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会社を設立するためには、定款の作成・認証、会社の登記という手続きが必要です。これらの手続きには、それぞれ手数料や登録免許税などの費用がかかります。
今回は会社設立にかかる費用を
- 資本金
- 法定費用
- その他の費用
の3つにわけ、具体的な数字も合わせて詳しく解説していきます。
また、「株式会社と合同会社の違い」「会社の設立費用を抑える方法」についてもご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
費用1.資本金
会社を設立するには、まず資本金がです。
2006年の新会社法施行以降、以前あった下限金額の規定がなくなり、資本金1円からでも会社を設立できるようになりました。
しかし、資本金が少なすぎる会社は支払い能力が低いと見なされ、取引先や金融機関から敬遠されがちです。
一般的に、資本金の目安は合同会社で50万円、株式会社で300万円ほどです。
より具体的に金額を考えるなら「初期費用+6ヶ月分の運転資金」が適切な金額と言われています。
費用2.法定費用
次に、会社設立の手続きに最低限必要な法定費用を解説していきます。
会社の設立費用は、株式会社か合同会社かで異なります。合同会社には不要な費用もあり、設立費用は合同会社の方が安く済みます。
会社設立の手続きに必要な法定費用をすべて合わせると、以下の金額になります。
- 株式会社:約20万円~24万2,000円
- 合同会社:約6万円~9万円
定款認証手数料
公証人の定款認証にかかる法定費用は5万円です。
会社を設立するには、まず会社の様々な決まりごとを記載した「定款」の作成が必要です。
そして、その定款を公証人役場で認証してもらい、きちんとした会社と認められることで登記手続きに進めるのです。これは株式会社の場合のみ必要な手続きで、合同会社を設立する場合は不要となります。
定款に貼る収入印紙代
会社の定款は特定文書にあたるため、4万円の収入印紙の貼り付けが必要です。
合同会社は定款の認証手続きは必要ありませんが、この印紙代は必要になります。ただし、電子定款の場合は、印紙の貼り付けが必要ないため印紙費用自体が発生しません。
定款の謄本手数料
定款は認証・登録・保管のために、同じものを計3冊用意します。定款の原本を複製したものを、定款の謄本といいます。
謄本手数料は1冊1,000円ほどで、2冊分謄本を作成するため費用が2,000円ほどかかります。
ここまでの、定款関連でかかる法定費用を合計すると、
- 株式会社:9万2,000円(電子定款の場合5万2,000円)
- 合同会社:4万円(電子定款の場合0円)
となります。
登録免許税
登録免許税とは、会社の登記を行う際に法務局に納める税金です。
収入印紙を購入するか、税務署または金融機関で現金納付することができます。
登録免許税の金額は、会社の形態によって異なっています。
- 株式会社:15万円
- 合同会社:6万円
ただし、資本金の0.7%が上記の金額を上回る場合には、株式会社・合同会社ともに資本金の0.7%の費用が必要になります。
費用3.その他の費用
会社設立には、資本金と法定費用以外にもかかる費用があります。
ここからはそれらの費用について、見ていきましょう。
電子定款作成費用
紙ではなくデータで電子定款を作成し、電子認証を行えば、定款認証の際にかかる印紙代が不要となります。
しかし、この電子定款を作成するには、紙の定款にはない費用がかかります。
まず、電子定款はPDFで作成し、その中に電子署名を挿入する必要があります。PDFデータ自体はフリーソフトでも作ることができますが、電子署名を挿入するにはAdobe Acrobatなどの専門ソフトを使わなければいけません。このAdobe Acrobatの購入には、3万円ほどの費用がかかります。
また、電子署名を行うためには、事前に電子証明書の交付を受けておく必要があります。
電子証明書の交付を受けるために、マイナンバーカードを読み取るカードリーダーを用意しなければいけません。カードリーダーは2,000円ほどから購入できるっため、電子定款の作成には3万2,000円ほどかかると思っておきましょう。
