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起業・独立するためには少なからずお金が必要です。
開業資金は、業種によって必要な金額が変わりますし、会社を設立するかしないかでも変わってきます。
みなさんは、独立する前に自分がやろうとしている業種にかかる資金が「どれくらい必要か」「いつまでに必要か」「何に使うのか」を正確に把握していますか?
こちらの記事では、業種別にどれくらいの開業資金が必要かを紹介していきたいと思います。
開業資金は少額化しつつある
日本政策金融公庫「2018年度新規開業実態調査」によると、開業資金(開業費用)の平均が少なくなっていることがわかります。以下引用です。
開業費用の分布をみると、「500万円未満」の割合が37.4%と最も高く、次いで「500万~1,000万円未満」が31.0%を占める(図-13)。「1,000万円以上」の割合は、4年連続で減少している。
○開業費用の平均値は1,062万円と2017年度に比べて81万円減少した。調査開始以来、最も少なくなった。
開業資金が少額化している背景としては、多額の資金を投入し倒産した場合のリスクを回避するため、0円起業や少額起業が増えていることが挙げられます。
事業に失敗しても、ほとんど資金を使っていなければ借金を抱えることもなく、事業の撤退も容易だからです。
しかし、資金をかけないで事業をおこなうことで、サービスの質が悪くなる等の弊害もあり、結果的に事業の失敗につながる恐れもあります。事業を成功させるためにも費用対効果を高め、計画的に資金の投入を行い、より良いサービスを提供することが重要になります。
会社を設立するかしないかで必要な資金額は変わる
個人事業主として独立する場合は、会社設立とは違い登記等にかかる資金はありません。
しかし、会社を設立して独立する場合は、会社の形態に応じた登記が必要になります。こちらでは、自身で手続きをした場合を想定し、会社の形態別に必要になる費用を紹介していきたいと思います。
株式会社を設立する登記費用
株式会社を設立する場合、設備費や実際に企業として運営していく費用の他に、登記費用がかかります。株式会社の登記にかかる費用は以下の通りです。
- 登録免許税 15万円
- 定款に貼る印紙代 4万円
- 公証人に支払う手数料 5万円
- 定款の謄本手数料 2千円
なお、定款に貼る印紙代は電子定款の場合は不要です。
株式会社設立の登記に必要な費用は合計で20~25万円になります。
合同会社を設立する登記費用
合同会社を設立する場合、株式会社程ではありませんが登記費用がかかります。合同会社の登記にかかる費用は以下の通りです。
- 登録免許税 6万円
- 定款に貼る印紙代 4万円
株式会社と同様、定款に貼る印紙代は電子定款の場合は不要です。
合同会社設立の登記に必要な費用は合計で6〜10万円程になります。
開業資金の平均はいくら?業種別に必要な金額
開業資金は業種によって大きく異なります。それらを踏まえ、業種別に平均でいくら資金を用意すればいいのかを紹介していきます。
なお、ここで紹介する項目以外にも以外にも
- 不動産会社へ支払う仲介手数料(店舗型ビジネスの場合)
- 開業してからの運転資金
などが必要です。
飲食店(カフェやラーメン店等)
飲食店の開業資金の目安は800~1,200万円と言われており、平均で1,000万円程必要になります。主な用途は、物件の取得費用と設備投資費用(内外装工事、備品購入)になります。
【物件の取得費用】
- 保証金(敷金) 200~400万円(賃料の10か月分)
- 礼金 0~80万円(賃料の0~2か月分)
- 賃料 20~40万円(1か月あたり)
【設備投資費用】
- 内外装工事費 150万円~
- 厨房機器購入費 100万円~
- 備品費 40万円~
- その他諸経費 10万円~
取得した物件の状況や店舗の規模により必要な金額は変わります。
これらとは別に、食品営業許可証の取得費用(1万円程)が必要です。
医療関係(整骨院や訪問介護等)
飲食店のような厨房設備等が必要ないため、比較的費用は低く抑えられる場合もありますが、施術するための設備を整えると平均で合計800万円程は必要になります。
ここでは整骨院と訪問介護の例を挙げたいと思います。
【整骨院】
- 物件取得費 約130万円
- 内装工事費 約210万円
- 機材費 約165万円
- 備品購入費 約30万円
