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「相続が発生したけれど、相続税って一体いくらになるのだろう?」
大切な方を亡くされた悲しみの中、多くの方が直面するのが相続税という現実です。
その計算は複雑に思われがちですが、基本的な手順と「相続税計算表」の概要を理解すれば、ご自身でも概算額を把握することが可能です。
本記事では、以下の5つについて詳しく解説していきます。
- 相続税の計算方法
- 相続税の速算表
- 相続税申告時に適用できる税額控除
- 2割加算制度の概要
- 自分で相続税の計算をする際の注意点
相続税の計算方法はもちろん、相続税計算表の見方や活用例、申告時の注意点、そして知っておくべき2割加算制度についても徹底的に解説します。
本記事を読めば、相続税の全体像を把握したうえで納税額の目安を知るだけでなく、スムーズな申告に向けた準備を始めることができるでしょう。
相続税の計算方法

相続税の計算は、一般的に以下の4つのステップで進められます。
1.相続税の対象となる財産を算出する
2.相続税の総額を算出する
3.相続税総額を按分する
4.税額控除を適用する
各ステップを丁寧に理解することで、ご自身でも相続税額の概算を把握することが可能です。
相続税計算表を効果的に活用するためにも、まずは全体の流れをしっかりと押さえましょう。
1.相続税の対象となる財産を算出する
相続税計算で最初に行うべきことは、相続税の課税対象となる財産を特定し、それらの価額の評価です。
相続税の課税対象となる財産は、亡くなった方(被相続人)が所有していた現金・預貯金・有価証券・土地・建物などのプラスの財産から、借金や未払いの医療費・葬式費用などのマイナスの財産を差し引いた「正味の遺産額」となります。
各財産の評価方法は、その種類によって異なります。
- 現金・預貯金:亡くなった時点の残高がそのまま評価額となります。
- 有価証券:上場株式は亡くなった日の終値、非上場株式は類似業種比準方式や純資産価額方式などを用いて評価します。
- 不動産:土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額に一定の乗率を掛けて評価します。
- 自動車・貴金属・骨董品:中古市場価格などを参考に評価します。
- 生命保険金・死亡退職金:一定の非課税限度額(500万円 × 法定相続人の数)を超える部分が課税対象となります。
また、生前贈与であっても、亡くなる前3年以内に行われた贈与は、相続財産に加算されることに注意が必要です。
これらの財産の評価額を漏れなく算出し、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いたものが、相続税計算の基礎となる遺産総額となります。
2.相続税の総額を算出する
次に、算出した遺産総額から基礎控除額を差し引きます。
相続税の基礎控除額は、「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。
法定相続人とは、民法の規定により相続人となるべき人のことで、配偶者・子・父母・兄弟姉妹などが該当します。
法定相続人の数を正確に把握し、基礎控除額を計算することが重要です。
遺産総額からこの基礎控除額を差し引いた金額が、課税遺産総額となります。
この課税遺産総額に、後述する相続税の速算表に定められた税率を乗じて相続税の総額を計算します。
相続税の税率は、課税遺産総額に応じて段階的に高くなる累進課税制度が採用されています。
3.相続税総額を按分する
相続税の総額が計算できたら、次に各相続人が実際に負担する相続税額を計算します。
相続税の総額は、原則として各相続人が相続した財産の割合(法定相続分または遺産分割協議で定められた割合)に応じて按分されます。
例えば、配偶者と子が相続する場合、法定相続分はそれぞれ2分の1となります。
この割合を相続税の総額に乗じることで、各相続人の按分税額が算出できます。
4.税額控除を適用する
最後に、各相続人の按分税額から、その相続人に適用される税額控除を差し引きます。
相続税申告時にはさまざまな税額控除が用意されているため、該当するものがあれば利用しましょう。
代表的なものとしては、配偶者控除・未成年者控除・障害者控除贈与税額控除・相次相続控除・外国税額控除などがあります。
これらの税額控除を適切に適用することで、各相続人の最終的な納付税額が確定します。
税額控除の適用要件はそれぞれ異なるため、ご自身の状況に合わせて確認することが重要です。
相続税の速算表

相続税の総額を計算する際に不可欠なのが、相続税の速算表です。
課税遺産総額に応じて適用される税率と控除額を示しており、複雑な計算を簡略化し、迅速に相続税額を算出する際に役立ちます。
法定相続分に応じた 取得金額(基礎控除後) | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
上記の相続税計算表を参照すると、課税遺産総額が5,000万円の場合、適用される税率は20%、控除額は200万円です。
したがって、相続税の総額は以下の計算式で求められます。
相続税額 = 課税遺産総額 × 税率 – 控除額 相続税額 = 5,000万円 × 20% – 200万円 = 1,000万円 – 200万円 = 800万円
このように、相続税計算表を用いることで、ご自身の課税遺産総額に基づいて、相続税額の目安を簡単に把握することができます。
相続税申告時に適用できる税額控除一覧

