生前贈与のメリット・デメリットは?税理士が計算方法や注意点も解説

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生前贈与を活用すれば、節税になったり贈与相手を自由に選べたりといったメリットがありますが、その一方でデメリットもあります。

生前贈与のデメリットは以下の5つです。

  • 税金や費用が余計に掛かるケースがある
  • 特別受益の持ち戻しにより受贈者の相続分が減る
  • 相続時点から3年以内の贈与は無効になる
  • 遺留分侵害額を請求される
  • 税務署に認めさせるのに手間が掛かる

生前贈与のデメリットを事前に理解しておくことで、余計な税金を課せられたり、親族間のトラブルに巻き込まれたりすることを防ぎましょう

本記事では生前贈与のメリット・デメリットをはじめ、贈与税の計算方法や注意点も詳しく解説します。

生前贈与とは

生前贈与とは、生きているうちに自分の財産を特定の人に無償で与えることです。

相続税対策や、特定の人に財産を渡したい場合に有効な手段ですが、贈与税や特別受益の問題など、注意すべき点もいくつか存在するため、正しい理解が必要です。

贈与税の計算方法

贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与によって得た財産の合計額から、基礎控除額110万円を差し引いた金額に対して課税されます。

税率は、贈与額に応じて10%から55%まで上がります。

贈与税の計算方法は以下の通りです。

(贈与財産の価額-基礎控除額)×税率-控除額=贈与税額

贈与税の税率は、贈与額に応じて変動します。

例えば、贈与額が300万円以下の場合、税率は10%ですが、3,000万円超4,500万円以下の場合、税率は45%になります。

生前贈与のメリット

生前贈与を行うメリットは大きく分けて2つありますが、それぞれについて詳しく解説します。

節税効果がある

生前贈与は、相続税の節税対策として有効な手段です。

相続税は相続財産の総額に応じて課税されますが、生前贈与によって相続財産を減らすことで、相続税の負担を軽減できます。

以下は節税効果を得るための制度です。

暦年贈与

暦年贈与とは、毎年110万円までの贈与であれば贈与税がかからない制度です。

毎年少しずつ贈与することで、将来の相続税を減らすことができます。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子または孫への贈与について、2,500万円までの特別控除が受けられる制度です。

この制度を利用すると、贈与時には贈与税がかかりませんが、相続時に相続税として清算されます。

教育資金

父母や祖父母から30歳未満の子や孫への教育資金の贈与は、1,500万円まで贈与税が非課税になります。

住宅取得資金贈与

父母や祖父母から18歳以上の子や孫への住宅取得資金の贈与は、一定の要件を満たす場合、最大1,000万円まで贈与税が非課税になります。

配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与は、最大2,000万円まで贈与税が非課税になります。

