株を相続するにはどうしたらいい?基本的な流れと評価計算方法

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被相続人から株を相続する場合、相続人が遺産分割して相続をすることになります。

その際に、発生する株の評価計算はとても複雑で素人では全く理解できないといったケースも少なくありません。税理士などの専門家に相談することで、スムーズに株の相続を進めることができます。

今回この記事では、

  • 株(株式)の相続の基本的な流れ
  • 株式の分割方法
  • 株の評価計算方法
  • 相続した株式を売却する方法
  • 株式を相続した場合の注意点

について詳しく解説していきます。

株(株式)の相続の基本的な流れ

株の相続の基本的な流れは以下のとおりです。

上場株式の場合と非上場株式の場合で変わってくる部分のありますので注意しましょう。

1.被相続人(相続される人)の保有株の調査

まずは、被相続人の保有株があるかどうかを確認します。

保有株があるかどうかの確認は、以下の方法で行うことができます。

  • 上場株式
    …証券会社、信託銀行その他銀行などへ取引残高報告書(評価証明書)を発行請求。
  • 非上場株式
    …株券発行会社に問い合わせ。

また、上記でも確認できない場合は、証券保管振替機構(通称「ほふり」)に連絡して登録済加入者情報の開示請求を行いましょう。

2.遺産分割

「遺産分割協議書」を作成します。

非上場株式の場合は市場がなく、その評価方法が複数あるため(後述)税理士などの専門家へ相談しましょう。

遺産分割不成立の場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てて、裁判官や調停員を間に挟んで話し合います。さらに、不成立の場合は遺産分割審判手続きに移行します。そこでも不服だった場合には、即時抗告で高等裁判所での審議が必要です。

3.相続人(相続する人)の口座開設

株(株式)を相続するするためには、相続人が証券口座を開設する必要があります。

開設が済んでいる場合は、その口座へ株を移管します。

ただし、相続人と非相続人の証券口座が異なると、移管できないこともあります。その場合は、相続人が取引していた証券会社に新たに、口座開設をしなければなりません。

4.名義変更

  • 上場会社
    …当該株式を管理する信託銀行や証券代行会社の窓口で行います。
  • 非上場会社
    …当該会社との間で直接やり取りをします。

名義変更をする際に必要となる主な書類は以下の通りです。

  • 株券(株券が発行されていない場合は不要)
  • 相続による株式名義書換請求書
  • 名義書換をして新しく株主になる人の株主票
  • 共同相続人の同意書または遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)

5.保有、売却、現金化

次に、株(株式)を売却処分して現金化する流れについてご紹介します。

各相続人が売却処分を行う場合

相続人が複数おり、遺産分割協議が成立した場合、相続人は株式の管理証券会社等に口座を作り、遺産分割協議の内容に基づき移管依頼書を作成します。

株式をその口座に移した後、個人の判断で売却処分ができるようになります。

相続財産である株式を一括売却する場合

株ではなく現金化を優先する場合、現金化の処理を先に行うと言う方法もあります。

その場合は、まず代表相続人に対して他相続人が株式売却の処理を委任し、代表相続人が管理証券会社等に口座を開設します。

その後、当該口座に全株式を移して売却します。

6.申告・納税

相続税の「基礎控除」を上回る遺産がある場合は申告・納税を行います。相続税の申告期限は、相続開始を知った日から10カ月以内です。期間内に被相続人の住所地の管轄税務署へ申告・納税する必要があります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

【参考】国税庁「申告と納税〈相続税の申告・納税〉」

株式を分割する3つの方法

相続が発生した場合、遺産の中に株式が含まれている場合もあります。

複数の相続人がいる場合株式は遺産分割の対象となり、適切に分割しなければ調停をせざるを得ない状況になってしまうこともあるかもしれません。

株式の分割方法には、主に以下の3つの種類があります。

現物分割

現物分割とは、そのままの形で相続人が受け継ぐ方法です。

例えば、株式のすべてを1人の相続人が相続する方法や2種類の銘柄の株式を2人の兄弟もしくは姉妹で分ける方法などが当てはまります。

不動産の場合は1つのものを複数人で分けるため平等に相続するのが難しいですが、株式の場合は数で平等に分けられるため、一般的な分割方法として広く用いられています。

代償分割

代償分割とは、株式を1人の相続人が相続し、他の相続人に対して代償金として金銭を支払う方法です。

例えば、兄弟2人のケースでは評価額2,000万円の株式を相続する必要がある場合、長男が2,000万円の株式を相続し、次男に代償金として1,000万円分を現金で支払います。

