個人事業主は創業融資を受けるのに有利なのか不利なのか

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個人事業主は株式会社ほどの社会的信用は得られ難いですが、創業融資に制約があるわけではありません。
今は公的機関や金融機関、ネットによる不特定多数からの資金調達まで調達方法が多岐に渡る時代です。

ここではそれぞれの資金調達方法を通して、個人事業主の創業融資においての位置づけに触れて行きます。

1.個人事業主は創業融資を受けられるのか

個人事業主も株式会社と同じように創業融資を受けることは可能です。両者の審査における違いは、ほとんどありません。
しかし、個人事業主が株式会社と比べて融資を受けるに際に不利な点が2つあり、そこを克服することが求められます。

1-1. 返済不能時の免除がない

個人事業主で資金調達をして万が一返済不能に陥った場合には、株式会社と比較してりかなり不利になります。
株式会社の場合、担保も提供せず、個人で連帯保証人なっていない限り(法人の代表者としての連帯保証は問題ありません)、経営者には返済義務が生じません。
株式会社の場合には、融資を受けたのは株式会社であって個人ではないという扱いを受けるからです。

一方、個人事業主の場合は、自己破産しない限り、返済義務が免除されることはないのです。
そのため事業失敗はすなわち自己破産につながるという認識を予め持ち合わせて、事業計画を何度も練り直すことが大切になってきます。

1-2. 社会的信用をゼロから築くことが必要

個人事業主と株式会社等の法人を比較して、よく言われることに信用力の差があります。
やはり法人の方が、信用力が高いという認識が今でもあります。
それは登録型派遣の実態に由来します。
派遣登録会社に登録されている派遣社員自身は個人事業主の形で業務請負契約を結んでいることが多いのです。

開業届1枚を提出することで、事業をスタートできる個人事業主に対して、法人はいくつものステップと費用を伴って、自治体から法人として認められた存在ですので、そもそもの信用力に差があるのは当然のことです。

個人事業主として資金調達する場合は、技術的に絶対的な強みがある場合や、ブルーオーシャン戦略を既に持ち合わせており、潜在的な顧客を見極めているなどのポジティブな要素を豊富に持ち、金融機関を納得させるだけの材料が必要になってきます。

それ以外の方法としては、自己資金の割合を金融機関が求めている割合よりもできるだけ多く用意した上で事業計画を練るべきです。

2.個人事業主の資金調達:創業融資のイロハ

個人事業主の資金調達方法として、下記が挙げられます。

  1. 日本政策金融公庫
  2. 信用保証協会の保証付融資
  3. 民間金融機関からのプロパー融資
  4. ビジネスローン
  5. カードローン
  6. ファクタリング
  7. 補助金・助成金
  8. クラウドファンディング
  9. 家族・親戚・友人・知人などからの援助

2-1. 日本政策金融公庫

メリット

担保不要で返済期間を長期に設定できますが、あくまでも制度上の話です。
申請自体は容易ですが審査は厳しく、融資が実行されるには、きちんと事業の見通しを立てることが必要です。

デメリット

融資決定後の返済責任が重いことです。
事業が行き詰まって返済が出来なくなると、債権回収業者に譲渡されるため、必然的に回収するための対応が厳しくなってきます。
日本政策金融公庫は公的機関ゆえ銀行よりは資金調達が難しくない分、確実な返済能力が求められてきます。

2-2. 信用保証協会の保証付融資

メリット

銀行のプロパー融資と比較して、融資審査がやや易しいということです。

デメリット

返済時には金融機関への金利に加えて、信用保証料も必要になるため割高になることです。
また返済が出来なくなった時の残りの返済金額に圧縮もありません。万が一返済が不可能になった場合、融資元から信用保証協会へ債権が移ります。

信用保証協会は日本政策金融公庫などと異なり、債権を回収業者に売り渡すことはなく、債権額全てを返還請求対象に設定します。

2-3. 民間金融機関からのプロパー融資

民間金融機関、特に信用金庫がお勧めです。

信用金庫は「地域で集めた資金を地域の中小企業と個人に還元することにより、地域社会の発展に寄与する」といった信用金庫法に基づいた非営利かつ相互扶助の理念で成り立っています。
そのため個人事業主からの融資申請にも、柔軟に対応してくれる可能性があります。

メリット

信用保証料がかからないことが挙げられます。
金利の負担のみが発生することになります。

デメリット

審査基準が非常に厳しいものになることが挙げられます。
結果として日本政策金融公庫や、信用保証協会付融資より厳しくなっているのです。

他には地域に基づくため、資金調達は地元の信用金庫からとなり、他の信用金庫を当たることはできなくなります。

2-4. ビジネスローン

ビジネスローンは金利を高く設定し、定型的な質問のみを行うスピード審査によって、即日融資もしくは3日ほどで融資決定を可能にした、民間金融機関による新しいタイプの融資でした。
しかし2017年から審査の甘さが問題となり、2019年現在では民間金融機関の審査基準も厳しくなっています。

2-5. カードローン

カードローンとは銀行や消費者金融によるキャッシングサービスであり、事業性資金でなければ、生計費など用途が限られることはありません。
しかし個人事業主の場合に限って、事業費を含んでもよいとするカードローンも存在します。

