければ2,000万円が課税対象のままです。

課税対象外の財産分を引くともう少し減りますが、それでも1,000万円以上はかかります。

小規模住宅地等の特例を使うことで、8,000万円弱への課税額をなくせるのです。

【参考】国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」

配偶者の税額軽減

その名のとおり、被相続人の配偶者が対象の特例(「配偶者控除」と呼ばれることもあります)です。

配偶者が相続した財産が相続した財産額が1億6,000万円・または配偶者の法定相続分までの金額には、相続税が課税されません。

詳細をまとめると、以下のとおりです。

  • 1億6,000万円以下の相続財産:課税なし
  • 1億6,000万円以上の相続財産:超えた金額のみ課税(2億円なら4,000万円)
  • 法定相続分以下:課税なし(1億6,000万円以上でも)

配偶者の税額軽減は、相続税の申告期限までに財産が配偶者と分割されていないと対象になりません。

しかし、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で、申告期限後3年以内に分割したときは特例が適用されます。

【参考】国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」

寄付

相続財産を国や自治体、特定の認定を受けた公益法人に寄付した場合は、特例により相続税が非課税となります。

ただ、特例対象は相続税の対象となる財産だけなので、寄付した金額すべてが非課税にはなりません。

寄付による特例は、相続税対策で行っても損をすることが多いため注意が必要です。

例えば、相続財産3,700万円を寄付する場合としない場合で比較すると、以下のとおりです。

<相続財産を寄付しない時の納税額>
・相続財産3,700万円ー基礎控除3,600万円=課税対象100万円
・相続財産3,700万円ー相続税10万円=3,690万円が手元に残る

<相続税対象を寄付した時の納税額>
・寄付する金額110万円:基礎控除により相続税0円
・相続財産3,700ー相続税対象110万円=3,590万円
・基礎控除3,600万円ー(課税対象100万円+相続税10万円)=3,590万円が手元に残る

つまり相続税対策で寄付した方が、手元に残るお金が少なく損をしてしまうのです。

また、寄付するための手続きも複雑なので、特例を利用するメリットがありません。

相続財産は純粋に寄付したい場合のみにして、相続税対策では行わない方がいいでしょう。

【参考】国税庁「No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき」

特例を活用した場合は相続税が0円でも申告必要

相続税が0円なら、基本的に税務署への申告手続きは不要です。

しかし、前述した特例を使って相続税が0円になったのであれば、申告しないといけません

これを「0円申告」といいます。

0円申告は、相続税の申告書に特例を使ったことを記載し提出するだけなので、特別の手続きはいりません。

同じ相続税0円でも、基礎控除によって0円になった際は申告不要です。あくまで特例を使って減額した場合のみ必要な申告です。

特例と基礎控除やその他控除は併用可

ここまでに解説した3つの特例と控除を組み合わせると、さらに減税できると考えた方もいるでしょう。

控除の名称対象者控除内容
贈与税額控除相続発生から3年以内に受け取った人財産を受け取った際の贈与税を差し引く(贈与を行なった時のものと2重になるため)
配偶者控除(配偶者の税額軽減と同じ。呼称の関係上別名で記載)配偶者財産額が1億6,000万円・配偶者の法定相続分までは、相続税が課税されない
未成年者控除満18歳

