開業費とは?開業費の対象となる範囲、開業日の決め方、税務上の扱いなどを徹底解説

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事業を始めるにあたっては、新しく購入するものが多く、たくさんの費用が必要となります。その費用を会計上で処理するための科目が「開業費」です。

この記事では、

  • 開業費とは
  • 開業費の対象となる範囲
  • 開業日の定義と損をしない開業日の決め方
  • 開業費の税務上の扱い
  • 創立費と開業費の違い

など、開業費はもちろん、関連した税制上得する方法も解説していますので、ぜひ最後までお読みください。

開業費とは

開業費とは、会社や個人事業主が営業を開始するまでの期間に支払う費用のことです。

「開業する手続きに使った費用」という意味ではなく、開業のために必要な費用はすべて「開業費」と呼ぶことができます。

開業費の対象となる範囲

会社設立後、営業開始までにかかった費用はおおむね開業費として計上できますが、中には開業費に含まれないものもあります。

ここでは、開業費の定義とその範囲を、具体例をまじえながら解説していきます。

開業費の定義とは

開業費の定義には、2種類あります。

  • 税務上の開業費
    …開業するためにかかる特有の支出。営業開始するための準備費用。
  • 会計上の開業費
    …開業準備にかかった費用全般。

開業費として計上できる費用

開業費として計上できる費用は、以下のようなものがあります。

  • 名刺や看板の作成費用
  • チラシやウェブサイトなど事前宣伝のための費用
  • 開業のためにおこなう打ち合わせの会場代・飲食費用

その他、下の項目でご紹介する例外を除き、ほとんどが開業費として認められます

開業費として計上できない費用

開業費として計上できない費用には、以下のようなものがあります。

  • 1つ10万円以上するものの購入代金
  • 販売用商品の仕入れ代金
  • 営業開始後に使う事務用品などの購入費
  • 準備期間の電気・ガス・水道代など
  • 敷金など後日戻ってくるもの
  • 賃貸物件に支払った礼金

まず、1つあたり10万円以上する機材・設備などの購入費は、開業費になりません。これは「固定資産」となり、それぞれの物品の償却期間に合わせて償却処理をしていきます。償却期間がそれぞれ別個で定められているため、開業費とすることはできないのです。

また、営業開始後に販売する商品の仕入代金や、営業開始後に使う物の購入費、ライフラインの使用料など、営業開始後も継続してかかる費用は開業費に含まれません。これは開業時特有の出費ではなく、事業を運営する上で恒常的にかかっていく費用だからです。

そして、敷金など後日戻ってくる予定の費用は、そもそも経費ではないため開業費にも含まれません。賃貸物件の礼金は開業費と同じく繰延資産ですが、扱いが異なるため開業費には含めません。

いつまでの支払いが開業費として計上できるか

開業費に計上できる期間は、実は定められていません。

開業するためにかかった費用は、何年前のものでも開業費に含めることができます。例えば、開業する数年前に「いつか店を持ちたい、その店にこれを置きたい」と思って買った家具なども、開業費にすることが可能です。

また、開業するつもりで機材などを揃えたものの、資金集めや事務手続きなどに想定より時間がかかってしまったというケースもあるでしょう。

しかし、現実には開業する5年も6年も前にかかった費用を開業費とすることは、ほとんどありません。支払いから時間が経った後で開業費として計上したい場合は、開業が目的でかかった費用だと証明する証拠を残しておいたほうがいいでしょう

開業日の定義と損をしない開業日の決め方

開業費に大きく関係するのが「開業日」です。法人と個人事業主における開業日の扱いや、開業日を定めるポイントなどを解説いたします。

開業日の定義

開業日の定義は、個人か法人かで異なります。

法人の場合、定款や登記の手続きを経てはじめて会社を設立できるので、設立日が公的に証明されています。

ただし、会社という器を作ってから実際の営業準備にかかり、営業を開始するわけなので、会社の設立日と営業開始日は異なります。開業日をどちらに定めるかはケースバイケースですが、開業準備も事業のうちと考え、会社の設立日を開業日とする場合が多いようです

個人事業の場合は、法人のように定款や登記などの手続きは必要なく、開業届を提出すれば事業を開始できます。この開業届も、提出しなかった場合の罰則などはないので必須というわけではありません。

つまり、個人事業には公的に証明された開業日がないため、自分が開業しようと思った日が開業日となります。勤めていた会社を辞めて独立した日や、初めて販売商品を仕入れした日、またはその月の1日などにすることが多いようです。

損をしない開業日の決め方

個人事業主の場合、開業日に明確な決まりはありませんが、事業の売上が発生した日にち以降を開業日とすることはできません。

なぜなら、まだ開業をしていないのに事業の売上が出るのは、どう考えてもおかしいからです。

開業日以前に発生した売上は事業の売上とは認められず、その売上を得るためにかかった費用も開業費になりません。そのため、個人事業主が開業届を提出する場合は、初めての売上が出る前に手続きを行う必要があります

開業費の税務上の扱い

開業費は経費だと思われがちですが、実はそうではありません。「繰延資産」といって、資産の科目に含まれます。

一旦資産として処理しておいて、その後毎年少しずつ経費として計上していきます。なぜなら、開業費は「開業すること」だけが目的ではなく「開業後ずっと事業を続けていくため」にかかる費用だからです。

この毎年少しずつ経費に計上していくことを「償却」といい、その償却が終わるまでの期間を「償却期間」といいます。

なお、開業費の会計上の償却期間は5年間です。税法上の償却期間は定められておらず、任意償却となります。任意償却とは、毎年一定の金額を償却するのではなく、決算時に任意の金額を決めて経費とすることです。

開業費の償却をうまく活用することで、税制上得をすることも可能です。

創立費と開業費の違い

創立費と開業費の違いは、その費用がかかった期間です。

  • 創立費
    …会社を設立するまでにかかった費用
  • 開業費
    …営業開始をするまでにかかった費用

創立費として計上するのは、主に会社設立の手続きにかかる以下のような費用です。

  • 定款作成費用
  • 定款認証手数料
  • 定款印紙税
  • 登録免許税
  • 司法書士等報酬
  • 会社印作成費用

また、設立準備のために株式募集の広告などを出した場合、その費用も創立費となります。個人事業主の場合、設立手続きや株式を発行することはないので、創立費は基本的に法人のみが使用する科目です。

最初の項目で詳しく解説した通り、開業費は会社設立(開業届提出)から営業開始までにかかるさまざまな費用をまとめた科目です。

まとめ

開業費は会社や個人事業を開業するためにかかるさまざまな費用のことです。経費ではなく繰延資産というカテゴリになり、開業後5年かけて償却していきます。

開業のためにかかる費用はほとんど開業費に認められますが、10万円以上の固定資産や、営業開始後も恒常的にかかる費用は開業費になりません。

なお、法人の場合、会社の設立手続きにかかる費用は「創立費」として開業費とは区別されます。

そのほか、会社設立について何かわからないことがあれば、私たちハートランド税理士法人の無料相談をお気軽にご利用ください。

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