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法人のお金を管理するための「法人口座」。
しかし、個人名義の口座とは異なり、法人口座は簡単に開設することができません。
この記事では、
- 法人口座とは
- 法人口座を開設するための基礎知識
- 法人口座を複数開設するメリット
- 大手メガバンクの法人口座の特徴
などについて解説していきます。
法人口座とは
法人口座とは、金融機関の口座名義人が法人になっている口座のことです。
起業してから口座を開設する場合、個人名義の口座でも会社の財産を管理することは可能です。
ただし、法人口座がなければ取引をしないという企業は一定数存在します。
また、法人口座を保有していれば、財産管理を行う際にも個人と法人を混同しなくてすみますし、経理処理などで混乱することを防げます。
以上の点からも、法人として起業した場合、もしくは個人事業主から法人成りした場合には、法人口座を開設した方が望ましいといえるでしょう。
法人口座を開設するための基礎知識
法人口座は個人口座のように思い立ったらすぐに開設できる訳ではありません。
法人口座を開設するためにはどのようにすればいいのでしょうか?順を追ってみていきましょう。
必要書類
まず、法人口座を開設する際には、その法人の存在を証明する資料が必要になります。
具体的には、
- 法人の商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 定款
- 代表者の印鑑証明書
- 代表者の身分証明書(例:運転免許証など)
- ホームページのコピー
- 法人の運営実態を証明する書類
などです。
最近では、特殊詐欺事件などが社会問題となっている影響もあり、金融機関から提出を求められる書類も厳格化されています。金融機関としては、特殊詐欺の口座として使用されるのを警戒しているのです。法人口座の開設にあたっては、必要な書類は抜け漏れなく揃えておく必要があります。
開設にかかる時間
法人設立から通算すると、3~4週間の期間が必要です。
まず、履歴事項全部証明書が発行されるようになるのは法人設立後1~2週間のため、金融機関で法人口座の開設の申込が可能になるのはそこからです。
次に、必要な書類が揃い、金融機関による審査が開始されてからおおむね1~2週間程度の期間がかかります。
法人口座を最短で開設する方法
一概にどの金融機関が早いとは言えませんが、法人口座を最短で開設するためには、必要な書類を不備なく揃えるのが最善の方法と言えます。
一般的には、ネット銀行を利用するとすぐに開設できるとされていますが、最近ではインターネット経由で都市銀行の口座開設の申込を行った方が早い場合もあります。また、地方の信用金庫のなかには、即日で法人口座の開設ができるところもあります。
開設に必要な資本金
資本金が1円でも法人の設立は可能です。
ただし、資本金があまりにも少ないと審査に通らない恐れがあります。実態のないペーパーカンパニーとみなされる可能性があるからです。
法人口座開設に必要な資本金に関しては、金融機関で特に明示されている訳ではありません。しかし、法人口座開設の審査が厳格化しているので、最低でも数十万程度の資本金を用意しておくのが確実といえるでしょう。
法人口座が開設できない場合の対策
法人口座が開設できない場合は、個人名義の口座で資産管理をしていくしかありません。
しかし、法人口座がない状態が続くと取引先からの信用に関わり、法人間での取引がしにくくなってしまいます。
必要な書類を揃えて口座開設を改めて申し込んだり、税理士などの専門家から紹介してもらったりなどして、法人口座を開設できるようにするのがおすすめです。
法人口座を複数開設するメリット
法人口座は1法人に1つだけしか持てないとは決まっていません。むしろ複数の法人口座を開設するとメリットがあります。
法人口座を複数開設する場合のメリットについてみていきましょう。
融資の幅が広くなる
複数の法人口座を保有していると、その法人が受けられる融資の幅が広がります。
法人口座のある金融機関の方が融資を受けられる可能性が高いので、複数法人口座を持っている方が融資の申し込みの機会が増えるためです。
振込手数料の節約になる
同じ金融機関からであれば振込手数料が安くなるため、法人口座を複数保有していれば振込手数料の節約になります。
顧客と同じ金融機関の口座があれば、顧客側の振込手数料の節約にも貢献でき、顧客からも喜ばれるでしょう。
ペイオフ対策
ペイオフ対策という観点でみても、法人口座を複数開設するメリットがあります。
平成17年4月にペイオフが解禁されて以降、金融機関の破綻時に預金全額が保護されなくなり、元本1,000万円とその利息までしか保証されなくなりました。
そのため、複数の法人口座を保有する方が、金融機関の破綻に伴う預金を失うリスクを軽減できるのです。
大手メガバンクの法人口座の特徴
ところで、法人口座はどの金融機関で開設するといいのでしょうか?
大手メガバンクや地方銀行、ネット銀行、信用金庫など様々な金融機関がありますが、ここでは大手メガバンクの法人口座の特徴についてまとめています。
三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行は全国に店舗を展開し、業界ナンバー1の顧客数と運営基盤を誇っています。
三菱UFJ銀行での法人口座の開設は、書類と対面による審査が必須となります。
最大の特徴としては、他の金融機関の法人口座と比較して手数料が安く設定されている点が挙げられます。特に振込機能に特化したインターネットバンキングサービスの「BizSTATION Light」は月額基本料が無料で、毎月一定額のコストをかけることなく利用できます。
こうした点は非常に魅力的ですが、その分口座開設の審査は厳しくなっています。
三井住友銀行
三井住友銀行も、三菱UFJ銀行と同じく全国展開しており、圧倒的な顧客数を誇る金融機関です。
三井住友銀行での法人口座の開設も、原則として対面での審査が必須です。
法人口座開設費用は無料で、インターネットバンキングサービスを利用する場合には月額2,200円(デビュータイプの場合)の費用がかかります。
スマホアプリ専用のネットバンキングサービスの場合には、振込と取引履歴照会のみの機能で費用は無料です。三井住友銀行の法人口座は、起業間もない法人にはおすすめです。
みずほ銀行
みずほ銀行も全国に店舗展開しており、圧倒的な顧客数を誇っています。
みずほ銀行には法人口座の開設をネットから申し込みできる支店が多く、利便性が高いです。そのため、先述の2行よりも法人口座の開設に力を入れていると言われています。
なお、インターネットバンキングサービスを利用する場合は月額3,360円の費用がかかります。みずほ銀行も起業間もない法人にとっては法人口座開設のハードルが低くおすすめです。
まとめ
起業の際に法人口座を開設するのは必須ではありませんが、取引先からの信用を得たり、経理を個人と法人で分けたりするためには欠かせないものです。
法人口座開設の審査は厳格で、そう簡単にはできません。とはいえ、1つ法人口座があれば顧客からの信用度もアップするため、起業したらすぐに開設してしまうのがおすすめです。
もし、「法人口座の開設ができなくて困っている」という方は、ぜひ一度私たちハートランド税理士法人にご相談ください。あなたの法人口座開設を徹底的にサポートさせていただきます。
監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。