法定相続人

6万円×(20−当時の年齢)で求められる金額を差し引く
障害者控除障害のある方

法定相続人

・一般障害者:(85才になるまでの年数)×10万円
・特別障害者:(85才になるまでの年数)×20万円
相次相続控除10年以内に2回相続があった方

法定相続人

相続税の負担が2倍になるので、減額してくれる

どれが自分に当てはまりメリットがあるのか、よく比較し活用しましょう。

相続税の特例等を受ける場合の注意点

相続税の特例等を受ける場合には、以下の点に注意が必要です。

特例が適用される条件を確認しておく

各特例には、適用されるための条件が定められています。

例えば、小規模宅地等の特例では、被相続人と同居していた親族が相続する場合や、被相続人の配偶者が相続する場合などに適用されます。

特例の適用条件を満たしているかどうか、事前に確認しておくことが重要です。

2つ以上の税額控除が受けられる場合がある

相続税では、複数の税額控除を同時に受けられる場合があります。

例えば、配偶者の税額軽減と小規模宅地等の特例を同時に適用することで、相続税額を大幅に減らすことができます。

しかし、特例や控除によっては併用できないものもあるため、事前に確認が必要です。

また、どの特例を受けるにしても、戸籍謄本や遺産分割協議書など、さまざまな書類を準備する必要があります。

書類に不備があると、特例が適用されない可能性があるため、事前に必要な書類を確認し、早めに準備しておきましょう。

また、相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。

申告期限を過ぎてしまうと、延滞税や加算税が課されることがあるため、特例の適用を受けるためには、期限内に申告することが大切です。

相続税の非課税枠がある財産

相続税には、一定の財産について非課税枠が設けられています。

これらの財産を相続した場合は、相続税の課税対象から除外されるため、相続税の特例や控除とあわせて知っておきましょう。

生命保険金

被相続人の死亡によって支払われる生命保険金は、一定の金額まで非課税となります。

非課税限度額は、「500万円×法定相続人の数」で計算します。

死亡退職金

被相続人の死亡によって支払われる死亡退職金も、一定の金額まで非課税となります。

非課税限度額は、生命保険金と同様に、「500万円×法定相続人の数」で計算します。

また、生命保険金や死亡退職金の他にも非課税となるものの代表例として、以下が挙げられます。

  • 墓地・仏壇など日常的に礼拝の用に供されているもの
  • 国や地方公共団体、特定の公益法人などに寄付した財産
  • 社会通念上相当と認められる金額の弔慰金

相続税が支払えない場合の対処法

相続税は高額になる場合も多く、なおかつ一括現金で納めるのが基本であるため、相続財産だけでは支払えないこともあります。

しかし、万が一相続税が支払えなければ「延滞税」が課され、本来支払わなければならない金額よりも利息分として高い金額を支払わなくてはならなくなってしまいます。

また、期限内に申告を行わなかった場合にも「無申告加算税」が課されてしまいますので、忘れずに申告するとともに納税しましょう。

そして、もし相続税が支払えない場合には、以下の対処法が有効ですので一度検討してみてください。

相続財産を現金化する

相続財産の中に土地・建物などの不動産や株式や小切手などの有価証券などがある場合は、売却して現金化することで相続税の支払いに充てられます。

相続財産を売却して現金化することを「換価分割」と言い、複数人の相続人が存在する場合に誰か1人が代表して相続し、売却後得た金銭を相続人で相続分に沿って分けるという方法です。

つまり、相続人全員が遺産分割協議を行ったうえで、該当する相続財産を誰が代表して相続するかを決めておく必要があります。

また、相続財産が不動産であった場合には、譲渡所得税が課されることがある点にも注意が必要です。

納税資金になる部分だけを先に分割協議する

相続財産が複数ある場合は、納税資金に充てるために、一部の財産を先に分割協議することで、現金化を早めることができます。

株式や小切手などは比較的すぐに現金化できますが、不動産は売却までに時間がかかる・評価額が低い場合があるなどの理由ですぐに現金化するのは難しい場合もあるでしょう。

一部の財産を納税資金に充てたい場合には、現金化しやすい相続財産に着目するとよいです。

相続税の延納を申請する

相続税を現金で一括納付することが難しい場合は、延納を申請することができます。

延納とは相続税を分割して納付する制度で、最大20年にわたって相続税を支払うことが可能です。

基本的には延納した税額を延納する期間で割り、その金額を毎年払うことになります。

ただし、延納の適用を受けるためには以下の条件をクリアしなければなりません。

  • 相続税額が10万円を超えている
  • 現金で納付できない事由が明確である
  • 納税額が100万円を超える場合と延納期間が3年を超える場合は相当の担保を提供する
  • 延納申請期限までに延納申請書を提出する

どれかひとつでも条件がクリアできていない場合には延納がみとめられないため、注意してください。

相続税の物納を申請する

延納によっても相続税を納付することが難しい場合は、物納を申請することができます。

物納とは、相続財産そのもので相続税を納付する制度です。

ただし、こちらも適用となるためには以下の条件をクリアする必要があります。

  • 延納を利用しても現金で納税できない場合
  • 決められた種類の財産かつ申請順位によるものであること
  • 申請期限までに物納申請書を提出する
  • 管理処分不適格財産に該当しないものであること

相続税の支払いが難しい場合には、上記のようにさまざまな対策法をとれば納税できるでしょう。

相続人が複数人いる場合は、相続人間で方向性を定めたのちに対策をとるようにしてください。

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最後にここまでの内容をまとめます。

  • 特例を使うことで相続税を0円にできる
  • 特例には3つの種類がある
  • 特例を使うと「0円申告」が必要
  • 基礎控除やその他の控除との併用はできない

相続税には3つの特例があり、活用することで負担を減らせます。

0円申告が必要ですが、複雑な手続きはありません。特例が適用されなくても基礎控除やその他の控除もあるので、活用するのがおすすめです。

しかし、特例を使う条件や手続きなど、相続税に関して分からないこともあるでしょう。

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