相続税の計算における最終段階では、各相続人の按分割合に応じた税額から、様々な税額控除を差し引くことで、実際に納める税額を調整することができます。
- 贈与税額控除
- 配偶者控除
- 未成年者控除
- 障害者控除
- 相次相続控除
- 外国税額控除
これらの税額控除を適切に活用することで、相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。
それぞれの控除について詳しくみていきましょう。
贈与税額控除
被相続人が生前に贈与を行った財産が相続税の課税対象となった場合、その贈与に対して既に支払った贈与税額を、一定の限度内で相続税額から控除することができます。
これにより、同一の財産に対する二重課税を防ぐことができます。
配偶者控除
被相続人の配偶者が相続した財産額が、以下のいずれか多い金額までであれば、その配偶者の相続税額は全額控除されます。
- 1億6,000万円
- 法定相続分相当額
配偶者の生活保障を目的とした非常に大きな控除であり、多くのケースで相続税額を大幅に減らす効果があります。
未成年者控除
相続人が未成年者(18歳未満)である場合、その未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円の金額が、その相続人の相続税額から控除されます。
障害者控除
相続人が障害者である場合、その障害の程度(一般障害者または特別障害者)と年齢に応じて、一定の金額が相続税額から控除されます。
一般障害者の場合は満85歳になるまでの年数1年につき10万円、特別障害者の場合は満85歳になるまでの年数1年につき20万円が控除されます。
相次相続控除
今回の相続開始前10年以内に、被相続人が相続または遺贈により財産を取得し、その際に相続税が課税されていた場合、一定の金額が今回の相続税額から控除されます。
短期間に連続して相続が発生した場合の税負担を軽減するための措置です。
外国税額控除
相続財産の中に外国にある財産が含まれており、その財産に対して外国で相続税に相当する税金が課税された場合、その外国で課税された税額のうち、一定の金額が日本の相続税額から控除されます。
ご紹介した税額控除は、すべて適用要件がそれぞれ細かく定められています。
ご自身の状況を正確に把握し、適用可能な控除を漏れなく活用することが、相続税の負担を軽減する上で重要と言えるでしょう。
相続税の2割加算制度に注意

相続税の計算において、通常の税額に加えて2割の金額が加算される特別な制度が存在します。
被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫を含む)および配偶者以外の人が相続または遺贈により財産を取得した場合に適用されます。
2割加算の対象になる人・ならない人について詳しく解説します。
2割加算の対象になる人
具体的には、以下の人が相続または遺贈により財産を取得した場合、相続税額が2割加算されます。
- 被相続人の兄弟姉妹
- 被相続人の甥・姪
- 被相続人の配偶者、子(代襲相続人となった孫を含む)、父母以外の親族
- 他人
2割加算の対象にならない人
一方、以下の人は2割加算の対象となりません。
- 被相続人の配偶者
- 被相続人の子(代襲相続人となった孫を含む)
- 被相続人の父母
相続税計算表に基づいて計算された税額にさらに2割が加算されるため、対象となる人が相続する場合は、納税額が大きく増加する可能性があることを十分に認識しておく必要があります。
自分で相続税の計算をする際の注意点

自分で相続税の計算を行うことは可能ですが、税法の解釈や財産の評価には専門的な知識が必要となる場面が多く、誤った計算をしてしまうリスクも伴います。
以下の点に十分注意して、慎重に手続きを進める必要があります。
- 相続税が0円でも申告が必要な場合がある
- 申告内容を間違えるとペナルティーを受ける可能性がある
- 課税遺産総額を正しく計算する
- 期限内に申告する
相続税が0円でも申告が必要な場合がある
相続財産の総額が基礎控除額以下であるなど、計算上相続税額が0円になる場合も多いでしょう。
しかし、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、特定の特例の適用を受けるためには相続税の申告が必要となることがあります。
自己判断で申告をせずにいると、本来適用できるはずの特例が受けられず、結果的に損をしてしまう可能性があります。
申告内容を間違えるとペナルティーを受ける可能性がある
相続税の申告内容に誤りがあった場合、過少申告加算税や延滞税などのペナルティが課せられることがあります。
特に、財産の評価額を誤ったり、適用できる特例や控除を見落としたりするケースが多いため、正確な情報を基に慎重に計算・申告を行う必要があります。
課税遺産総額を正しく計算する
相続税の計算の根幹となる課税遺産総額の計算を誤ると、その後の税額計算もすべて誤った結果になってしまいます。
財産の評価、債務控除、非課税財産の判定などを正確に行うことはもちろん、生前贈与加算の対象となる贈与がないかなども確認する必要があります。
期限内に申告する
相続税の申告期限は、被相続人が死亡した日の翌日から10ヶ月以内です。
この期限を過ぎてしまうと、延滞税が課せられるだけでなく、配偶者の税額軽減や物納など、一部の制度が利用できなくなる可能性があります。
申告をする際は必ず期限を厳守してください。
自分で相続税の計算や申告を行うことに不安を感じる場合は、税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。
専門家は、複雑な税法の規定や最新の情報を熟知しており、正確な計算と適切なアドバイスを提供してくれるため、相続税に関する疑問や不安を解決してくれますよ。
大阪・東京で相続税の計算・申告にお悩みの方はハートランド税理士法人へ

相続税の計算は相続財産の評価から始まり、基礎控除、相続税計算表を用いた税額算出・相続人間の按分・そして税額控除の適用という複数のステップを経て行われます。
相続税計算表は、ご自身の課税遺産総額に基づいて相続税額の目安を把握する上で非常に有効なツールです。
しかし、財産の評価や税法の解釈には専門的な知識が必要となる場面も多く、特に特例の適用や2割加算の有無など、複雑な要素が絡む場合は、税理士に相談するのが安心と言えるでしょう。
ハートランド税理士法人では、親からの相続や相続税に関する相談を承っております。
「相続税の計算・申告方法がわからない」とお悩みの方は、お電話やメール、公式LINEからいつでもお気軽にご相談ください。

監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。