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「相続が発生したけれど、税理士に依頼した場合の費用は一体誰が負担するの?」
「相続税の申告費用って、一体いくらくらいが相場なの?」
相続は、多くの方にとって初めての経験であり、税理士への依頼を検討する際に、費用に関する疑問や不安を感じるのは当然のことです。
相続税の申告は、専門的な知識と複雑な手続きが求められるため、税理士のサポートは非常に心強いものとなるでしょう。
しかし、その費用負担や相場、そしてどのような税理士を選べば良いのか、しっかりと理解しておくことが大切です。
本記事では、以下の4つについて解説します。
- 相続税の税理士費用は誰が払うべきか
- 相続税申告を税理士に依頼した際の報酬相場
- 相場よりも税理士報酬額が高くなるケース
- 相続税の申告を依頼する際の税理士の選び方
- 相続税の申告を税理士に依頼する際の注意点
相続税の税理士費用について、誰が負担するべきかという基本的な疑問から、具体的な報酬相場・税理士の選び方・依頼する際の注意点などをご紹介しましょう。
この記事を読むことで、相続税の税理士費用に関するあらゆる疑問が解消され、安心して税理士に相続税の申告を任せられるはずです。
相続税の税理士費用は誰が払うべき?

相続税の申告を税理士に依頼する際、最初に気になるのが費用の負担についてではないでしょうか。
結論からお伝えすると、相続税の税理士費用については法律で明確な負担者が定められているわけではありません。
しかし、一般的には、相続人全員で協議し、合意に基づいて負担割合を決定するケースが多いです。
相続税の申告は、相続人全体にとって共通の義務であり、税理士に依頼することで、正確な申告による税務署とのトラブル回避や、適切な節税対策による経済的なメリットが期待できます。
そのため、税理士費用は、相続財産の中から支出したり、相続人全員がそれぞれの相続割合に応じて分割して負担したりすることが一般的です。
ただし、遺産分割協議の内容や、特定の相続人が税務上のアドバイスを特に必要としている場合など、個別の事情によって費用負担の割合を調整することもあります。
例えば、特定の相続人が多くの不動産を相続し、その評価について税理士の専門的なサポートを強く必要とする場合、その相続人が他の相続人よりも多くの費用を負担するといったケースも考えられます。
最終的には、相続人同士が十分に話し合い、納得のいく形で費用負担を決定することがもっとも重要です。
相続税申告を税理士に依頼した際の報酬相場

相続税申告を税理士に依頼する際に気になるのが報酬相場です。
税理士の報酬は、依頼する税理士事務所や、相続財産の総額・遺産評価の複雑さ・相続人の人数・申告書の作成にかかる手間など、さまざまな要因によって大きく変動するため、一律の料金体系は存在しません。
そのため、複数の税理士から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討するのがおすすめです。
一般的な報酬相場は、遺産総額の0.5%~1%程度を基本料金に設定したうえで、計算・申告の難しさに合わせて加算される方式がとられています。
例えば、相続財産の総額が5,000万円以下の場合は20万円~50万円程度、1億円以下の場合は50万円~100万円程度となります。
また、複数の税理士から見積もりを取得する際には、単に金額だけでなく、提供されるサービス内容を詳細に確認することが重要です。
例えば、遺産評価、遺産分割に関するアドバイス・申告書作成・税務署とのやり取り・税務調査への対応などが含まれているかを確認しておくとよいでしょう。
相場よりも税理士報酬額が高くなるケース