この際代償金が贈与としてみなされるのを防ぐため、遺産分割協議書に「代償金を支払う」と記載してください。

換価分割

換価分割とは、すべての株式を売却して売却で得た金銭を相続人で分ける方法です。

売却で得た金銭は法定相続分に従った分割はもちろん、遺産分割協議で異なる方法により分割することも可能です。

相続人全員が株式など投資に関心がない場合には、こちらの方法を用いるのがおすすめです。

株の評価計算方法

株の評価計算方法はとても複雑です。特に非上場株式の場合は、素人では判断ケースがほとんどです。税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

上場株式の場合

上場株式は、課税時期(相続が発生した日)の最終価格によって評価されます。

1、課税時期の月の毎日の最終価格の平均額

2、課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額

3、課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額

ただし、課税時期の最終価格が、上記3つの中の最も低い価額を超える場合は、最も低い価額により評価されます。

非上場株式の場合

非上場株式の場合は、基本的に財産評価基本通達の定めに従い評価されます。

純資産価額方式、類似業種比準価額方式、配当還元方式などの複数の方法がありますが、とても複雑ですので、税理士などの専門家に相談しましょう。

相続した株式を売却する3つの方法

相続した株式は、状況に応じてさまざまな方法で売却することができます。

ここでは、代表的な3つのケースとその注意点について解説します。

相続人が個別に株式を売却するケース

各相続人が自身が相続した分の株式を個別に売却する方法で、各相続人のタイミングで売却できる点や売却代金を各相続人が自由に使える点がメリットです。

しかし、相続人ごとに税金や手続きが煩雑になる可能性があるうえ、共同で売却する場合に比べて、価格交渉力が弱まる可能性があります。

そのため、もともと投資に興味がある人や株式に関する知識を十分に持ち合わせていないと損をしてしまう可能性があります。

相続財産の株式を一括で売却するケース

相続人全員で協力して、相続した株式を一括で売却する方法で、売却手続きの簡素化や共同で価格交渉を行うことで、より有利な条件で売却できる可能性がある点がメリットです。

しかし、相続人の間で売却のタイミングについて意見がまとまらない可能性や、売却代金の分配方法について、相続人間で協議が必要となる点が難点です。

非上場株式を売却するケース

相続した株式が非上場株式である場合、まずは売却先を探す必要があります。

売却先は株式の発行会社、他の株主による買取、企業買取の3種類存在しますが、基本的に非上場株式の評価は、上場株式に比べて低い場合が多いです。

また、株式の運用に慣れていない方は情報収集や交渉が難航する可能性が高いため、専門家に相談するのが好ましいです。

株式を相続する際の5つの注意点

株式の相続にはさまざまな注意点があり、適切な対応を怠ると税金や手続きで不利益を被る可能性があります。

ここでは、株式を相続する際に特に注意すべき5つのポイントについて解説します。

相続税の時効前に新たに見つけた場合は修正申告が必要になる

相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内です。

この期限内に全ての財産を把握しきれないケースもありますが、もし相続税の申告後に新たに株式が見つかった場合、速やかに税務署に連絡し、修正申告を行う必要があります。

修正申告を行わずに放置すると、加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があるため、注意してください。

受領期限を過ぎているものは配当金を請求できない

株式の配当金を受け取る権利は、一定期間行使しないと時効により消滅します。

一般的に、配当金の受領期限は支払開始日から3〜5年程度であるため、もし、相続した株式に未受領の配当金がある場合は、受領期限を確認し、期限内に証券会社に請求してください。

相続後に売却した場合は譲渡所得税が発生する

相続した株式を売却した場合、株式の売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた利益に対して譲渡取得税が課税されます。

譲渡所得税の税率は、長期譲渡所得と短期譲渡所得の2種類が存在し、株式の保有期間によって異なります。

オーナー企業の経営者は早めに相続税対策をしておく

オーナー企業の場合、株式が相続財産の大部分を占めることがあります。

そのため、相続税額が多額になる可能性が高く、早めの相続税対策が必要不可欠です。

例えば、生前贈与持株会社の設立などが具体的な対策として挙げられます。

生前贈与は、生前に株式を贈与することで、将来の相続税負担を軽減する方法で、持株会社は、株式を管理する会社を設立して、相続税評価額を抑える効果があります。

利益が出ている場合は準確定申告が必要になる

被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までに、株式の売却益や配当金などの所得があった場合、準確定申告を行わなくてはなりません。

準確定申告の期限は、相続税の申告期限と同様に、被相続人の死亡を知った日の翌日から4ヶ月以内です。

準確定申告を怠ると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があるため、注意してください。

大阪で相続対策や相続税の申告ならハートランド税理士法人へお任せください

 

記事内でも説明した通り「株の評価計算方法」は非常に複雑で、特に非上場株式の場合、素人では全くわからないといったケースがほとんどです。

相続対策や相続税の申告について何かお困りのことがあれば、まずはお気軽に弊社へご相談ください。

国税局で資産税関連業務を35年経験した国税庁OBなどのプロフェッショナルが、皆様の相続に関するお悩みを解決いたします。

相談は無料です。

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