遺産を渡す時期・相手などを任意で決められる

生前贈与は、遺産を渡す時期や相手を自由に決められるというメリットもあります。

相続では、遺産の分割方法が法定相続分によって決まりますが、生前贈与では、自分の意思で財産を渡したい人に、渡したい時期に贈与することができます。

生前贈与のデメリット

生前贈与を行う5つのデメリットをそれぞれ解説します。

税金や費用が余計にかかるケースがある

生前贈与は節税に繋げられる一方で、ケースによっては税金や費用が余計に掛かるかもしれません。

例えば不動産を生前贈与により受け取った場合、受贈者は以下の税金を支払う必要があります。

  • 不動産取得税
  • 登録免許税

不動産のように税金がかかってしまう場合は、「相続時精算課税制度」を活用しましょう。

相続時精算課税制度とは、2,500万円までなら贈与税を納めずに資産を受け取り、贈与者の死後に相続税として清算する制度のことです。

不動産の場合は生前贈与が却って節税にならないケースも多いため、注意が必要です。

特別受益の持ち戻しにより受贈者の相続分が減る

生前贈与を行った後に被相続人が死去した場合、受贈者は「特別受益の持ち戻し」により、相続時に取得できる遺産が減ってしまう可能性があります。

「特別受益」とは、被相続人から生前贈与や遺贈により得た利益のことです。

相続時にそれぞれの法定相続人が平等に分配されるように、特別受益の持ち戻し制度が設けられています。

とはいえ、被相続人からすると何らかの想いがあって生前贈与を行ったケースも多いはずです。

生前のうちに「特別受益の持ち戻しの免除」制度を活用すれば、相続時に生前贈与分の遺産を含めずに分配できます。

相続時点から3年以内の贈与は無効になる

贈与者が死亡してから遡って3年間で行われた贈与は、無効となってしまいます。

これは、贈与者が死去する直前に駆け込みで生前贈与する事態を防ぐために設けられたルールです。

相続から3年以内の生前贈与が行われていた場合は、贈与分に応じた相続税が課せられます。

生前贈与を行う際は前もって計画して進めるのがおすすめです。

遺留分侵害額を請求されることがある

生前贈与で特定の人だけが受贈していた場合には、「遺留分侵害額」を請求されることがあります。

「遺留分」とは法定相続人(兄弟姉妹は除く)が相続時に最低限受け取れる遺産取得分のことです。

本来遺留分としてもらえるはずの相続額が生前贈与によってもらえなかった場合に、「遺留分侵害額」として請求できます。

なお遺留分侵害額には相続開始から1年間の請求期間が設けられています。

特定の人に生前贈与する際は平等に贈与を行うなどして、死後に親族同士で揉めることが無いように気を遣ってあげましょう。

税務署に認めさせるのに手間がかかる

生前贈与は税務署に認めさせるのに手間が掛かってしまいます。

実際に生前贈与と認められるためには控除や特例など、様々な条件を満たす必要があります。

特に年間110万円の非課税枠がある暦年贈与が「定期贈与」と見做されて課税されるケースはかなり多いです。

税務署に生前贈与を認めさせるための対策は以下の4つです。

  • 手渡しではなく銀行振込にする
  • 贈与契約書など書面を用意する
  • 特定の日程・金額の贈与を避ける
  • 普段使いの口座に入金する

手間のかかる方法かもしれませんが、その分以上の節税につながるため、生前贈与の際は取り組んでみてください。

生前贈与の注意点

生前贈与を行う際には、以下の点に注意する必要があります。

当事者に判断能力がなければ生前贈与できない

生前贈与は贈与者と受贈者の双方の合意に基づいて成立する契約です。

そのため、贈与者または受贈者に判断能力がない場合、生前贈与は無効になる可能性があります。

例えば贈与者が認知症になってしまった場合、「意思能力・判断能力が欠如している」とみなされるため契約は無効になります。

ただし、認知症の状態によって無効となるか否かはその時の状況によるため、一概に「無効になる」とも言い切れないのが現状です。

また、生前贈与に関わらずすべての法律行為は意思能力がなければ無効となるため、認知症に限らず成年後見人制度を利用している・泥酔しているなどの状況でも贈与はできません。

受け取る側の意思がなければ生前贈与できない

生前贈与は、受贈者の意思に基づいて行われる必要があるため、贈与者が一方的に贈与することはできません。

つまり、贈与者が「自分の土地を渡したい」と思っていても、受贈者が「いらない」と断った場合は生前贈与が成り立ちません。

ただし、生前贈与は「あげます」「受け取ります」などの口約束だけで成り立ち、契約書類などの作成は不要です。

そのため贈与者が「あげる」と言ったものに対して一度でも了承してしまった場合には、生前贈与が成立する点に注意が必要です。

死亡3~7年前までの贈与は課税対象財産になる

2023年度の税制改正により、2024年1月1日以降の贈与については、相続開始前3年以内の贈与が相続財産に加算される期間が7年に延長されます。

要するに、生前贈与を行った後7年以内に贈与者が亡くなった場合は、相続税がかかってしまうということです。

ただし、延長された4年間の贈与に関しては、総額100万円までは相続財産に加算されず、相続税の対象にはなりません。

少額の生前贈与であれば法改正による影響を受けませんが、一般的には相続財産が100万円を超えるケースがほとんどでしょう。

生前贈与を考えている場合は、早めに計画を立てて実行することをおすすめします。

特別受益の持ち戻し対策をしておく必要がある

特別受益とは、相続人が被相続人から生前に受けた特別な利益のことで、例えば親が3兄弟のうち1人だけに500万円の生前贈与をした場合などが挙げられます。

生前贈与を行った場合、相続時に特別受益の持ち戻しが行われる可能性があります。

特別受益の持ち戻しとは、相続が発生した際に特別受益を受けた相続人がいる場合、他の相続人との間で不公平が生じないようにする制度です。

特別受益を受けた相続人の相続分を計算する際に、特別受益の額を相続財産に加算して計算することで相続人間の公平性を保てますが、受贈者からすれば相続分の総合計が少なくなってしまいます。

特別受益の持ち戻しを避けたい場合は、遺言書の作成などが効果的でしょう。

大阪で生前贈与をするならハートランド税理士法人へ

大阪で生前贈与について相談したい方は、ぜひ一度ハートランド税理士法人へご相談ください。

  • この資産を生前贈与したいけど他に税金はかからないかな?
  • 贈与契約書の書き方が分からない…
  • 次男に○○万円を生前贈与しようと思うけど、他の兄弟の遺留分を侵害していないかな?

生前贈与を行うにあたって分からないことが多々出てくるでしょう。

あなたの資産を納得のいく形で贈与できるよう、ご提案させていただきます。

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