先述した通り、相続税申告を税理士に依頼する際の報酬は、一般的な相場よりも高くなるケースが存在します。
相続案件の内容が複雑であったり、特別な対応が必要となる場合には一般的な相場よりも高額になることもあるため、事前にどのようなケースが加算対象となるのかチェックしておきましょう。
以下は、税理士報酬額が相場よりも高くなる可能性があるケースです。
- 土地の評価が難しい場合
- 複数の土地を持っている場合
- 申告期限が迫っている場合
- 遺産の中に非上場株式がある場合
- 相続税を物納する場合
- 相続人が多い場合
- 必要書類を代行取得してもらった場合
- 現地調査が必要な場合
- 税務調査の対策を依頼する場合
それぞれの項目を詳しく解説します。
土地の評価が難しい場合
相続財産の中でも、特に評価が専門的で時間を要するのが土地です。
例えば、以下のような場合は一般的な形・大きさの土地に比べて評価が難しく、難航するケースが多いでしょう。
- 形状が不整形
- 傾斜地
- 広大地
- 市街化調整区域に所在する
- 複数の地積に分かれている
- 共有名義
特別な土地の場合、画一的な方法では適正な評価が難しく、専門的な知識や経験に基づいて詳細な評価を行う必要が生じます。
時には税理士が現地調査に行かなければならないケースも存在するでしょう。
このような場合、通常の評価よりも手間と時間がかかるため、報酬が高くなる傾向があります。
また、小規模宅地等の特例や広大地評価など、複雑な特例の適用を検討する場合も、専門的な判断が必要となるため、報酬に影響を与えることがあります。
複数の土地を持っている場合
相続財産の中に複数の土地が含まれている場合も、税理士の報酬が高くなる可能性があります。
その理由は、それぞれの土地の所在地、形状、利用状況などを個別に調査し、評価する必要があるため、手間と時間がかかるからです。
特に、相続人が複数いる場合、それぞれの土地の評価額の適切な按分や、遺産分割協議における税務上の影響を考慮したアドバイスを行ったりする必要もあるでしょう。
そのため、さらに報酬が加算されることがあります。
申告期限が迫っている場合
相続税の申告期限は、被相続人の死亡日から10ヶ月以内と定められています。
この期限が間近に迫った状態で税理士に依頼した場合、短期間で集中的に作業を行う必要が生じるため、通常よりも高い緊急対応費用が加算されることがあります。
特に、必要書類の収集が遅れている・遺産分割協議が難航しているなどの場合は、税理士の負担が大きくなるため、早めの相談と依頼が重要です。
遺産の中に非上場株式がある場合
遺産の中に非上場株式が含まれている場合、評価は非常に専門的な知識と複雑な計算を必要とします。
上場株式のように市場価格が存在しないため、類似業種比準方式や純資産価額方式など、複数の評価方法を検討し、会社の規模・業績・将来性などを総合的に考慮して評価額を決定しなくてはなりません。
この評価には高度な専門性と時間を要するため、税理士の報酬は高くなる傾向があります。
相続税を物納する場合
相続税を現金で納付することが困難な場合、不動産などの現物で納付する「物納」という制度がありますが、その手続きは煩雑です。
税務署との事前の協議・物納申請書の作成・評価に関する書類の準備など、多くの手間と時間を要します。
税理士に物納の手続きを代行してもらう場合、その専門性と労力に見合った報酬が加算されることがあります。
相続人が多い場合
相続人の人数が多い場合、それぞれの相続人との連絡調整・書類のやり取り・遺産分割協議に関する税務上のアドバイスなど、税理士の業務量が増加します。
そのため、相続人の人数に応じて報酬が加算されることがあります。
必要書類を代行取得してもらった場合
相続税申告に必要な戸籍謄本・住民票・固定資産評価証明書などの書類は、原則として相続人自身が取得する必要があります。
しかし、時間的な余裕がないなどの理由で、税理士にこれらの書類の代行取得を依頼した場合、その手数料が報酬に加算されることがあります。
現地調査が必要な場合
土地の評価が難しいケースだけでなく、遺産の状況を正確に把握するために税理士が現地調査を行う必要がある場合、その調査費用や日当などが報酬に加算されることがあります。
例えば、賃貸不動産の状況確認や、未評価の動産の確認などが該当します。
税務調査の対策を依頼する場合
相続税申告後の税務調査に備えて、税理士に事前の対策や、税務調査への立ち会いを依頼する場合、その専門的な対応に対する報酬が加算されることがあります。
税務調査のリスクを軽減するためのコンサルティングや、調査時のサポートは、専門的な知識と経験を要するため、追加費用が発生することが一般的です。
これらのケースに該当する場合は、事前に税理士に見積もりを依頼し、報酬額が相場よりも高くなる理由について十分な説明を受けるようにしましょう。
納得のいく説明を受け、サービス内容と費用を比較検討したうえで契約に進んでください。
相続に強い税理士の選び方

