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「起業には自己資金が必須」とはよく言われること。
しかし、ビジネスにはスタートする時期やチャンスというものがあり、準備が不十分な状況で起業しなければならないことも少なくありません。
記事の結論をお伝えしておくと、
「自己資金なしでも起業することは可能。しかし、自己資金はあるに越したことはない」
です。この記事では、
- 自己資金なしでも起業は可能!しかし、融資は必須
- 自己資金なしの起業でよくある失敗事例2つ
- 自己資金がない場合の3つの対策
- 自己資金の必要性とは?やはり自己資金はあるに越したことはない
といった内容について解説していきます。
「自己資金が十分ではないものの、一刻も早く起業したい」と思っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
自己資金なしでも起業は可能!しかし、融資は必須
自己資金なしで起業は可能なのでしょうか?
答えは「YES」です。
ただし、事業を継続するための資金は絶対に必要です。そのため、自己資金なしで起業する場合は必然的に融資を受ける必要があります。
融資制度の中には自己資金の額が融資決定の絶対的な条件となっていないものもいくつかあります。まずは、融資の中でも自己資金なしでも受けられる4つの創業融資についてみていきましょう。
1.新創業融資制度(日本政策金融公庫)
新創業融資制度は日本政策金融公庫の代表的な融資制度であり、無担保・無保証で融資を受けられる創業者にとってはメリットの大きい融資制度です。
この融資制度は基本的に自己資金が開業資金総額の10%以上必要とされていますが、
- 現在の行っている仕事と同じ業種の事業を始める場合
- 産業競争力強化法に定める認知特定創業支援事業を受けて事業を始める場合
のいずれかを満たしていれば、自己資金の額は問わないという特例があります。
この特例をうまく利用すれば、自己資金なしでも融資を受けることは十分に可能です。
2.中小企業経営力強化資金(日本政策金融公庫)
日本政策金融公庫には、新創業融資制度以外にも中小企業経営力強化資金という融資制度があります。
この制度にはそもそも自己資金要件が存在しません。
しかし、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 経営革新、又は異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により、市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む。)を行おうとする方
- 自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による、指導及び助言を受けている方
これらの条件をしっかり満たすことが出来れば、自己資金なしでも融資を受けることは可能です。
3.挑戦支援資本強化特例制度(日本政策金融公庫)
挑戦支援資本強化特例制度も日本政策金融公庫の制度のひとつで、これも自己資金要件がありません。
こちらも以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 地域経済の活性化にかかる事業を行うこと。
- 税務申告を1期以上行っている場合、原則として所得税等を完納していること。
このように、税務申告を1期終えていることが条件になっていますが、
- 技術・ノウハウ等に新規性がみられる方
- 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資を受けている方
- 事業に新規性及び成長性がみられる方
のいずれかにかかる資金に限りれば、起業時でも利用することが可能です。
ただ、挑戦支援資本強化特例制度では、借入希望金額によってさらに条件があります。具体的には、1,000万円を超える融資を希望する場合、
- 産業競争力強化法に定める認知特定創業支援事業を受けて事業を始める方
という条件を満たす必要があります。
【参考】
日本政策金融公庫「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」
4. 制度融資(信用保証協会制度融資)
日本政策金融公庫以外の融資制度でも、自己資金なしで融資実行の可能性が高いものもあります。それが、自治体(主には都道府県)と信用保証協会が提供している制度融資です。
この制度融資は「事業を営んでいない個人で、起業しようとする具体的な計画を有するもの」が利用でき、具体的には自己資金に1,000万円を加えた額を最大借入金額として融資を受けられることが特徴です。
つまり、自己資金なしの状態でも、最大1,000万円までならば融資を受けられるということになります。
ただし、こちらの要件は都道府県によって違いがあるため、創業予定地を確認して利用できるかをチェックする必要もあります。
【参考】
一般社団法人全国信用保証協会連合会「初めての融資と信用保証」