カードローンは審査が通りやすく融資もスピーディーに行われるため、個人事業主にとっては便利な調達手段で。
しかし、金利もその分高いため、開業後に業績が上がらなければ資金ショートを招く恐れがあります。

2-6. ファクタリング

ファクタリングとは、事業者の持つ売掛金や受取手形などの売上債権を売却することで、資金調達することです。

メリット

回収に時間がかかる売掛金を、本来の回収期日よりも早くに現金化することができることです。

デメリット

ファクタリング業者に依頼した場合の手数料が発生することです。

ファクタリングにも審査があり、審査対象が売上債権のある取引先となります。
支払い側が大企業であれば審査に通りやすいですが、中小零細企業の場合には審査に通らない場合があります。

個人事業主の場合は、取引先からも事前に同意を得る形の3社間ファクタリングが通例です。
その場合、ファクタリングを検討した段階で取引先から、経営悪化に陥ったのではないかと警戒されてしまうデメリットも出てきます。

2-7. 助成金・補助金

助成金や補助金は、原則返済義務がない非常に魅力的な資金調達方法です。
しかし申請をしなければ一円ももらうことができないので、事前に計画を立てて申請する必要があります。

助成金は、申請内容が一定のラインを満たせばほぼ確実に一定額の受給が可能です。
それに対して補助金は、申請件数にかかわらず採択予定の件数が決まっているため、申請しても審査で落ちる可能性があります。

助成金や補助金においては、デメリットというよりは注意すべきことと表現した方がふさわしいでしょう。

助成金は後払いで約半年から1年半ほど先になる場合が多いため、メインの資金調達方法としては成り立ちにくいです。
補助金は申請に必要な書類などが多く応募期間が短いので、事前に相当な準備が必要です。
また、先に費用の全額を負担する必要があります。

2-8. クラウドファンディング

クラウドファンディングは、インターネットサイトを通して、不特定多数の人に自身のアイデアや事業計画を遂行するための財源の提供や協力を行う、新しい資金調達方法です。

クラウドファンディング事業者に登録し、集客力の高いポータルサイト上で自分のアイデアや事業計画をプレゼンテーションして、それに賛同する人たちから資金を調達します。

メリット

クラウドファンディングにはいろいろなメリットがあります。

1つ目のメリットは、日本政策金融公庫や民間金融機関に対する事業計画書の説明と比較して、支援者の賛同を得られさえすれば、確実性に欠ける事業内容であっても資金調達が可能なことです。

2つ目のメリットは、ポータルサイトを通じた宣伝効果もあり、資金調達によって事業を開始したときには、プロジェクトに賛同してくれた支援者がそのまま顧客になることもあり得ることです。
すなわち、事業開始前から集客に成功しやすいということです。

デメリット

金融機関による融資と異なり、期限内に目標額に到達せずに調達失敗となり事業がストップしてしまう可能性もあります。
また期間中は、不特定多数に向けてアイデアやサービスが広く公開され続けることになります。

これによって、不特定多数の人によるアイデアの盗用や模倣のリスクが発生してしまいます。

最後に、クラウドファンディングの最大のデメリットは、何と言っても失敗に厳しいことでしょう。
仮に資金調達に成功し事業スタートにこぎ着けたとしても、途中で頓挫することで支援者をはじめとした社会的な信用を失うことにもなりかねません。

2-9. 家族・親戚・友人・知人

家族や親戚、友人・知人から借り入れが可能であれば、依頼してみるのも手かもしれません。
ただし、金銭観のトラブルは人間関係の破綻にもなりやすいので、注意が必要です。

例外として、自己資金が十分にあり戦略的につなぎ資金として借り入れする場合で、返済能力が十分に裏付けられているときは大丈夫です。
例えば、金融機関でも審査に通過するレベルだが、手数料や金利を節約したいといった場合です。

3.個人事業主たちは創業融資の専門家になぜ頼るのか

個人事業主が自力で創業融資の申請を行う場合、資金調達に失敗したということはよく耳にします。
融資申請先がどこであれ、審査基準は過去の創業者のデータに基づいて厳密に設定されているものです。

そのため専門家は、どこに審査ポイントが設けられているかを研究しています。

それに対し個人事業主が自力で行う場合、事業計画書が審査に通るように練り直すより、むしろ事業への夢や熱意、そして誠実な人柄を全面的押し出しがちです。

専門家は数多くの個人事業主に接触しているため、自ずと開業後に成功するパターンや失敗するパターンが見えてきます。
そのため、専門家に頼る個人事業主は多くいるのです。

4.まとめ

個人事業主として創業融資を受けることは制度的には、株式会社と何ら変わることはありません。
しかし実質的な信用問題や債務不履行に陥った時の責任は、計り知れないものになってきます。

日本政策金融公庫や、さらにはクラウドファンディングなどの門戸が広い中で、返済が可能であると思わせるための事業計画の実現性が株式会社以上に要求されています。
個人事業主ほど、専門家のアドバイスの元で事業計画を慎重に進めていくことが大切なのです。

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