相続税の申告は、一生に何度とない重要な手続きです。
信頼できる税理士を選ぶことは、正確な申告と適切な節税、そしてスムーズな相続手続きの実現に不可欠と言えるでしょう。
以下は、相続に強い税理士を選ぶための重要なポイントです。
- 相続専門の税理士を選ぶ
- 相続関係の実績が豊富な税理士を選ぶ
- 自分のニーズと特化している分野が合っている税理士を選ぶ
- 適正な報酬額の税理士を選ぶ
- 複数の税理士から見積もりを取る
- 税務調査率が低い税理士を選ぶ
- 相続に関する疑問や不安に寄り添ってくれる税理士を選ぶ
「どの税理士に依頼したらよいかわからない」とお悩みの方は、ぜひご参考ください。
相続専門の税理士を選ぶ
税理士には法人税、所得税、相続税など、さまざまな税目を専門とする人がいます。
相続税の申告を依頼するのであれば、相続税を専門に扱っている税理士を選ぶのが望ましいです。
専門性の高い税理士は、複雑な相続税法や評価方法、特例などを深く理解しており、適切なアドバイスや効果的な節税対策が期待できます。
相続税申告の実績が豊富な税理士を選ぶ
税理士のWebサイトや面談時に、過去の相続税申告の実績を確認しましょう。
特に、取り扱い件数・規模・取り扱った遺産の種類などはしっかり見ておくべきです。
実績が豊富な税理士は、多種多様なケースに対応してきた経験があり、イレギュラーな事態にも柔軟に対応できる可能性が高いです。
また、実績を通じて税務署との円滑なコミュニケーション方法を熟知していることも期待できます。
自分のニーズと特化している分野が合っている税理士を選ぶ
相続案件は、遺産の種類(不動産・非上場株式・海外財産など)や相続人の構成・家族関係など、状況によってさまざまです。
ご自身の相続案件の内容を把握し、それに特化した知識や経験を持つ税理士を選ぶことが重要と言えるでしょう。
例えば、不動産の評価が複雑な場合は不動産評価に強い税理士、非上場株式の評価が必要な場合は企業評価に詳しい税理士を選ぶといった具合です。
適正な報酬額の税理士を選ぶ
税理士の報酬体系は事務所によって異なります。
まずは一般的な相場を知ったうえで見積もりを出してもらい、相場からかけ離れていないかチェックする必要があります。
極端に安い報酬には注意が必要ですが、高ければ良いというわけでもありません。
ご自身の予算とニーズに合った、適正な報酬額の税理士を選ぶことが大切です。
見積もりを依頼する際には、追加費用が発生する可能性についても確認しておきましょう。
複数の税理士から見積もりを取る
依頼する際は複数の税理士から見積もりを取り、報酬額だけでなく、提供されるサービス内容・料金体系の透明性などを比較検討しましょう。
実際に面談してみて、疑問点や不安な点をしっかりと質問し、丁寧かつ分かりやすく説明してくれる税理士を選ぶことが重要です。
税理士とは世代を超えて長い付き合いとなる可能性もあるため、相性は大切な要素と言えるでしょう。
税務調査率が低い税理士を選ぶ
実績のある税理士の中には、税務署の調査が入念になりやすいポイントを熟知しており、税務署との良好な関係を築いている方もいます。
税務調査のリスクを少しでも減らしたい場合は、そのような実績のある税理士を選ぶのも一つの検討材料になります。
相続に関する疑問や不安に寄り添ってくれる税理士を選ぶ
相続は、ご遺族にとって精神的な負担も大きい事象です。
専門的な知識だけでなく、親身になって話を聞いてくれ、疑問や不安に寄り添い、丁寧で分かりやすい説明をしてくれる税理士を選ぶことが、安心して手続きを進めるうえで非常に重要です。
コミュニケーションが円滑に取れる税理士を選ぶことで、ストレスを軽減し、スムーズな相続手続きを進めることができるでしょう。
相続税の申告を税理士に依頼する際の注意点