自己資金なしの起業でよくある失敗事例2つ
続いて自己資金なしで起業した事例のうち、よくある失敗例を見ていきましょう。
1. 運転資金が尽きてしまった飲食店
飲食店は、ある程度人気が出て経営が安定するまでに少し時間がかかることの多い業種といえます。そのため、この時間をどうにかして乗り越えるためには、やはり計画と自己資金が必要になるでしょう。
今回紹介するのは、ラーメン屋の事例です。
店主はラーメン屋ですでに3年以上の経験があり、また他の飲食店でも5年ほど経験があったため、経験は十分にあったといえるでしょう。
エリアとしては、そこまで人が多くないものの、駅から歩いて5分以内という好立地。しっかりと広告費を使って堅実に集客をおこなえば、十分に勝算はあったといいます。
そのため、自己資金はほとんどなかったものの、設備資金と運転資金1.5ヶ月分程度の融資を受けることに成功して事業を始めました。
しかし、やはり運転資金1.5ヶ月分は少なかったのでしょう。客足は右肩上がりではありましたが、残念ながら追加の融資を受けることが出来ず、資金繰りが悪化して開業3ヶ月であえなく閉店となってしまいました。
最低でも、半年分の運転資金をカバーできる程度の自己資金は確保することが大切です。
2. 思い通りの内装費が出せず、採算が合わなかったマッサージ店
世相柄、癒しを求める人が多いからなのか、最近ではマッサージ店の出店が相次いでいます。
しかし、マッサージ店は内装によって客層に違いが出てくることが知られています。
このマッサージ店では、その内装費がうまく捻出することが出来ませんでした。高級感のない店内では設定していた値段の施術を求めている客の来店は少なく、なし崩し的に施術料を下げるしかありません。
施術料が下がれば当然利益率も落ちてしまいます。その結果、最終的には資金繰りが悪化してしまったのです。
自己資金がない場合の3つの対策
自己資金は自分で貯める以外にも、さまざまな手段で集めることできます。以下は、自己資金がない場合に検討すべき代表的な3つの対策です。
1.家族から贈与を受ける
自分の家族からの贈与を受けて自己資金とすることができます。
ただし、贈与を受ける場合は金額の大小をとわず贈与契約書を作成しましょう。
というのも、贈与であることを証明ができなければ自己資金として認めてもらえないからです。仮に数百万円を親から贈与してもらい通帳に記載があったとしても、贈与契約書がなければ自己資金とは認められません。
なお、自己資金は返済義務がなく、すべてが事業に使える資金であることが重要です。そのため、単に「親から借りたお金」などはNGです。
2.現金以外の資産を現物出資として申告する
場合によっては、現金以外ををそのまま自己資金とすることが出来ます。
例えば、合同会社という仕組みの中では、貸借対照表に記載可能な資産である、
- 動産…パソコン、車など
- 不動産…土地、建物など
- 有価証券など
があれば、それをもって現物出資と認められることがあります。
【参考】
国税庁「No.3117 不動産を法人に現物出資したとき」
3.まずは副業からスタートさせる
自分がしたいビジネスモデルを副業といった小さな形で始めてみるのもいいでしょう。
副業で利益が出ればそれを自己資金に充てることができますし、うまく行かなかったとしても、経験となります。さらに自分が投資した部分の資金が、必要経費の名目であたかも自己資金があったかのように処理することが出来る場合もあります。
自己資金の必要性とは?やはり自己資金はあるに越したことはない
ここまでは自己資金がない状態で起業する方法を紹介してきましたが、やはり自己資金はあった方が良いでしょう。
なぜなら、自己資金があると創業融資を受けやすいからです。日本政策金融公庫の創業融資も、自己資金が開業費用総額の10%保有していることを求めていますし、そもそも融資は借入金である以上、資金を返す必要があります。
融資機関の立場にたって考えてみると、お金を貯められる人と貯められない人のどちらにお金を貸したいと思うか、答えは明らかです。
さらに、自己資金の割合によっては金利が変動する場合があります。自己資金が多ければ多いほど社会的な信用が増し、結果的に安定した起業が可能になるのです。
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自己資金がないからといって、起業の夢をあきらめる必要はありません。
創業融資の中には、自己資金がなくても受けられる制度がいくつもありますし、また自己資金がなくても起業できるアイディアはいくつもあります。
ただ、安定した起業や成功率の高い起業をするためには、ある程度の自己資金を用意しておくことをオススメします。自分がやりたいことは何なのか、自分が背負えるリスクは何なのかをしっかり見極めて、起業の準備に取り掛かりましょう。
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監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。