- その他諸経費 約22万円
※ 18坪程度の物件の場合を想定しています。
【訪問介護】
- 物件取得費 約50万円(自宅を事務所とする場合は不要です)
- 医療用品購入費 約50万円
- 備品購入費 約40万円
- 介護車両購入費 約100万円
- その他諸経費 約10万円
このように業態によって金額が大きく変わります。設備をより充実させたり、広い物件にすれば費用も多くなります。
美容・フィットネス関係(美容室等)
サービス業の場合は、モノを作ったりしないため材料等の費用はかかりませんが、内装や設備を充実させるため最終的な費用は高額になってきます。
業態によって大きく変わるため一概に平均は出せませんが、合計で500〜1,000万円程の費用が必要です。
美容室とパーソナルトレーニングジムを例に挙げて見ていきます。
【美容室】
- 物件取得費 約120万円
- 内装工事費 約700万円
- 設備・機材購入費 約225万円
- 備品購入費 約50万円
- その他諸経費 約40万円
美容室は内装をオシャレにする傾向があるため、内装工事費が高くなります。
【パーソナルトレーニングジム】
- 物件取得費 約90万円
- 内装工事費 約20万円
- トレーニング器具購入費 約150万円
- 備品購入費 約10万円
- その他諸経費 約5万円
パーソナルトレーニングジムは、こだわらなければかなり安く開業できます。商用可能なマンション等を利用することで、物件取得費を抑えることができます。
業務委託・フランチャイズ(FC)
転職エージェントでも、就職希望者に独立を促すサービスが増えてきています。
業務委託で独立したエンジニアとして仕事を受託したり、フランチャイズに加盟してコンビニチェーン店を出店したりと多様です。
こちらも業態によって必要となる資金は大きく変わりますが、特にフランチャイズでは加盟金という出店の許可のための資金がかかります。これらも踏まえ、業務委託・フランチャイズでの例を3つ紹介します。
【居酒屋(引き継ぎのケース)】
- 加盟金 0円
- 設備・備品買取費 150万円〜(店舗の状況によって異なります)
既に業務委託で居酒屋を運営していた人からの引き継ぎをするケースです。
加盟金は必要ありませんが、前オーナーが所有していた店舗の設備・備品を買い取る形になります。これらとは別にロイヤリティとして、売り上げの数十%を業務委託元の会社に支払います。
【コンビニオーナー(大手チェーン)】
- 研修費 50万円
- 開業準備手数料 100万円(店舗を自分で用意できる場合は50万円)
- 開業時出資金 150万円
これらが加盟金として必要になる他、毎月の売り上げからロイヤリティとして、粗利益額に応じて数十%を支払わなければなりません。
ただ、ロイヤリティの割合についてはチェーン間によって差が大きいため、事前にしっかり調べ、各チェーンを比較する必要があるでしょう。例えばミニストップの場合、2020年9月25日に店舗側の負担を軽減する方針を打ち出しています。
(参考)
公式:ミニストップフランチャイズ
【宅配・配送(例:ヤマト運輸)】
- 加盟金 23万円
- 車両購入費 80〜120万円(自分で用意できる場合は0円、リースの場合は4年分で140万円)
- その他諸経費 約6万円
提携会社によって同じ業態でも必要となる資金は異なります。
こちらに挙げた内容は一例になりますので、必ずしもこの通りになるとは限りません。
必要な開業資金の目安として参考にしてください。
まとめ
開業資金が平均でいくら必要になるかを業種別に紹介しました。ご覧の通り、業種により必要となる開業資金は大きく異なります。
また、会社を設立する場合は、登記するための資金もかかります。
今では0円起業や少額起業も増えてきていますが、顧客により良いサービスを提供するために投資は必要です。自己資金で全て賄うことができれば良いですが、現実的に厳しいでしょう。
これから起業する場合や創業間もない会社は、資金の確保が課題になってきます。
補助金や助成金もありますが、オススメなのは「日本政策金融公庫での創業融資」を利用することです。少ないリスクで融資を受けることができます。
融資を受ける前に専門家に相談し、失敗のない開業資金の確保を目指しましょう。
【日本政策金融公庫に関する記事はこちら】
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。