相続税の申告を税理士に依頼することは多くのメリットがありますが、期限に間に合わない、必要以上の報酬を支払わなくてはならないなどのトラブルが起こる可能性もゼロではありません。
以下の点に注意して、慎重に税理士に依頼してください。
- 成功報酬制の税理士には依頼しない
- できるだけ早く依頼する
- 相場よりも極端に安い料金の税理士には依頼しない
- 二次相続も踏まえたアドバイスをしてもらう
成功報酬制の税理士には依頼しない
一部の税理士事務所では、相続税の節税額に応じて報酬が変動する成功報酬制を採用している場合があります。
しかし、成功報酬制では税理士が過度な節税策を提案したり、税務署とのトラブルを引き起こしたりするリスクがあるため、避けるべきです。
明確な業務内容と時間に基づいて報酬が定められている税理士を選ぶようにしましょう。
できるだけ早く依頼する
相続が発生したら、できるだけ早い段階で税理士に相談・依頼することをおすすめします。
期限間近になってからの依頼では、十分な検討時間が取れず、適切な節税対策ができないうえ、最悪の場合申告ミスにつながる可能性もあります。
早めに相談することで、余裕をもって準備を進めることができ、税理士もより丁寧な対応が可能になるでしょう。
相場よりも極端に安い料金の税理士には依頼しない
相場よりも極端に安い料金を提示する税理士には注意が必要です。
その理由は、サービスの質が低かったり、必要な業務が含まれていなかったりする可能性があるからです。
そのため、料金だけでなく提供されるサービス内容をしっかりと確認し、納得のいく税理士を選びましょう。
安さだけで判断すると、後々追加費用が発生したり、不十分なサービスで後悔したりする可能性があります。
二次相続も踏まえたアドバイスをしてもらう
今回の相続だけでなく配偶者が亡くなった際の相続などの二次相続など、将来発生する可能性がある事象まで見据えたうえで、遺産分割や納税対策についてアドバイスをもらうことも重要です。
長期的な視点でのアドバイスは、将来の税負担を軽減する上で役立ちます。
相続に強い税理士であれば、将来を見据えた包括的なアドバイスを提供してくれるはずです。
大阪・東京で相続税にお悩みの方はハートランド税理士法人へ

相続税の申告は専門的な知識と複雑な手続きを伴うため、税理士への依頼は正確な申告と適切な節税につながる賢明な選択と言えるでしょう。
税理士費用は、相続財産の額や遺産の種類によって変動しますが、複数の税理士から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討することが重要です。
また、相続に強い税理士を選ぶ際には、専門性・実績・相性などを考慮し、ご自身のニーズに合った税理士を見つけることも大切です。
ハートランド税理士法人では、相続税の計算や申告に関する相談を承っております。
「相続税の申告方法がわからない」とお悩みの方は、お電話やメール、公式LINEからいつでもお気軽にご相談ください。

監修:大久保 明信(おおくぼ あきのぶ)
・ハートランド税理士法人 代表社員(近畿税理士会所属、税理士番号:127217)
・ハートランドグループ代表取締役社長
1986年生まれ高知県出身。大阪市内の税理士事務所で経験を積み、2015年に28歳(当時関西最年少)でハートランド会計事務所(現:ハートランド税理士法人)を開業。社労士法人併設の総合型税理士法人として、2024年には顧問先数1,200件を突破。法人の税務顧問を中心に、国税局の複雑な税務調査への対応や経営へのコンサルティング等、顧問先のトータルサポートに尽力中。