カードリーダーや電子証明書は、会社設立後の納税をe-Taxで行う場合にも役立つため無駄な出費というわけではありません。ただ、元から有料ソフトやカードリーダーを持っていた場合を除き、電子定款費用を0円におさえることはできないため気をつけてください。
ちなみに、電子定款の作成を税理士などに依頼する場合、ソフト・カードリーダーの購入が不要な代わりに税理士報酬として5,000円ほどの費用がかかります。
実印作成費
会社を設立する手続きには、4種類の実印が必要となります。
- 会社実印(代表社印):会社の設立登記時に登録する実印 主に重要な契約書などに使う
- 会社銀行印:銀行口座の開設時に届出る実印 会社実印と分けてリスクを分散する
- 角印(社印):注文書・請求書・稟議書などに用いる会社の認印
- 住所印(ゴム印):会社名・会社住所・電話番号などを記載した印鑑
これらの実印はすべて用途が違うため、会社を設立する際は必ず最低4種類の印鑑を作る必要があります。
実印の作成費用は1本2,000~5,000円ほどのため、4本で8,000~20,000円ほどの費用がかかります。
印鑑証明書
会社の実印に効力を持たせるには、印鑑登録をして印鑑証明書を取得する必要があります。
会社の印鑑証明書は、
- 法務局の窓口
- 郵送
- オンライン
の3つの方法で請求することができます。
自治体によりますが、印鑑登録の費用は1件300円程度、印鑑証明書の発行は1通450円の費用がかかります。
株式会社と合同会社-設立費用の違い
現在設立できる一般的な会社の形式は、株式会社と合同会社の2種類です。
先にもお伝えした通り、会社の形式によって必要な設立費用は異なります。株式会社と合同会社で費用に差が出る理由について、詳しくみていきましょう。
認証手数料の違い
株式会社を設立する場合は必ず「定款の認証」という手続きを行います。合同会社の場合、この手続きは必要ありません。
会社設立時に作成する最初の定款を「原始定款」といい、作成時点ではまだ効力を持っていません。公証役場で公証人が正式な定款として認証することで、はじめて効力を持つのです。
なぜ株式会社は定款の認証が必要かというと、株式会社は所有者=経営者や定款作成者とは限らないためです。定款の作成から年月が経ったあと、その時の所有者が定款を確認した場合、改ざんされていないことを証明するために定款の認証が必要となるのです。
一方、合同会社は外部に株式を発行しないため、常に所有者=経営者です。出資者が全員経営に関与し、定款の作成・変更にも出資者全員の同意が必要なため、外部組織による定款の認証は必要ありません。
登録免許税の違い
会社の登記の際に必要な登録免許税は、株式会社が15万円、合同会社が6万円です。
なぜ会社の形式によって登録免許税に差があるのかは明らかにされていませんが、合同会社は株式会社に比べて小規模な会社が多いので、一種の軽減措置と考えられます。
会社設立時の費用を抑えるため、あえて合同会社を選んで設立する経営者も増えています。
会社設立にかかる費用を抑えるには?
会社設立にかかる費用を抑えるには、外部の専門家に手続きを委託するのがおすすめです。
というのも、会社の設立手続きを代行している税理士や司法書士は電子認証に対応している場合が多いからです。
電子認証なら定款の印紙代4万円が不要となり、会社設立の費用を抑えられますし、自分で電子定款を作成しようと思うとソフトなどの環境を整えるために3万円以上の費用がかかります。
その点、税理士や司法書士に依頼すればソフト等の購入費用がかかりません。電子定款の作成代行は5,000円ほどで請け負ってもらえることが多いため、会社設立の手続きを委託すれば、自分でおこなうよりも2万5,000円〜3万5,000円ほど費用を抑えられるのです。
自分で書類を作成したり、必要な手続きを調べたりする手間も省けるため、会社設立前の貴重な時間も有効に使うことができるでしょう。
まとめ
会社設立にかかる法定費用(=絶対に必要な費用)は、
- 株式会社:約24万円〜24万2,000円
- 合同会社:約6〜9万円
です。これに、資本金、印鑑作成費用、ソフトの購入費用などの費用が加わります。
ハートランド税理士法人では、会社設立の代行を手数料無料でおこなっています。手間を省きつつ費用を節約したいと考えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。